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銭湯のおかみさん~物の怪銭湯奮闘記~  作者: さいとう みさき
第一章私がおかみです
3/18

1-2:家業

とある八王子のとある銭湯に嫁入りしたかなめが体験する不思議な不思議な物語。


今日もおかみさんのかなめはてんてこ舞いの一日を過ごすのだった。


 なんだかんだ言って私は守さんと一緒になる事にした。



 そりゃぁ驚きはしたけど、これだけの優良物件はもう二度と私の前には現れないだろう。

 それに結納でおさめられた品々の中に結納金が小判だったと言うのもうちの親たちを驚かせた。


 どうせ次女の私は何処かに嫁にもらわれれば安泰とばかりに話はとんとん拍子。

 そこからすぐに結婚まではあっという間だった。


 守さんの素性も素性なので神前式と言う形で参加するのも身内だけ。

 傍から見れば質素とも思える婚礼だったけど、守さんのお母さんが取り出した白無垢の花嫁衣裳だけは凄かった。

 なんでも守さんのお母さんが嫁入りの時に着たものらしい。


 ……狐の嫁入り。


 私は式の途中に青空を見上げたものだった。



 そしてなんやかんや言いながら私は元の仕事を寿退社して守さんの実家に来る事になった。



「ふ、ふつつか者でございますがお義父様、お義母様どうぞよろしくお願いします!」



 玄関で出迎えてくれたヨークシャテリアときつねを前に三つ指立てて正座してお辞儀する私。

 隣で荷物を持ってくれている守さんはにこにこしながらこのシュールな光景を見ている。



 てふっ!



 頭を下げている私にお義父様が前足を載せる。

 これは一体どう言う意味!?


『堅苦しい事は抜きじゃ。魔素がまだたまっておらん故に儂らはまだこの姿じゃが、お前さん若い娘とみると抱っこをせがむのはやめんかい』


 お義母様が狐の姿のままそう言うとヨークシャテリアのお義父様は「きゃん!」と鳴いて私の膝の上に載って来る。



「はははは、父さんもかなめさんが来るの楽しみにしていたんだよね~。絶対にブラッシングしてもらうんだって言ってたよ」


「ブ、ブラッシング? 私がお義父様に?」


「うん、やってあげて。荷物は僕が僕たちの部屋に運んでおくから」


 そう言ってブラシを手渡される。

 見れば期待に目を輝かせたお義父様がへっへっと舌を出して待機をしている。


 いいのかこれでお義父様?


 仕方なく私はその場でお義父様にブラッシングを始めるのだった。



 * * * * *



「取り合えずこれで良しっと、寝室は隣の部屋だけどここは君も自由に使ってね」


 そう言われた私の嫁入り道具含む私物はこのだだっ広い十二畳はある和室にきれいに並べられていた。

 和風なのに私の私物がやたらと洋風なので実家を思い出す。



「タンスとかお化粧鏡なんかは寝室に置いたけど、大丈夫かな?」


「はい、大丈夫ですけど…… 守さん一人にやらせてごめんなさい」


「気にしない、気にしない。僕たちは夫婦じゃないか」


 そう言って守さんは座布団を取り出してちゃぶ台の横に置いてくれる。

 そしてその隣に自分も座布団を引いて腰をおろす。


「あ、お茶入れますね」


「うんお願い」


 ポットからお湯を急須に入れてお茶を入れる。

 守さんにそれを渡して自分も座って湯呑を持つ。



「なんだかあっという間だったなぁ……」


「ん? 何が?」


「守さんからプロポーズされて一緒になるまでが。それに驚きの連続だったし」


「ははは、ごめんごめん。でも君は僕の所へ嫁いでくれた。感謝しているんだよ?」


「本当?」



 私はそう言って隣に座る守さんに寄りかかってみる。

 ほんとうに驚かされる事ばかりだけど、守さんの事は好きだと確信している。

 彼が物の怪だとしても。



「守さん……」


「かなめ……」



 寄り添い顔が近づく。

 守さんの吐息が近い。


 近づく唇と唇。




 はっはっはっはっ!




「……あの、お義父様そこでなになされているんです?」


 もう少しと言う所でそれを見上げるヨークシャテリアが短い尻尾をぶんぶん振って期待に瞳を輝かせている。

 もしこれが本物のヨークシャテリアなら気にも留めない。 

 でもこれはれっきとしたお義父様!!


 するとそのヨークシャテリアは残念そうに後ろを向いてボンっと煙を立てて初老のおじさんの姿になる。



「何じゃつまらん、接吻くらいブチューっとすればいいものを。守、落ち着いたら薪くべ手伝ってくれ」


「え、もうそんな時間か? ごめん、かなめさん風呂焚きを手伝わないとね」


「あ、私も何か手伝えることは?」


 二人ともちょっと赤い顔して慌てて立ち上がる。



「取りあえず今日はゆっくりしなさい。家業は徐々に教えるからの。守、早い所薪くべ終わりにして続き見せてくれ」


「見せません!」


 そんな事を言いながら守さんと義父様は行ってしまった。


「えーと……」



 私は一人くちびるに手をあてながら呆然とするのだった。  


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