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ガーターベルトの下には……


 この“ヨミ”自体は全六層の階層でできている、小さなダンジョンだ。


 だけど出てくる魔物は普通のダンジョンではそうでもないレベルの同じ魔物であっても、この“ヨミ”では異様に強い。

 恐らく“ヨミ”の特殊な魔力で強力になっているのだろう。

 だから冒険者もほとんどが一層までで音をあげる状態で、なかなか奥の層まで行き着くことはない。

 多くの冒険者が一層で戦った結果、残ったのがあのゴブリン数体だったのだろうが、それでも残っていたということは、誰も一層すら全滅に追い込むことができなかったということだ。


 五層に“扉”。

 その奥の六層には恐ろしい魔物が棲みついていて、運良く一層から五層までをくぐり抜けても、六層に行った者にはもれなく死が待っているという。

 たまに生きて帰ったとしても、皆ただ「ボスがいる」くらいの情報しか持ち帰ることがなく、後は口を閉ざしてしまう。

 管理委員が“魔王の眼”を使って調査に入ったこともあるが、大した情報は得られていない。

 だからどんなボスがいるのか、皆目検討がつかないのだ。

 ボスに至っては何故かあまり“魔王の眼”も効かず、 “魔王の眼”を持って調査に行った管理委員にも襲いかかって一人が死亡した事件は有名だ。

 それ以来管理委員ですら立ち入って調査をすることがなくなった。

 触らぬ神に祟りなし、ってことね。


「──結構広い泉ですね」

「……そう、ですね……」


 私たちの目の前には広い泉。

 近づいた者を引き摺り込むための罠になっているのだろう、泉の周りにはキラキラとした水晶が生えている。

 とても綺麗だけれど、それが余計に不自然な不気味さを際立たせている。


 そして私たちの後ろには、魔獣の死骸の山。

 全て私一人で倒してやったわ。拾った木の棒で。


「あの、ティアラさん。俺も戦えますよ? 一応勇者なので光の剣を具現化させることができますし」

「大丈夫です。アユムさんは守られててください」


 彼は平和な日本から来た未成年なのだ。

 戦いに慣れていることはないだろうに。

 私がしっかりせねば!!


「さて……とはいえ、スライム相手に木の棒はちょっと……。となると……よっ、と」

「ちょっ、何やって!?」

 私は自分のドレスの裾を掴み上げると、アユムさんの驚く声を無視して、ドレスの下の太ももに巻いたガーターベルトに仕込んでいた武器を取り出した。


「も、モーニング……スター……?」

 イガイガのついた重厚な鉄の塊。

 そう、モーニングスターだ。


「どこに何てもん隠し持ってるんですか!?」

 顔を赤やら青やらにさせながら悲鳴のような声をあげるアユムさんに、私はにっこりと笑顔を返す。

「いつどこで戦いになるかわかりませんからね!!」


 実際、私宛の刺客は多かった。

 

 私がいつまでも聖魔法を使うことができないとわかった貴族達は、私を排除して自分の娘を王太子妃にしようと考えるものも多く、今まで何度も奇襲をかけられたり、毒を盛られたりしたものだ。

 そんな彼らを返り討ちにする日々が続いた結果、私はどんどん戦いに特化するようになり、挙げ句の果てに毒耐性までついて、ついには人類史上最強の伯爵令嬢と化してしまった。

 解せぬ。


「さて、では──行きます!!」

 私はゴツゴツとした地面をヒールで蹴ると、飛ぶようにして泉の方へと駆け出した。

 そして泉に近づいた刹那──。


「!!」

「ティアラさん!!」


 ぶわっと湧き上がるように泉から現れたスライムの群れ。

 キモ……。


「こんなのは早くやっつけないと──ねっ!!」


 うおぉぉぉぉお──っ!! と女子らしからぬ声をあげながら、私はスライムの群れめがけてモーニングスターを振り下ろす!!


 プシュン、プシュン、プシュンッ──。


 まるで蒸発するように飛び散り消えていくスライム達を、ボッコボッコと殴りまくるドレスを身に纏った令嬢。

 うん、カオス。

 でも生きるためには──守るためには──やるしかないっっ!!


 そうして最後の一体を倒した時には、あたりはスライムの水分でびちゃびちゃになっていた。


面白かったよー気になるよーと思っていただけましたらブクマや評価などで応援よろしくお願いします(´இ□இ`。)°

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