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【完結】脳筋聖女と《贄》の勇者~聖女の力は使えずとも、そんな世界、私が壊してみせましょう~  作者: 景華
第二章

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魔王城へ

 順調に逢瀬を重ね、アユムさんも少しずつこの世界に慣れ、町の視察の際には二人一緒に視察に行くようにもなった。


 時々二人で、アユムさんのお母様が持たせてくれたという缶詰食品の味を楽しんでは、故郷に思いを馳せる。

 だけどその食品もなくなってしまったら、アユムさんは大丈夫だろうか?

 つながりを感じられるものがなくなってしまった時が心配だ。


 私はどう頑張ってもアユムさんのお父様とお母様にはなれない。

 私はあちらで死んで、こちらに転生して、転生先の家族がいる。

 でもアユムさんには──それがない。


 世界を捨ててこっちに来てくれたからには幸せにしたいし幸せにするつもりだけれど、やっぱり何かあちらとのつながりを作ってあげられたら……。


 そう考えていた矢先だった。それを見つけたのは。

 城の宝物庫の整理をしていた際に見つけた、古い書物。

 何気なく開いてみてみると、あったのだ。私が探していたものが。


“魔王の魔石には、魔力を介さずとも通信できる不思議な力がある”


 ──という、なんとも魅力的な一説。


 魔力を介さずとも通信できる不思議な力がある……。

 そういえばあの世界観転移の魔石も、ダンジョンボスのドロップアイテムだったと聞く。

 なら、その魔王の魔石だって不思議な力があるかもしれない。


 アユムさんが討伐してすぐに魔王城の魔物ごと封印されたから、中にはアユムさん以外は入ったことがないのよね、確か。


 もし、あの中にその魔石があれば、魔力のないご家族と通信をつなげてあげられる……!!

 一週間後の結婚式だって、ご家族に見てもらうことができる!!


「よし──!!」

 思い立った私は机の引き出しから紙とペンを取り出すと、さらさらと一言書置きをしてから執務室を出た。


***


 ──魔王城があるのは、城からはるか遠くの森の中。

 普通に歩けば一週間もかかる場所だけれど、光の羽でひとっ飛びだ。

 私は空を飛び森の入り口で降りると、一人薄暗い森の中へ入っていった。


 一歩立ち入ればたちまち魔物に囲まれると言われていて、誰も近寄ろうとはしない。

 が──。


「えぇ……」

 私の場合は逆のようだ。

 ダンジョン攻略とスタンピードを強制討伐したという噂は魔物の間でも広まっているようで、気配は感じるものの様子をうかがって出ては来ない。


 時々姿が見えた状態で木の陰から覗いている魔物を見つけても、目が合った瞬間にそらされる始末。

 解せぬ……。


「見るくらいなら案内してくれたらいいのに」

 ぶつぶつ言いながらしばらく歩くと、黒く大きな城が目の前に見えてきた。


「おぉ……これが魔王城……。結構大きいのね。マドレーナ城よりも大きそうだわ」


 この城の中に、まだたくさんの魔物が封印されている。

 中から外には封印で出られないけれど、外から中に入ることのできる今の魔王城

 中には、私や聖マドレーナ国に恨みを持つ魔物も多い。

 タダならぬ殺気を感じる。

 そして何より──。


「薄暗くて不気味ね……」

 朝だというのに日の光が入ることのない森にそびえたつ黒い城。

 

 気味が悪いわ。

 何か、お化けでも出てきそう。

 ……出て、こないわよね?

 魔物は平気だけど、お化けは無理。

 実体がないものほど怖いものはないわ。


 でも、アユムさんもここに来たのよね、一人で。

 何の縁もゆかりもない世界のために。


「私がここでビビってる場合じゃないわよね」


 私はドレスを翻すと、愛棒(相棒)のモーニングスターを取り出し、そっと城の中に続く扉に手をかけた。



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