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年下勇者を守り隊


「私と、ここで暮らしてください」


「────は?」


 “贄”として理不尽に選ばれ、たまたま勇者の力があったからと魔王を倒すのに利用され、挙句王女との婚約を断ったからって実質死刑の“ヨミ”送り?

 たった一人であの隻眼の魔王に立ち向かってくれたというのに?

 全く関係のない世界の人々のために、命をかけてくれたと言うのに?

 そんな馬鹿げた話、あってたまるものですか!!


「あの……とりあえず、俺のことは『様』とかいらないですからね。ティアラ様、身分も歳も上ですし」

「へ? あ……あの、アユム様は今いくつで……?」

「俺は今十八で、今年十九歳になります」

「!!」


 じゅう……はち……。

 婚約者だったウェルシュナ殿下と同じ歳……。

 

 大人っぽい雰囲気だからてっきり私と同じくらいかと思ってた。

 ていうか、日本でいえばまだ未成年じゃない!!

 こちらの世界の成人は十六歳で、貴族女性の結婚適齢期は十六歳〜十八歳。

 大体の貴族女性はこの頃に結婚をし、それを過ぎれば生き遅れと指差される結構シビアな世界だ。

 つまり、殿下の卒業を待って二十三歳になってしまった私はとっくに適齢期を過ぎ、立派な生き遅れになってしまったというわけだが。


 それでも予定通りに結婚できていれば違ったのだろうけれど、婚約破棄によってそれも無くなってしまったし。

 この歳ではもうまともな結婚は望めないだろう。

 良い人は売り切れている。

 平民としてならば望みはあるだろうけれど、今ここから出られたとしてもすぐに見つかって、今度はダンジョンへの追放なんかじゃなく、適当な理由をでっち上げて公開処刑にでもされてしまう気がする。

 そもそもここから出るにしても、一人ならばなんとかよじ登ってみるのも有りだけど、彼を一人残すことはできない。


 ならばここで、か弱い年下男子を守って生きていこう。

 それで、どうにかしてアユム様──アユムさんを元の世界に戻してあげたい!!


「わかりました。よろしくお願いしますね、アユムさん。私のことも、敬称不要ですから」

 何せ追放された身だからね。

 プレスセント伯爵家や父母自体はこんなことになっても私を娘として見ていてくれるだろうけれど、きっと殿下の命令で貴族名鑑からも削除されるのだろうし、身分など実質失ったようなものだ。


「は、はぁ……。よろしく、お願いします──ティアラ……さん」

 そのぎこちない呼び方ににっこりと笑顔で答え、私はあらためてあたりを見回した。


「とりあえず、水と食料の確保、ですね」

 いくら戦いに強いからなんとかなるとはいえ、お腹に入れるものがないと流石に生きてはいけない。


「それなら、このすぐ下の層に泉があります」

「本当!?」

「はい。最初に連れて来られ、“扉”からダンジョンを出るのに上がっていく際、通りましたから」

 ラッキーだわ。

 まさかこんなに早く水が確保できるかもしれないだなんて。

 とりあえず水問題は心配しなくても大丈夫そうね。


「ただ……」

「ただ?」

「スライムの住処になっているようで、迂闊に泉に入れば飲み込まれてしまうかと……」


「スライム……」

 一体一体はとても弱い低級モンスターだけれど、それが集まればたちまちすごい力で飲み込まれ、特殊な体液で溶かされてしまう。

 スライムが巣にしている泉、か……。

 ……うん、まぁ大丈夫でしょう。

 訓練と称してお腹を空かせた魔獣の群れに放り込まれたことを思えば、スライム如き、なんてことない。


「大丈夫です。アユムさんは私が守りますから。安心してください」

 私が必ず無事に元の世界に帰してみせるわ!!


「え、ちょ、守るって──」

「さ、行きましょう。第二層へ」

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