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アッパーは得意なんです

「大丈夫ですか?」

「え、えぇ……」


 誰!?

 このダンジョンに落とされて無事だった普通の人なんていないだろうし……え、まさかの先住民!?

 いやいやいやそんなもんいるわけが……。

 驚いているのも束の間。今度は男性の背後からゴブリンが襲いかかる──!!


「っ!!」

「危ない!!」

 私はゴツゴツとした岩場を足で蹴ると、今まさに青年に向かって斧を振り下ろそうとするゴブリン目掛けて駆けた──!!


「うおぉぉりゃぁぁぁぁあ!!」

 ゴンッ!!

 私の必殺アッパーがゴブリンに直撃し、ゴブリンは勢いよく吹き飛ぶとそのまま動かなくなった。


「ふぅ……」

 これでこの層のゴブリンは終わりかしら?

 ゴブリンは基本団体で行動し、女を攫って辱めるとんでもない奴らだ。一掃できたならそれに越したことはない。

 幸いダンジョンは一層ずつモンスターの生息量は決まっていて、他の層のモンスターが別の層に住み着くことはない。

 縄張りだから。


「え……強……」


 はっ……!!

 やってしまった……!!


『大人しく女らしくしていろ』

『常に俺の半歩後ろを歩き、聖女らしく振る舞え』

『決してその戦闘力を見せるな』


 ウェルシュナ殿下にずっとそう言われてきたのに……。

 普通に考えてアッパー一つでモンスターを倒してしまう令嬢なんておかしい。

 うあぁぁぁあ私ったら!!

 つい身体が勝手に動いてしまって……!!


「あ、あの……えっと……その……。……キャー、コワカッタワー」

「いや嘘くさいですから。見事なアッパーでしたし」

 ちっ……。

「舌打ち……」

「あ」


 見られていたなら仕方がない。取り繕うのはやめよう。

 私は少し乱れた長い銀髪を手櫛で整えてからピンと背筋伸ばし、目の前の黒髪の騎士に向けてカーテシーをする。


「助けていただきありがとうございます。私はティアラ・プレスセントです」

「!! 王太子の……」

「私のことをご存知で?」

 暗がりでお互いにはっきりと顔は見えないけれど、私、この人と会ったことがあるかしら?


「有名、ですから」

 確かに私は有名だ。

 何せ聖女で伯爵令嬢。おまけに王太子の婚約者だったんだもの。

 知らない方がおかしいか。


「あの、あなたは?」

 私が尋ねると、男性は「あぁ……」と言ってゴソゴソとマントの内ポケットから何かを取り出すと「炎よ」と唱えた。

 途端にあたりが明るく照らされ、男性の顔がはっきりと映し出される。

 炎の魔石か……。いや、それより……。


 サラサラの黒髪。

 きりりとした同じように黒い瞳。

 どちらもこの世界では珍しい《《色》》。


 この人──。


「俺は黒崎歩です」


 あちら側の人だ──!!


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