表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】脳筋聖女と《贄》の勇者~聖女の力は使えずとも、そんな世界、私が壊してみせましょう~  作者: 景華
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/63

通信石


 さて、魔物の気配は──うん、もうこの層は安全みたいね。


「ティアラさん、あそこ……」

 アユムさんが指差す先を見ると、広いフロアの一角に木が三本。

 ダンジョン内でも自生する数少ない植物であるダレンの木だ。

 この木の葉は食べることができるのだけれど、前世でいうミントのような味で、それ単体でたくさん食べるというのはお勧めしない。

 そして三本の木のその間には、崩れかけた大きめのテントが……。


「あれは……野営施設……!?」

 おそらくここを訪れた冒険者か、探索作業担当の管理役員のものだろう。

 薄汚れ、ところどころ破れているけれど、ちゃんとしたテントだ。

「行ってみましょう……!!」

「はい!!」


 私たちはすぐにテントに駆け寄ると、そっと中の様子を伺い、細心の注意を払いながら、その中へ足を踏み入れた。


「お邪魔しまーす……」


 うわぁ……。

 ごちゃごちゃと散らかった物品達。

 魔物が襲ってきたのかしら?

 四人から五人が入れそうなほどのテントの中は、備蓄品が散乱して足の踏み場もないほどに荒れ果てていた。

 奥の方にも2箇所カーテンで仕切られて2部屋ほどあるみたいだから、整理すれば快適に過ごせそうね。


 散乱した紙やペン、本、コップと皿などの食器、カトラリー、それに布団にしていたであろう大判の布。

 うん、洗ったら使えそうだわ。

 放置されたリュックの中には……大小それぞれのタオルが複数枚。

 泉で服を洗って、その間これを身体に巻きつけておけば良いわね。

 ちょうど血に濡れて気持ち悪かったところだから、ラッキーだわ。


「ティアラさん、見てください」

「なんですか?」

 アユムさんに呼ばれて見てみると、そこには一体の白骨遺体。

 そして──。


「!! 通信石!!」


 白骨化した手に収められているのは、金で魔法陣が描かれた小さなクリスタル。

 通信の魔石だ。


 これに魔力を流すことで思い浮かんだ相手と通信を行うことができるのだ。

 ただし、相手が通信石を持っていること前提で、通信拒否をされると繋げられないのだけれど。

 言ってみればメール機能も写真機能もウェブ機能もない、前世の携帯のようなものだ。

 これがあればプレスセント伯爵家に連絡して、皆を安心させてあげられる……!!

 あ、でも私、魔力が流せないんだったわ……。


 私はチラリと隣でクリスタルをもの珍しげに覗き込むアユムさんに視線を向けてから、口を開いた。


「アユムさん、お願いします。プレスセント伯爵と思い浮かべながら、この通信石に魔力を流してください。きっと通信石を持っているお父様につながるはずです」

 光の魔力を持っている勇者であるアユムさんなら、魔石を発動させることができる。彼だけが頼りだ。


「わかりました」

 アユムさんは細く冷たくなった指からそっと魔石を貰い受けると、自身の魔力を流し始めた。

 流し始めてすぐに魔石は青く色付き、応答承諾が降りた。


「!! そのまま相手の魔力と繋がるイメージで、通信を繋げてください!!」


 通信石は応答拒否の場合は赤くなって通信が遮断されるが、応答承諾が降りると青くなり、通信準備が整うのだ。

 あとは相手の魔力と自分の魔力を繋げるだけだ。

 まぁ、私は知識だけで、できた試しはないのだけれど。


 アユムさんが眉間に皺を寄せさらに魔力を流し繋げた刹那、私たちの目の前に大きな画面が現れ、銀髪に青い瞳の、渋めのイケおじが映し出された。


「お父様!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ