第二十四話 入学式の朝
翌日は、入学式だった。
私は朝食を取った後、マリーに制服を着せてもらい、髪をハーフアップに結ってもらう。結った髪は白いリボンで結んで貰った。
そして制服の上から、ペンダントを身につける。
入学式に侍女として同行するのはマリーではなくミシェル。護衛も兼ねているからだ。彼女はいつものメイド服ではなく地味なドレスに着替え、金髪を後ろで纏めていた。
リズさんも制服に着替え、長い金髪の髪を後ろに垂らしている。
「行きましょうか」
私はミシェルに声をかける。
「分かりました、参りましょう、アリシア様、そしてリズさん」
ミシェルはいざという時に備えて折り畳みの仕込み杖を隠し持つ。
私たちは校舎に向かう。
私の左側をミシェルが歩き、後ろからリズさんがついてくる。
ちょうど男子寮から制服姿のアークと、侍従のマークが出てきたところだった。
制服を着たアークは、初めて会った日ぶりだったけれど、端正な顔立ちの彼には似合っている。
「おはようアリシア、元気そうで良かった」
アークのサファイアブルーの瞳が、こちらに微笑みかける。
「アーク、おはよう。いよいよ今日は入学式ね」
私も彼に向かって微笑む。
「あ、そうだわ。紹介しておくわね。同室のリズ・ブラウンさん」
私はリズさんをアークに紹介する。
「リズさん、私の婚約者のアーク王子殿下よ」
「初めましてアーク様。リズ・ブラウンと申します。よろしくお願いします」
「………」
しばらくの沈黙。
「どうしたの?――アーク?」
私が聞くと、
「――いや、何でもない。気のせいだったかな――」
独り言のように、アークはつぶやいた。
――一体、何だったのかしら?
そう思った時だった。
「あらアリシア、朝から噂の平民なんかと仲良しごっこかしら?」
聞き覚えのある声に振り返ると、そこには制服に身を包んだ銀の髪の公爵令嬢――ロザラインがいた。
「平民のような下品な言葉遣いをなさるアリシアには、平民のお友達がお似合いですわね」
くすくすと、嘲笑うような目つきでロザラインは私とリズさんを眺める。
「アーク様、その者たちとは離れてわたくしと――」
そう言って、ロザラインはアークの手を取ろうとする。
「――っ」
私が声を出すこともできずに、戸惑っていると、
「よせよロザライン。アリシア王女が戸惑ってるだろう?」
「――お兄様!」
そこに現れたのは、ロザラインと同じ銀髪に紫の目の公爵令息、セドリック・アメジスト様だった。