第二十一話 特別寄宿室
「特別寄宿室は3つの部屋に分かれており、うち二つがアリシア王女殿下の使うお部屋になります。こちらの暖炉のあるお部屋と、あちらの寝室です。部屋にはキッチンもついておりますので、ミシェルとマリーに使ってもらうように言っておきました」
フローライト夫人がそう言って、特別寄宿室の案内をする。
暖炉には魔法の炎が灯っており、テーブルと椅子が揃っている。ソファの前には魔宝石で動作するスクリーンが備え付けられていた。本棚には魔導書がたくさん揃えられている。
テラスからは温室に出入りできるようだった。「温室は王女殿下がご自由にお使いくださるよう申し付けられております。現在は薔薇が植えられていますよ。ご覧になりますか?」
言われて私は「ええ、そうね」と言って案内してもらうことにした。温室にはいろいろな色の薔薇が咲き誇っている。その中から、私は変わった色の薔薇を見つけた。
淡いブルーとも、紫とも見える綺麗な薔薇。
「ご興味があるのですか?その薔薇に」
フローライト夫人の言葉に、私は頷く。
「ええ」
「青い薔薇は長い間幻と言われてきました。ですがわが校で魔法で交配を続けた結果、このように見事な青い薔薇が咲きました。私たちは青い薔薇に花言葉を付けました『夢がかなう』と。魔法はどんな夢でも叶えてくれるのです。アリシア王女殿下もここで学び、夢を叶えて頂けると私もうれしいですわ」
フローライト夫人はそう言って下さったけれど、私はペンダント無しには魔法が全く使えないのだ。
でも、そのようなことを顔にも出さず、私は言った。
「ええ、アカデミーでの学びはこの国の未来のために活かします、オフィーリア副院長」
温室から私とフローライト夫人が出てくると、メイド服に着替えたミシェルとマリーが部屋で待っていた。
「アリシア様、ドレスは全て寝室のクローゼットに納めさせて頂きました」
ミシェルの言葉に、私は「ありがとう」と言う。
「入学式は明日になります。今日はゆっくり休まれますように、アリシア王女殿下」
そう言って、フローライト夫人は特別寄宿室を出て行った。
「アリシア様、お着替えになりますか?」
ミシェルに声をかけられて、私が「そうね、このドレスでは少し堅苦しいかしら」と言ったときだ。
寄宿室のドアをノックする音に気づいたミシェルが、扉を開けた。
そこに立っていたのは、旅行鞄を持った質素な身なりの少女。
私は彼女の姿を見るなり、あっと思った。
お母様にそっくりな、金髪碧眼の美少女。
「特別寄宿室というのは、こちらで合っているんでしょうか?」
「ええ。あなたは今日からここを利用されるリズ・ブラウンさんね?」
「ええ、そうです。よろしくお願いします」
そう――彼女が、リズ・ブラウン。
王女であるはずの私より、なぜか、お母様に似ていた。




