第十四話 ローズクォーツの秘密
侍従のマークとローズクォーツ王国の魔法騎士を連れ、俺は魔宝石が指し示す塔の最上階にたどり着いた。最上階の部屋の扉は封印されている。――俺の予感が当たっていれば、この封印された部屋の向こうに、ローズクォーツと、それを持ち去った者がいるはずだった。
「――行くぞ」
俺は封印された扉に向かって、爆発の魔法を唱える。閃光と爆風があたりを包み、魔力で閉ざされた扉は壊れた。
「アーク殿下、自分たちも参ります!」
俺の後に魔法騎士と侍従のマークが続き、部屋になだれ込む。
その部屋にいたのは。
「――攻撃魔法で、無理やり封印を解くなんて乱暴ね」
クスクスと嗤う、メイド服の女性。珍しい紫の髪に赤い目、これは相当の魔力量の持ち主に違いない。
怯まずに、俺は言い放つ。
「単刀直入に聞く。ローズクォーツを持っているんだろう?」
メイド服の女性はしゃらりと、首元からローズクォーツを取り出す。
「お望みのものならここにあるわよ。――でも、他国の王子がこの宝石に何の用?」
「それは貴女にお聞きしたい。貴女ほどの魔力の持ち主に、ローズクォーツは必要無いものだろう?」
「なぜそう思うのか、こちらこそ知りたいわ?」
悪びれずに言う彼女に、俺は畳み掛けるように言葉を返す。
「それは魔宝石の結晶だからさ。それに、元の持ち主はアリシア王女なのは解ってるだろう?」
「やはり、貴方はこの宝石が持つ本当の意味を知らないのね?」
メイド服姿の女性は紫の髪をかき上げながら言い放つ。
「いいわ、今は貴方に返してあげる。あたしがこの宝石の本来の持ち主ではないというのはイヤというほどわかったから。でも忠告しておくわ。アリシアも、宝石の本来の持ち主じゃないわよ?」
「それは、どういうことだ?」
俺が聞くと、
「あたしだってどういうことか知りたくて、この屋敷に入り込んだのにサッパリだわ」
彼女はそう言うと、しゃらりと首からローズクォーツを外し、スイーッと魔法で浮かせてこちらによこした。
「お持ち帰りなさい。彼女に渡してあげるといいわよ」
「待ってくれ、貴女は一体……」俺が言いかけると、
「名乗るほどのものではないわ」
そう言って、彼女はスッと消えた。
「――なんというか、狐に摘まれたようだったな……」
俺の言葉に、マークが同調する。
「東洋の諺ですね…とにかくアーク様、一度戻りましょう」