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前世【くノ一】の私は、全エンドが一家処刑の悪役令嬢に転生した~魔法は使えないけど忍術で処刑フラグを回避する~  作者: 青空あかな


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第20話

「「ア、アレクサンドル先生……! どうして、こんなところに」」

「それはこっちのセリフじゃよ、諸君」


 学院長はゆったりとこちらへ近づいてくる。その顔には怖さもなにもなく、ただただ穏やかで優しげな微笑みを湛えているだけ。今の状況を言っていいのか判断できず、しどろもどろになってしまう。


「こ、これは、別に大したことではないのですが……」

「だったらなぜここにおるんじゃ。しかも1年生のトップ層が揃いも揃って」

「あ、いや、それは……」

「おっと、ノエル嬢は下の方じゃったな」


 ……おい、学院長。

 

「冗談はさておき、こんなに校舎から離れてはならんよ。毒を入れた犯人も見つかっておらんのじゃから」


 せっかく、手がかりを見つけたのに。アレクサンドル先生に言う? トシリアス先生のこと。いや、この人だってまだ白だとわかったわけじゃないんだ。もし繋がっていたらどうしよう。

 みんなも同じことを思っているようで、私たちは小声で相談する。


「ど、どうしましょう、ノエル様。学院長先生にお伝えした方が良いんでしょうか」

「そ、そうね……」


 もし学院長が悪い人だったら、と思うと、トシリアス先生を尾行していることは知らせない方がいいだろう。でも、これ以上ないほど心強い味方であることも事実。


「どうした、諸君?」

「「あ、いえ……」」


 話すべきか話さざるべきか悩んでいたら、脳裏に一つの言葉が思い浮かんだ。生前プレイしていたとき、作中で聞かれたセリフだ。入学式でのアルクサンドル先生の一言。


(魔法学院での生活は時には過酷であるじゃろう。だが、これだけは覚えておいてほしい。ワシはいつでもお主らの味方じゃよ……)


 うちの厳しいじーちゃんと違って、そのときのアルクサンドル先生はとにかく穏やかで優しそうだった。もちろん、たかがゲームのイラストにすぎない。だけど、忍びの修行に疲弊していた私には、こんな先生の下で勉強できる生徒たちが本当に羨ましかったのだ。

 

「……話しましょう、みなさん」

「「……!?」」


 あのとき優しい人だと感じた自分を信じたい。それにこんな状況だからこそ、やたらと疑うのではなく人を信じてみたかった。みんなを代表して一歩前に出る。


「アルクサンドル先生。私たちは今、トシリアス先生を尾行しているんです」

「……どういうことじゃ?」


 毒物混入事件のことを独自に調べていること、アルクサンドル先生たちを尾行していること、トシリアス先生が謎の洞窟に入っていったこと……諸々説明すると、学院長は驚きつつも静かに聞いていた。


「……そういうわけで、私たちはトシリアス先生を追ってここまで来たんです」

「なんと……お主らは度胸があるのぉ。メイナ嬢やブレッドたちがワシの後をつけてたのはそのためか……」

「「す、すみませんっ」」


 攻略対象ズたちは謝っていたけど、学院長はホッホッホッと笑っていた。


「では、トシリアス先生が消えたという崖を見てみようかの」


 学院長と一緒に崖へ向かう。

 

「ちょうど、この辺りのはずです。トシリアス先生が何か呪文を言うと、洞窟が現れました」

「ふむ……どんな呪文か覚えておるか?」

「えぇっと……」


 木陰から見ていた様子を思い出す。トシリアス先生は何て言っていたっけ? ブツブツ話していたからよく聞こえなかったけど……。


「たしか……<ダークネス・アンロック>とか言ってました」

「ほぅ……それは闇属性の呪文じゃ」

「「え、や、闇属性!?」」

「どれ、まずは確かめてみようかの。汝の全てを現したまえ……<オフ・ザ・ヴェール>」


 学院長が呪文を唱えると、あの魔法陣が現れた。学院の授業でそんな属性の魔法を見たり、聞いたりしたことはない。それどころか、前世でプレイしているときだってそうだ。そう思っていたら、不意に、いつしか見たノエルの夢が思い出された。


(邪悪な存在がこの世界をおかしくしようと企んでいる……)


 闇と邪悪なんて相性抜群だ。もしかして邪悪な存在が関わっている……?


「闇魔法の解呪は非常に難しいが……ぐっ!」


 学院長が触った瞬間、突然魔法陣から黒い稲光が迸った。


「……これは相当強力な呪文じゃな。魔法を弾く魔法がかけられておる。破るのは苦労するぞ」

「「そ、そんな……」」


 魔法を弾く魔法か……だったら、私ならどうにかできるかもしれない。私が使っているのは忍術だから。あの術なら入れるはず……! 胆力を全身に巡らし、高速で印を結ぶ。


「な、何をやってるんじゃ、ノエル嬢」

「<陰遁・すり抜けの術>!」


 壁に手を当てると、すぅぅっと体が入り込んでいく。みんなの驚く声が聞こえてくる。


「な、なんということじゃ、ワシでも破れなかった魔法陣をこんな簡単に……!」

「では、このまま中の様子を探ってきます」

「待つんじゃ、ノエル嬢!」

「お、お待ちください、ノエル様ー!」


 メイナたちの声を残して、私は洞窟内部に侵入できた。光源がないからか、ほとんど真っ暗だ。でも、大丈夫。私は夜目の訓練もさせられてきたからね。暗闇でも周囲の状況がわかるのだ。ボコボコ続いている岩の間に一本道があり、どうやらゆるりと下っているらしい。

 さて、まずは状況を確認しよう。念のため、隠密行動を心掛ける。胆力を鎮めて気配を断つ。さらに、スタイル……深草兎歩! これが今の私にできる超尾行モードだ。のそのそと歩いていくと、少しずつ奥が明るくなってきた。と言っても、すごい明るいわけではなく、ロウソクがぼんやりと灯っているような明るさだ。


「……この世を統べたもう神よ……我が魔力を糧に……」


 だ、誰かの声が聞こえてくる。すかさず、近くの岩陰に隠れた。きっとあの人だろうけど、ちゃんと確認しないと……。岩陰からそっと覗く。洞窟の奥には……トシリアス先生が跪いていた。

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