第四話 『パチンコック』
けほけほっ。
「パチンコックという殺人鬼ネームのプロ殺人鬼を君らは知っているか?」
前話のラストで幸が絞め落とされた後のお話だ。
狂暴極まりない触手生物からいきなり襲われた後にぎりぎりのところでかろうじて蘇生した恵野幸は咳き込んでから解説面構えを形成する。
恵野幸。
まだお名前を覚えることができていない物覚えの悪い読者諸兄らのため軽く解説をしてやれば恵野幸とかいうこいつは情報通の新聞部員だった。
情報通で知られるこいつは地元女子中学一年二組に在籍中でものを捕食するのが物凄く遅い輩だったりもする。
ようするに哀れな幸っちは背後から触手で首を絞められた影響で全ボディがぬるぬるだった。ぬっるぬっる。ぬるぅん。
「知らなぁい」
「全然知らなーい。誰それー」
プロ殺人鬼ファンでもあるまいし。見ず知らずなプロ殺人鬼の殺人鬼ネームとかどうでもいい上に興味もない桜弘と叶はぬるぬるとした幸の解説パートに興味なさげな面構えでお茶を濁した。
咄嗟にてきとーなお茶を濁してきた彼女たちが装備するおめめの色合いには欠片の興味も浮かんじゃいない。今どきの女子中学生がプロ殺人鬼に抱く認識なんてこんなものだ。嘆かわしい次第だと地の文担当者は思う。
ぶすぶす。
「昨日の新聞獣ハントで見つけたプロ殺人鬼。このあたりに住んでるみたいだよ」
給食の捕食に飽きてきたゆえお箸で給食をぶすぶす刺してる幸はお茶を濁されるがままに解説を継続した。お行儀悪いからお箸でそういうことするのやめなさい。
「新聞部はそんな新聞までハントするのかぁ。大変なお仕事だなぁ」
「去年の末あたりまで隣町の学校で給食作る人やってたとか何とか。でも去年のクリスマシイヴ当日に同僚と生徒を十何人か殺してせいで職場を追い出されちゃったんだってさ」
「ふあー。ねむねむ。あー。ちゃんと聞いてる。聞いてるから。クリスマスイヴのお話だっけ? 分かる。ちょークリスマスイヴって感じ」
情報通で知られる幸は見るからに興味無さそうな同級生のため昨日の夜半にハントした新聞情報をつらつらと語った。つらつら。
親切にもつらつらしてくる幸に比べると彼女を見聞きする連中の構えは端的に述べ述べしてひどい。
桜弘の方はまだ聞く構えが残っていた。だがろくに聞く気が無い叶の方はスマホを触手で弄っている。
興味も無さを誤魔化すべく適当な文言でのお茶濁しを繰り出すあたり叶とかいう触手生物も流石は超絶エリート女子中学生という感じだった。
地獄みたいな学校で培われる面の皮の厚さを活用してこそ高精度なお茶濁しは繰り出すことができる。日頃の練習の成果というやつだ。
「給食作る人の職場を追い出されてからはパチンコで食い繋いでるらしい。でも素人が食い繋げるほどパチンコなるスポーツは甘くない。だからパチンコ資金調達のために強盗殺人を繰り返して殺人鬼ポイントを稼いでるんだって」
「ねえねえ叶ぇ。パチンコってなあに?」
「あーん? そりゃあれでしょ。パチンコ~って感じのやつ」
「調べた感じ中堅どころのプロ殺人鬼だから結構強いっぽい」
「えーとね。パチンコっていうのはー。あー。待って桜弘ちゃん。今から調べるからこのゲーム終わるまで待ってて」
「え。やだぁ。そこまで興味ないから調べなくていいよ別にぃ」
「メイン殺人鬼ウェポンは飛び道具のパチンコ。ぱちんってするやつ」
「パチンコっていうのは飛び道具の新鮮な殺人鬼ウェポンらしいよー。桜弘ちゃん分かったー?」
「そんなことはどうでもいいよぉ! 興味ないってゆったじゃん! クリスマスイヴのケーキのお話の方で今の私は盛り上がりたい気分なのぉ!」
「あー分かるー。この学校の給食でも繰り出されるであろうクリスマスイヴかクリスマス当日あたりのケーキが今から楽しみだよねー」
斯くして甘党な桜弘ちゃん上っ面思考はクリスマス近隣になると捕食が可能となるクリスマスケーキ一色に染まった。
超絶っ友は以心伝心である。
甘党ドラム缶生首生物の影響をもろに受けた叶は「帰りにケーキの類でも狩猟しようかな」とかみたいな思考思想を構えた。
お話は続くよー。
「桜弘ちゃんクラスの強者がおめめにも留まらぬスピード感で首を刎ね飛ばされたわけなんだし。刃物じゃなくて狙撃された衝撃で何やかんやが起きて首から上が取れたって考えた方が自然じゃないかなぁ。まあ一回当たってみるといい」
ちなみに幸は情報通なので桜弘がドラム缶生首生物と化した当日のうちに桜弘が殺人鬼に襲われたとかいう情報をすでに把握していた。
「あ。お話終わったのー?」
「はぁい。かぷっ」
お話は終わったよー。
お話を締め括った幸は仕事に対して誇りを持っているので件のプロ殺人鬼の出現ポイントが丁寧に記入された怪しげな地図を懐から取り出してくる。
差し出された紙切れを桜弘はお口で受け取った。かぷっ。情報だけじゃなくて地図まで渡してくれるとはなかなか仕事が丁寧な子だ。新鮮なプロ殺人鬼情報だけに留まらずまさかの新鮮な地図まで繰り出してくるとはね。
このまさかの事態に混乱してしまった叶はあろうことか感謝の意の鎌首を擡げさせてしまった。
「お礼に飴ちゃんをあげよー」
にゅるん。
感謝しゆく彼女はお礼の飴ちゃんを幸におてて渡す。これはいけない。このコンボ始動は明らかに叶の悪手だ。
だがここは叶の面の皮の薄さを責めるのではなく幸のパッシブお茶濁し力を褒めるべき場面なのかもしれなかった。
「わたし飴ちゃん。仲良くしてね」
叶の悪手に伴って幸のおててに触手生物からおてて渡しされた新鮮な飴ちゃんが握られる。
「やったー。飴ちゃんだぁ」
飴ちゃんは元の所持者に応じて威力が変更処理を受ける回復系アーティファクトの類だったりする。
上位存在が持っている飴ちゃんであれば文字通りの神器となった。超絶エリート女子中学生が所持する飴ちゃんであれば超絶エリートアーティファクトとなる。
少なくとも時価で三億円はくだらないであろう新鮮な超絶エリート女子中学生式飴ちゃんを受け取ったことで今回のやり取りにおける恵野幸の収支はこれでちょうど五不可思議円フラットと化した。質量保存の法則と言えよう。
「ころころ。あまあま」
「わたし飴ちゃん。ぎゃぁあああああああああああああああああっ!?」
給食を差し置いて飴ちゃんを捕食中な恵野幸を背に用件がようやく済んだ桜弘と叶は隣クラスたる一年二組教室を後にした。
ごろごろ~。ごんっ!
「いたいっ」
「よいしょ。よいしょー」
プロ殺人鬼『パチンコック』との壮絶な死闘が今まさに幕を開ける!
優雅な昼休みが終わり午後の授業が始まった。そんでさらに部活まで始まって終わった。
『ハレルヤハレルヤ~』
どすどすどすどす。
午後の授業と部活の日々が終わったわけなので気づけば部活終わりのトワイライトバスターなお年頃に時代は変容を遂げている。
時の流れはいつだって雑に早いのだ。
「部活の時間が終わったよぉ!?」
「うん!? じゃあ一緒に帰ろうねー!?」
雑に早い時の流れに従って物語は学校を下り往くお話と化してゆく。
お互いの部活が終わった果て。桜弘と叶は半ば必然のように夕焼け色の頃合に合流を果たした。相撲部と柔道部の稽古エリアは結構近いのである。稽古が終わった後にべたべたと纏わりつくことに大した労力はいらなかった。
もちろんこれなるは普通に登下校の構えと見て間違いない。
最近多いトワイライトバスターのせいで夜になっても未だに夕焼け色のお空の下を桜弘と叶が下校を繰り広げんとしていた。そうした時節から物語は始まる。
のこのこ。ごろごろ。
「はーはーはー。……ふー」
「何か急に落ち着いてきたぞぉ」
夕焼け空の河川敷を桜弘と叶が歩く。
物語が始まった矢先にしばらくのこのこ歩いたせいでこいつらのテンションは急に元に戻った。息が整ったのだ。
部活で疲弊した息が整ったということで少女たちはおもむろなお喋りパートを開幕する。まくまくまく。上位存在『夕闇の王』がハレルヤダンスを踊ってる折のことだった。
「息が整ったからねー。でも急に落ち着いたせいで幸っちから渡された地図の場所が帰り道の近くってことに気づいちゃったんだけどー」
「じゃあ早速行ってみよぉ」
「えー。めんどうくせー」
んで。部活終わりに合流を果たした桜弘と叶の両名は部活終わりに丁度良いということで幸から渡されたパチンコック出没地図に基づくパチンコック出没場所に赴こうという件を繰り出していった。
そう。今現在その刹那の部活終わりな桜弘と叶は通学路近郊の川川川川の近くにいるらしい。賢明なる読者諸兄らはこの位置関係を果たして読み解くことができただろうか。
幸運というかある種の必然というか。プロ殺人鬼『パチンコック』の出没場所は部活終わり式学校帰りの道のすぐ近くとなっている。
具体的に述べ述べしてやるならば前話冒頭のドラム缶転がし&転がりの楽ルート模索の旅路で通った朝の川縁小脇橋のあたりだ。
そんな偶然あるんだね。まあ偶然じゃないんだけど。
「ごろごろぉ~」
「よいしょよいしょ。ねー桜弘ちゃん」
「なあに?」
「今って部活帰りじゃん? 行くの面倒くさくない? 普通に帰ろうよー」
「うぅ。お腹が空いたよぉ。早くお家に帰りたいよぉ」
「はぁあああああああああああーっ!? お前がプロ殺人鬼の出没場所行こうとか述べ述べし出したから私が仕方なしに付き合ってやってんだろぉおおおおおおおおおおおおーっ!? 暢気にお腹空かせて帰りたいとかほざいてんじゃねーぞこのドラム缶生首女風情がぁああああああああああっー! ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーっ!」
「うわ。何か叶が急にキレてる。こわぁ」
「キレたら落ち着いた。じゃあいこっか」
「うん」
のこのこ。ごろごろ。よいしょよいしょ。
その場のお喋りの流れの末。帰り道のついでにプロ殺人鬼に当たってみようという旨の結論を出した桜弘と叶は仲良しこよしの登下校風景を構えていた。
彼女たちが向かう先はもちろんプロ殺人鬼『パチンコック』の出没地点に他ならない。
部活終わりの貴重なお時間を活用して桜弘ちゃんボディを取り戻す。
↑な本作の主要目的のためにプロ殺人鬼に立ち向かう悲壮な覚悟を少女たちは固めたのであった。
「わしはトワイライトバスターの日にのみ出没するヤシガニ。ここ連日のトワイライトバスターの影響で疲労困憊しておる」
ドラム缶が転がる速度で登下校ルートの河川敷小脇歩道を歩む少女たちの小脇を疲労困憊のヤシガニが進む。彼は夕闇の王に振り回される哀れな犠牲者だ。
哀れなヤシガニを見れば分かるが桜弘と叶が渡る部活帰りのお空は連日のトワイライトバスターの影響もあり夜の時間なのに相変わらず夕方で夕暮れな色合いをしている。
「夕焼けの空が綺麗だなぁ」
「私の方が綺麗だよ」
「叶の自意識の過剰さはお空みたいだなぁ」
「えへへ」
ドラム缶で転がり。あるいはドラム缶を転がしつつ。登下校中の世間話を互いに繰り出し合うことで桜弘と叶はひとしきりお茶を濁していた。
これは。まさか。
「せけんばなしー」
「せけんばなしぃ」
これなるは『地の文担当者の卓越した筆致が光る流麗な世間話描写』だとでもいうのか!?
しかしその刹那。
確かに地の文担当者が感嘆するほど流麗な世間話描写をひとしきり行ってきた彼女たちではあった。だがしばしの下校中世間話描写を経てやがて少女たちは自らがお年頃の女の子であることをふと思い出してしまう。
こいつらが中学一年生の女の子であるという事実がここに至りて鎌首を擡げ始めたのだ。
雲行きのお話をしていた筈の彼女たちのお喋りの行く先はだんだんと雲行きが怪しくなる。少女たちの世間話はいつしか非常にセクシュアルな内容に足を踏み入れ始めていた。
いわゆるえっちなシーンというやつだ。
読者諸兄らはここから繰り広げられるえっちな会話に対する心の準備とかをお願いしたい。地の文担当者はそう思った。
↓ではここから開幕するえっちなお喋りをどうぞ。
「ねえ桜弘ちゃーん」
「……くわんくわん」
通学路を素直に辿った挙句にいつしか川とか橋の近くの道行きに到達したあたりにおけること。高速回転移動の影響で桜弘はおめめを回していた。
おめめを廻す桜弘ちゃんを見ていたら何やら変なことを思い至った叶がふと話題を切り出してくる。話題を切り出さんとする叶のおめめにはセクシュアルな事柄についての明確な興味が湧いていた。
ふむ。そういうお年頃みたいだね。
「そういえば桜弘ちゃんってさー」
「なあに? くわくわぁ~ん」
「桜弘ちゃんのドラム缶って中に何が入ってるのー?」
「はぁ? そういうえっちなこと聞くのやめてよぉ」
「教えろぉおおおおおおおおおおおおおおーっ!? 教えろよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーっ!? 教えないとお前の首の後ろに私の粘液とか普通に塗りたくるぞぉおおおおおおおおおおおおおおーっ!?」
「はい。昨日はケチャップが入ってましたぁ」
果たしてトワイライトバスターによる夕暮れ時色な夜の土手を歩く女子中学生二人連れはとってもセクシュアルな会話を繰り出し始めていた。
お、桜弘の中身!?
あわわわわ。これ絶対えっちなやつじゃん。
それもこれも急にキレた叶の迫力にびびった桜弘が全面的に悪いのである。
叶とかいうお名前の輩は父親によく似て情緒不安定なのでこうして急にキレることが度々あった。実際問題のお話としてセクシュアルな問いを詰問してきた叶のおめめは血走っていて結構怖い。
それに恐れをなした桜弘のお口から斯くして極めてセクシュアルな事実がここに明かされてしまう。
「ケチャップ? ……ケチャップ? ……ケチャップ!」
「はい」
なんと彼女の現ボディであるドラム缶の中にはびっしりとケチャップが入っていたのである。
あわわわわ。露骨にえっちなシーンじゃん。
これはいけない。このままだと本作が対象年齢十八歳以上該当作品扱い送りと化してしまう!
唐突なケチャップの登場に地の文担当者は露骨な焦りを見せた。
「私ケチャラーだからケチャップ大好きー!」
「私は別にぃ。嫌いではないけどぉ」
桜弘のえっちな告白を聞いた叶は露骨に興奮し始める。彼女は重篤なケチャラーだった。
否。そうではない。
たとえケチャラーでなくとも友のボディの内部に新鮮なケチャップが詰まっていると言われて冷静さを保てる女子中学生がいるだろうか。いや。いない。
きゅぴーんっ。
叶のおめめがケチャップを思わせるほどに血走る。結膜炎ですか?
そして――
ああ。なんたることであろうか。
――ケチャップに対する欲望を抑えきれなくなった叶は桜弘の後ヘッド後方にあるドラム缶のキャップみたいなところを欲望の赴くままにぐりぐりと取り外し始めてしまったのだ。
ぐりぐり。ぐりり。
今ここに女子中学生の欲望が暴走していた。
ああ。これはよくない。
よくないというかこれ以上はダメだ! このままでは本作が本格的に本作が対象年齢十八歳以上該当作品になってしまう!
「うわー。マジかー。ならここの取り口空けて中身みーちゃお。うへへへへ」
「ああああああああああああっ!? やめてぇえええええええええっ! 私のドラム缶の中身見ちゃやだぁああああああああああっ!」
きゅぽんっ。
「……は? ケチャップじゃないじゃん。何これ。は?」
挙句の果てに晒された乙女の中身は新鮮なケチャップ色じゃなくてやわらかな白とかクリーム色とかだった。
衝撃の友の中身を目撃した叶は思わず唖然とする。
「今日は生クリームだったよぉ」
唖然としている叶に桜弘は渾身の「どや」を見せた。
うわ。腹立つ面構え。
「へー」
ここまで堂々たるどや面構えを見せられては納得するしかない。
なので叶はひとまずの納得の構えを取った。とくとくとく。
地の文担当者が書き忘れていたが桜弘の謎多きドラム缶の中身は何故か日替わりだったりする。へー。
たとえば先日お風呂場で確かめたときにはパイナップルの缶詰と化していた。
「わぁ。めっちゃパイナップルだぁ」
そういう感じで執り行われた先日の風呂場でのセクシュアル的確認シーンの折には必然としてお風呂場にパイナップルの香りが充満している。
「お前風呂場でパイナップルもぐもぐしただろ!」
「もぐもぐしてないもん! 私パイナップルなんて捕食してないよぉ!」
「嘘つくなぁああああああっ! だってお風呂場にパイナップルの香りがこんなに充満してるじゃないかぁああああああああっ!」
「うぇええええええええんっ。私パイナップルもぐもぐしてないもぉおんっ」
その晩の桜弘は両親からそういう感じでめっちゃ叱られていた。
パイナップル捕食の濡れ衣を着せられるという理不尽な叱られを科せられた桜弘は世の中を理不尽を嘆いてその日の枕をパイナップル汁で汚している。まあこいつに人の心なんてないから落ち込んだりとかは欠片もしてないけどね。
「生クリームかー」
「そうだよぉ。えへへ」
ケチャップじゃなかったのは普通に残念だがそれはそれとして甘いものが別に嫌いなわけではないのが叶という輩だ。
「すくいすくいー」
「あひぃいんっ」
桜弘のキャップ部分を首尾よく取り外した叶は友の中身がケチャップでないことをすでに認めている。
だが友の中身が新鮮なケチャップでないことを確認したにもかかわらず叶なる少女はキャップを締めなおしたりはしなかった。
キャップを締めるでもなくあろうことか中身に触手を突っ込んで生クリームを掬い取り始めたのだ。ぺとーん。
「なめなめー」
「か、叶ぇ。な、なにやってんのぉ。う、うひぃいっ」
中身を指先でねろねろと掬い取った叶は桜弘産の新鮮な生クリームをぺろぺろとし始めた。
うわ。なんだこいつ。うわ。
地の文担当者は叶の所業に普通にドン引きする。
なんという卑しい女であろうか。この女には友の中身をぺろぺろなめなめすることに何の抵抗もなかった。
「なめなめー」
「やめてぇ」
なめなめ。ぺろぺろ。いやぁあああ。
卑しい女で知られる叶は掬い取った生クリームをおおむね舐め舐めし終えるとまたしてもドラム缶の中身を掬い取り始める。
掬い取ったら舐め舐めした。舐め舐めしたら掬い取る。
悪辣な永久機関がここに完成した。
そういうわけであるので極めてセクシュアル極まりない描写がしばらくの間繰り広げられる。
「なめなめー」
「いやぁあああ……」
……。
「なめなめー」
「あひぃぃいい……」
これ以上はダメだ! こんなのもはや官能小説ではないか!
極めてセクシュアルなシーンを眺めていたら何か思ったより尺が長そうな雰囲気を感じ取った地の文担当者は露骨に焦り始める。
しかしその刹那。
ごーん!
ふと気づけば何だか凄い音が響いた。
「めっちゃいたいっ!」
ヘッドから凄い音を鳴らした桜弘はダメージ判定サウンドエフェクトをお口から発する。
むむ。これはどうしたことであろう。
せっかくの極めてセクシュアルな読者サービスシーンが中断されてしまったではないか。
まあようするにプロ殺人鬼『パチンコック』が現れて桜弘のヘッドをパチンコで狙撃してきた次第だった。
今しがたの「ごーんっ!」って凄い音は桜弘のヘッドにパチンコ玉がぶつかった音だね。
桜弘は相撲部員だ。
しかしボディにはあまり恵まれていない。ボディで圧倒できないがゆえに立ち合いは当然ヘッドから行った。
ヘッドから立ち合いを行なう力士の常として彼女の頭蓋骨の強度はヘビーアロイアレイを粉砕するほどにめちゃくちゃ鍛えこまれている。
当たったのが桜弘のヘッドだったので「めっちゃいたい」だけで済んだ。
だが仮に初撃が触手生物の叶に当たっていたら再生モードに入ってしばらく動けなくなっていた筈だ。
「わー!? な、なに? びっくりしたー」
びくびく。
唐突に飛来したパチンコ玉の物凄い轟音やら桜弘の悲鳴やらに驚いた叶は素でびびる。びくびく。卑しい女である彼女には今しがたの自らがセクシュアルな行いの渦中にあるという自覚があった。
びくびくとする彼女のお口は生クリーム塗れでめっちゃ汚い。べとべと。こいつは喰い方まで卑しい女だな。
卑しい少女のびびりに応じるかの如くプロ殺人鬼が何やら叫んでくる。
「俺はプロ殺人鬼『パチンコック』! 元調理師で現プロ殺人鬼兼アマチュアパチプロをやってる男だ! 明日の朝のパチンコ資金を貯めるためにそこらへんの通行人を片っ端から強盗殺人している! 最近の中学生は金を持ってることが多いからお前らも平気で襲うぜ! 喰らえ! パチンコ玉狙撃攻撃!」
そして満を持して現れてきた今回のプロ殺人鬼たるパチンコックは殺人鬼ネームの名乗りをあげてきた。
ぱちん。ぱちん。
自己紹介を繰り出したパチンコックは名乗り終えたのだからやることはひとつとばかりにパチンコでパチンコ玉をめっちゃ飛ばしてくる。
はた迷惑な殺人鬼だね。
しかし殺人鬼は殺人鬼でもパチンコックはプロの殺人鬼である。繰り出してくる技量は本物だ。こいつの強さは傍迷惑という表現では済まないぞ。
かんかんかんかんかん。
「うわぁあああああああああああっ! パチンコ玉がドラム缶に当たる振動が私の脳みそに伝わってきて物凄く気持ち悪いよぉおおおおおおっ!」
遠方から飛来するパチンコ玉の衝撃に桜弘は情けない声で悲鳴を上げた。
これは。まさか。
これなるは『戦闘開始』の構えだとでもいうのか!?
今しがた桜弘に直撃したパチンコ玉たちはその全てがボディのドラム缶部分に直撃している。ヘッドに当たったパチンコ玉は一つもなかった。
パチンコックはプロ殺人鬼だ。
プロの殺人鬼なだけあってパチンコ狙撃の腕前はなかなかを有している。
鍛え抜かれたヘッドにそこまでダメージが入らないと見るや即座にドラム缶部分に狙いを切り替えて来たわけだった。すげぇ。
ぱちんぱちんぱちんぱちん。
かんかんかんかん。
急に現れてきたプロ殺人鬼『パチンコック』は物理ダメージではなく衝撃と騒音による精神ダメージを狙ってきたのである。おお。何というクレバーな戦況判断であろうか。
ボディ部分がドラム缶と化した上で超高速のパチンコ玉がドラム缶部分に何度もぶつかってくる。これは余人だと想像もできない過酷な状況だ。
「おぐっ。おぐぐぐぐぐっ」
あくまでも女子中学生に過ぎない桜弘の上っ面精神力は急に訪れた窮地のなかで少しずつ限界に近づいてゆく。おぐおぐ。
「うわー。めっちゃうるせー」
しれっと桜弘の背後に回りこんでパチンコ攻撃を防いでいる叶もめっちゃうるさそうにしていた。
実際問題のお話としてかんかんかんかんとさっきからめっちゃうるさかった。
ぱちんぱちんぱちんぱちん。
かんかんかんかん。
再三述べ述べさせてもらえばようするにめっちゃうるさい。
「おぐぐっ。おぐぐぐぐぐっ」
「あーもうっ。うるさいうるさいうるさーいっ」
このまま行けば桜弘は過酷な環境由来のストレスで死んでしまう可能性もある危機的状況といえよう。ついでに叶だって騒音のストレスで死んでしまうかもしれなかった。
「うははははッ。俺のパチンコ乱れ撃ちに手も足も出まい!」
「くっ。確かに手も足も出ない! 叶ぇっ。あいつ相当の強敵だよぉ!」
前年度のわんぱく横綱である自分が手も足も出ない。
その事実におてても足もない桜弘は戦慄した。
割と危機感を抱いている桜弘を盾として少しずつ前方に進む叶も――
「そうだねー」
――と同意してお茶を濁す。
ふむ。これは危機的状況に違いなかった。
述べ述べするなれば絶体絶命のピンチというやつであろう。
ずりずり。よいしょ。よいしょ。ずりずり。
「うぉおおおおおおっ! 私を盾にして接近した後こっそり背中に忍び寄った叶が触手柔術でパチンコックを絞め殺す作戦のために耐えろ私ぃ! 私たち二人の友情ポイントでお前をぶっ殺してやるぞぉ!」
地の文担当者が書き忘れていたが桜弘と叶は先ほど描かれた投下校描写の渦中において事前にパチンコック対策ドクトリンを相談していた。
危機的状況にして絶体絶命のピンチの渦中のなかを二人の友情ポイントが編み出したパチンコック対策戦術を叫びながら桜弘は少しずつ進んでゆく。
「よいしょ。よいしょー」
桜弘がずりずりと進んでゆく推進力の正体はドラム缶の後ろから彼女を押す叶の触手パワーだ。
ずりずり。よいしょよいしょ。ずりずり。
ぱちんぱちんぱちんぱちん。
「クッ! 何か気づいたらちょっとずつ近寄ってきてやがる! 俺は遠距離タイプのプロ殺人鬼だから近接されたら手も足も出なくなるのは俺の方だ! 一体どうしたらいいんだ!」
かんかんかんかん。
パチンコ玉を乱れ撃ちし続けるパチンコックは少しずつこちらに迫り来るドラム缶の姿に慄き始める。おのののの。
思ったよりメンタルの弱い輩だな。
だがそれも止むを得ないお話と言えよう。
パチンコックは生粋の遠距離タイプ殺人鬼だ。近接戦闘力はとても低い。
人間サイズ巨大どんぐりに判定負けするほどの弱さと言えば読者諸兄らにはその弱さが伝わる筈だ。
桜弘と叶は絶体絶命のピンチに陥っている。同時にパチンコックの方も普通に追い詰められていた。
まさしく現状は生と死の鬩ぎ合いとでも呼ぶべき生と死のデッドヒートと述べ述べすることができる。ふむ。こうして見るとなかなか熱い戦いだね。
うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!
作中の盛り上がりを感じた地の文担当者は何か急に叫んだ。
ずりずり。ぱちんぱちんぱちんっ。
ずりずり。かんかんかんっ。よいしょよいしょ。
「おぐっ。おぐぐぐぅ。ぐぇええええっ」
さっきからボディ部分のドラム缶へとむやみやたらに飛ばされてくるパチンコ玉の騒音のせいで桜弘はすっかりグロッキーモードに突入している。
「あー。マジうるせー。ヘッドの中身が痛くなってきたー。あー。つらいー」
それでも一生懸命頑張る叶の触手を動力としてドラム缶はちょっとずつプロ殺人鬼『パチンコック』に近づいていった。
んで。
「うわぁああああああああッ!? 何か気が付いたらターゲットの女子中学生二匹がめっちゃ近づいてきてるぅううううッ!?」
だんだんと書くのが面倒臭くなってきたから作中時系列を少々省いた時間帯がその末に訪れる。
そう。苦労したドラム缶ずりずりの果てに激しく嘔吐すればお口からの飛沫が直撃する程度の距離程度まで中学生二匹はプロ殺人鬼に接近してのけたのだ。
これはもうちょっとで桜弘と叶の勝利場面と見て差し支えない。いわゆる数分後の世界というやつだ。
地の文担当者がちょっとおめめを離した隙に構築された今の場面はそんな感じの頃合となっている。へー。
「はー……。はー……。もう……無理ー……」
されど勝ち確状況場面に到達するに伴ってあとちょっとのところで叶がへばってしまう。生クリームがびっしり詰まったドラム缶をここまで押してきたのだ。
そりゃ栄光の地元女子中学柔道部員の叶だって触手パワーと体力が限界を迎えてしまうに決まっている。
ぐにゃぐにゃ。ぐんにゃり。
限界を迎えたのだから彼女の体内の触手たちはまるで陸に打ち上げられた触手生物のようにぐんにゃりとしてしまっていた。
「わ、私も無理ぃ……。かんかんかんかんパチンコ玉が当たりまくった振動のストレスでもう駄目ぇ。ストレスでストレス死しちゃうぅ……」
くわんくわん。
ぐんにゃりしてしまった叶と同様に桜弘の方も限界を迎えている。
だって冷静に考えてみて欲しい。ボディがドラム缶と化した上でそのドラム缶ボディにパチンコ玉をかんかんかんかんとぶつけられまくったのだ。そんなことをされれば誰だってストレスで死んでしまうに決まっている。むしろここまで持っただけめちゃくちゃ頑張った方だ。
「うははははッ。一時はヒヤっとしたがこれでパチンコック様の勝利だ!」
ぐんにゃりした小娘二匹の構えを見て取ったプロ殺人鬼『パチンコック』はとうとう勝利を確信する。
トワイライトバスターの夕日色の光が地上を照らすどっかの土手河原の渦中でのことだった。
「あー。マジだるー。つかれたー」
ちらり。
勝利を確信したパチンコックのおめめ前で二人ともグロッキーと化してしまった女子中学生の片割れ――叶は周囲の地理環境ポイントをチェックする。お。なんだなんだ。伏線回収の構えか?
「また殺人鬼ランキングが上がっちまうぜ!」
ぐんにゃりとしている少女たちの小脇で本格的な勝利を確信したパチンコックは殺人鬼ランキング向上の予感からしゃかしゃかと踊り始めた。
しゃかしゃかしゃか。うわ。めっちゃ踊るじゃん。
いわゆる勝利確信のダンスというやつであろう。
ふはははは。パチンコック様の勝利だぜ。
パチンコックが繰り出す勝利の舞いのキレを鑑みた地の文担当者もパチンコックの勝利を素直に確信する。これは勝負ありだな。
しかしその刹那。
「きしゃぁあああああああああああああああッ!」
得体の知れない叫びがどこぞから巻き起こる。何か急に巻き起こった叫びの発信源は近くの草わらからだ。この近辺は川の小脇の土手みたいな場所となっている。
え。え。何。何があったの?
何やら急に巻き起こった謎の叫びに地の文担当者は混乱の構えを見せる。
実際問題のお話として急に巻き起こった謎の叫びに冷静沈着で知られる地の文担当者は素でびびっていた。
これは由々しき事態と言えよう。ここは一旦冷静になるべきだ。読者諸兄らもどうか冷静になって欲しい。
だが状況把握に努める冷静沈着な地の文担当者の混乱に追撃を加えるかの如く事態は急転直下の構えを取った。
ぎゅるるるるるぅううッ。ぎゅうぎゅうッ。
「きしゃぁあああああああああああッ!」
「おぐぐぅっ!? ぐぇええええええええええええっ!?」
先ほどのものと思しき謎の叫び声と共に何者かが桜弘のドラム缶に馴れ馴れしく巻きつき始めたのである。巻き付かれた桜弘は苦悶の面構えでお茶を濁した。
え。なにこの展開。こわい。
唐突に巻き起こった謎の怪奇現象の数々に露骨にびっくりした地の文担当者は低レベル帯のひよこの如く錯乱してしまう。ぴよぴよぴよ。
錯乱した地の文担当者を嘲笑うかのように叶がにやりと嗤った。
「朝の登下校を繰り出すときに桜弘ちゃんが踏み潰した人喰い四葉のクローバーの類。朝方に踏み潰されて弱ったボディを回復させるため近くに弱った人間がいれば当然ボディ締め上げ殺人を繰り出してくるに決まってる」
お。何か叶が解説パートしてくれるらしいです。やったね。
「ボディの大半が触手と化していて締め上げにくい私よりもドラム缶体型で締め上げやすそうな桜弘ちゃんの方に行く可能性は高いだろうと睨んでいたけど。予想通りだったねー」
あ。はい。何かそういうことらしいです。
そして叶は「どや」って面構えを見せてきた。腹立つやつである。
しかし渾身のどや面構えを見せてきた叶の一方でプロ殺人鬼『パチンコック』の方は追いつめられるどころかさらなる勝利を確信していた。
「うはははははははッ! どうやら運まで向いてきたようだな! まさか通りすがりの人喰い四葉のクローバーが俺に協力してくれるなんてな! これはめったにない好機だぜ! この好機を最大限生かしたい俺は人喰い四葉のクローバーとパチンコ玉の波状攻撃でトドメを刺してやらぁああああああああああああッ!」
勝利を確信していた状態から追加で勝利を確信したパチンコックは先ほどよりさらに上がったテンションで叫ぶ。
うわ。テンションたけぇ。
まあ状況だけ見れば通りすがりの人喰いクローバーが援軍に駆けつけたみたいな感じなのだ。実際問題としてこれは見るからにパチンコックの勝利と言っても過言ではない。
ふむ。これは第四話にして主人公&ヒロイン死亡エンドで本作が完結する系の流れなのであろう。冷静沈着な地の文はクールに本作の結末を推察した。
え。気が早いって?
だってほら。見てみてよ。
人喰い四葉のクローバーからボディを締め上げられてる桜弘なんてもう吐きそうになってるんだよ?
こっからの逆転なんて無理無理。地の文担当者がそう思いかけたその刹那。
「おぇえええええええええええええええええええええええええええええっ」
どばばばばばばぁっ。
パチンコ玉をぶつけられまくって体調が悪いところに人喰いクローバーからぐいぐいと締め上げられて内臓を圧迫された桜弘は当然の理として盛大に嘔吐した。
ちなみに本日の桜弘の中身は生クリームなので吐き出す吐瀉物も当然ながら生クリームとなっている。
大自然の摂理に基づき大量の生クリームを嘔吐したわけだから吐瀉物が降り注ぐ先はもちろんおめめ前で勝利を確信してるパチンコックだ。
「ぎゃぁああああああああああああああああああッ!? 俺は重篤な生クリームアレルギーなんだぁああああッ! ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああッ!?」
ドラム缶生首生物のお口から吐き出された大量の生クリームを全ボディに浴びたパチンコックは重篤な生クリームアレルギーであるので何かすぐ死ぬ。
ばごーん。即死だった。
桜弘を盾に進んでいた道半ばにおける物語だった。
「む。このあたりは朝通ったあたりじゃん。ならこのあたりの地理環境をいい感じに利用して殺そう」
途中で体力の限界を迎えた叶はこのあたりが今朝通り過ぎた場所であることを思い出す。前話の冒頭の川川川近所あたりのことだ。
地理条件を察した彼女が活用せんとしたのはかつて踏み潰したことを何となく覚えていた人喰い四葉のクローバーの類だったりしている。
そう。人喰い四葉のクローバーの生態を利用して桜弘を締め上げて搾り出される本日のドラム缶の中身な生クリームを用いたアレルギー殺人を彼女は咄嗟に立案したのだ。おお。これは凄い。
流石に最上位プロ殺人鬼の血が身の上に流れているだけあった。素晴らしいプロ殺人鬼適性と言えよう。父親の才能をしっかり少女は受け継いでいた。
給食を作る人として働いていた輩が何故かクリスマスイヴ前日にプロ殺人鬼と化してしまった。
幸から得た情報をもとにパチンコックの弱点が大量の生クリームであることを叶は見抜いていたのだ。
「はー……。はー……。強敵だったなー……」
しかし殺人計画が綺麗に嵌ったとは言っても仮に本日の桜弘の中身が生クリームでなければ普通に敗北している。
これはどこからどう見ても紙一重の勝利だった。
ぐにゃぐにゃ。ぐんにゃり。現に全ボディがめっちゃ疲れた叶はぐんにゃりとしている。
「ぐぇええええええええっ」
ぐんにゃりとした叶のおめめ前で苦悶の声を上げているのは新鮮な人喰い四葉のクローバーの類にさっきから締め上げられているドラム缶生首生物の類だ。
このままでは普通に遠からず死ぬ構えと言えよう。
なので心優しい叶はお疲れモードの触手に鞭打ちひとまず桜弘を横倒しにしてあげた。
がこん。
「いたいっ」
「よいしょ。よいしょー」
ごろごろごろ。
「ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああッ!?」
それから横倒しにした桜弘を何度かごろごろさせてやる。
桜弘をごろごろさせてやったことで弱っていた人喰い四葉のクローバーはあっさり死んだ。
これにて凶器の処理も完了の構えである。
「桜弘ちゃーん。大丈夫?」
「うぷっ。お口のなかが生クリーム味になってりゅぅ。甘いよぉ」
「へー」
沈みかけのトワイライトバスターが照らす部活終わりの帰り道で少女と少女はまじまじと向き合った。
今この子にキスをしたらファーストキスの味は生クリーム味になるのかな。
大好きな子との帰り道の途中で叶はそんなことをふと思った。