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第三十七話 弟虐待サッカー

 こないだの出来事を物語ろう。


「俺は小学校ッ! 何か急に爆発するぅううッ! ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!?」


 ばごーん。


 このあいだ地元の小学校が爆発した。


 爆発したのだからやることはひとつとばかりにその小学校は廃校になった。悲しい事件というやつである。


「せっかく学校が廃校になったんだから遊ぶぜ」


「家にいると親のおめめが怖いからお外で遊ぶぞ」


「俺たちは自由だー!」


 なので今現在の町には暇になった小学生たちがわらわらしていた。わらわら。わらわら。まったく。元気の良い連中だぜ。


「うひぃいいッ。平日の昼間っからゲームコーナーに入り浸るのたのちぃいッ」


「俺は特に意味もなくサッカーボールを蹴り転がす。キックキック」


「ぼきは変態おじさんだぷーッ。書き入れ時とばかりに小学生を狙うぷくーッ」


 親のおめめを避けて街に繰り出した小学生たちはゲームコーナーに入り浸ったり近所の公園でサッカーやら野球やらを繰り出したりとそれぞれが我が物面構えでこの世の春を謳歌している。


 まさしく人生で一番楽しい時間というやつだった。


 元気塗れな廃校済み少年少女たちは今まさに黄金時代を生きている。


「俺は小学五年生の朝露(あさつゆ)若葉(わかば)……。学校が廃校になって自由を手にした小学生の野郎だったりする……。でも全然自由じゃない……」


 しかしその一員である筈の某少年は疲労困憊の面構えで今日も死に怯えていた。


 朝露(あさつゆ)若葉(わかば)


 朝露(あさつゆ)の長男として知られる十歳の少年は母校が爆発した影響で絶賛この世の春を謳歌中な身の上を送っている。


 述べ述べするなれば彼はわらわら暇人小学生の一人だ。


 理論上はその筈だった。


 この世の春を謳歌している筈の少年たる彼は本作第十四話で登場した園芸部期待のルーキーこと地元女子中学一年三組朝露(あさつゆ)瑞菜(みずな)の弟だったりする。へー。


 まあ最近の街中は小学生がわらわらしているとかさ。


 第十四話で登場した園芸部の子の弟が死にそうになってるとかね。


 そんな時代背景はひとまずさておき。











 小学校が爆発したとかいう事情は置いといて何か唐突に地元女子中学の部活事情についてここらでちょっと語る。


 これなるは作中展開における説明パートというやつだ。


 意外に思われる読者諸兄らもおられるだろうが地元女子中学の部活は割かしスタンダードな代物で揃えられている。珍しい部活はあまりない品揃えだ。


「俺は通りすがりの地元女子中学部活勧誘ポスター。地女子の部活ラインナップが具体的にどういう品揃えなのか親切にも説明してやろうか?」


「私は通りすがりの暇人女子小学生。私の成績じゃ地女子に入るの普通に無理だから説明して貰う必要はありません」


「俺は今まさにこいつらの背中寄りかかりを受けてるガードレールだ! ここは街中だぜ!」


 街中パートから地元女子中学の部活説明パートを急に繰り出してやれば地元女子中学の部活は二十個ある。二十個で完全固定状態だった。へー。


 二十という部活数は三十三年前のものと全く同じらしいね。増減の余地やら部活の廃部&新設の余地は地元女子中学において存在しないのだ。


 地の文担当者が書き忘れていたが地元女子中学は地元では「地女子」の名で親しまれている。でも今後「地女子」の呼称は二度と出て来ないので読者諸兄らがそれを覚える必要はなかった。


 そんな地女子たる地元女子中学は青春の汗を流すとか勉学に励むとかみたいな低レベル目的では運営されてはいない。


 地元女子中学の目的はただ一つ。


 上位存在『目上の大人』を人工的に生み出すことだった。


 そのために地元女子中学は運営されている。なので『あのお方』が育まれた環境には徹底的な保存保全が加えられていた。


「ふーふーッ。俺は非行高校生。金属バット片おててに街中を徘徊する」


「俺はガードレールだ。どうした高校生と思しき非行少年。息が荒いぞ」


「……っ。危ないっ。ガードレールさん逃げてっ」


 この世界最高峰のお嬢様中学なくせに普通の給食があったり徒歩通学と電車通学以外が禁止されていたりするのはこうした事情からだ。


 典尼パイセンは愚民家系一族出身者だったから中学生時代に普通の中学生やってたらしいです。


 お嬢様中学だから超絶名門校なのではなく超絶名門校扱いになったからお嬢様がわらわら入学するようになったのである。わらわら。地元女子中学のカリキュラムにおける右往左往にはこうした交錯があった。


 保全やら右往左往やらがあるから部活とか行事とかに関して厳格な規則があるんだってさ。


「ふーふーッ。この世界に対する漠然とした不満から非行高校生と化した俺は街中のガードレールを軒並み破壊する! ふんふんッ!」


「ぎゃぁああああああああああああああああああああッ!?」


「お前……っ。何の罪もないガードレールさんをよくも……っ」


 三十六年前に当時小学生だった『あのお方』が旧地元中学のサッカー部員を皆■しにした影響で『あのお方』が通っていた頃の旧地元中学からサッカー部は完全消滅している。


 当時存在していないなら今の地元女子中学にだってサッカー部は存在しない。環境保全の一環というやつだ。


 環境に配慮した脈絡があるので中学でサッカーがやりたいお嬢様やらサッカーを極めたい超絶エリート少女やらは泣く泣く別の中学に進学する。


 難しい社会問題だった。


「ガードレールさんの仇……っ。普通に許さんっ。女子小学生ぱんちっ!」


「いたいッ! 効くかそんなもん! カウンターで繰り出される非行高校生バットをヘッド上空から喰らえ!」


「ぐぇええええええええええっ!?」


「あわわわわわ。通りすがりの地元女子中学部活勧誘ポスターな俺はおめめ前で引き起こった喧嘩に恐れおののいているぜ……」


 しかしサッカー部無き地元女子中学に入った小娘たちとて現役女子中学生な身の上である。


 日々のルーティーンハードワークをこなしていると女の子なら誰だってじわじわと新鮮なサッカーをやりたい欲が高まってくるものだ。地の文担当者だってそうである。この世界においてサッカーは女の子にめっちゃ人気という設定があった。


 でもサッカーがやりたくなったからと述べ述べしても女の子たちが休みの日にわらわらと集まってサッカーをやろうと言い出すのはちょっと気恥ずかしかった。


 だってお年頃の女の子だもの。面倒臭い連中だぜ。


 地元女子中学一年生の面々は複雑な精神性を抱えて今日も生きていた。


「金属バットの殴打で頭蓋骨を粉砕された私は倒れる……。ばたりっ」


「ふーふーッ。金属バットで小学生の小娘を殴り倒した非行高校生な俺はトドメを刺す構えを取るぜ」


「ひぃいいいッ。普通に殺人じゃねえか。地元女子中学部活勧誘ポスターな俺は小市民だから腰を抜かして身動きが取れねえ……」


 サッカーがしたい。


 でも我先にサッカーを繰り出すのはお年頃だからなかなかできなかった。


 果たしてそういうときに役に立つのが小学校が爆発した影響で現在黄金の余暇を構える可愛い弟どもだったりする。


 その刹那。


 説明パート小脇で繰り広げられる「金属バット非行高校生ガードレール殺害&女子小学生を殴り倒し事件現場」の小脇に現れる超絶エリート女子中学生の影!


 ぱたぱたぱたぱた。


「身動きが取れないなら好都合。私は地元女子中学一年六組所属な生徒会処刑メンバー貝秀(かいしゅう)羽後(ぱしり)


 現れてきたのは生徒会処刑メンバーの貝秀(かいしゅう)羽後(ぱしり)とかいう輩だった。ぱたぱたぱたぱた。


「磔中のポスターが一匹逃げたせいで今週のポスター磔担当だった私は功徳消費課外授業ポイント獲得コンボからの自爆営業ポスター捜索をパイセンたちに無理やり強要された。小学校の頃から頑張ってこつこつ貯め込んだ功徳をこんな雑用で全部消し飛ばされた私の気持ちがお前に分かるか?」


「そ、そんなこと俺に述べ述べされても困るぜ」


「率直に述べ述べして今の私はめちゃくちゃぶち切れてるから普通に許さん。処刑用扇子エッジで切り刻まれて死ね。ぱたぱた」


「ぎゃぁあああああああああああああああああああああッ!? 俺は切り刻まれて死んだぎゃぁあああああああああああああああああッ!?」


「非行高校生な俺はその余波で切り刻まれて死んだぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああッ!?」


 だからそれはきっと可愛い弟どものお話の傍らの物語なのかもしれない。


 いつかのどこかの休み前の日な街中における出来事だ。多分小学校爆破事件直後の金曜日の時期の出来事でもある。


 斯くしてガードレールと非行高校生と地元女子中学部活勧誘ポスターは八つ裂きにされて死んだ。悲しい事件というやつだった。


 んで。


「はぁ。疲れた。かえろ。ぱたぱた」


「……あの制服。地女子のやつだ。すごい。かっこいい。何か急に地女子に入りたくなってきた。これから勉強頑張って私もいつかあんな風になりたいな」


 こつこつ貯めてた功徳&課外授業ポイントを全て使い潰して雑用に扱き使われた哀れな貝秀(かいしゅう)羽後(ぱしり)はひと仕事を終えたので当然去る。ぱたぱたぱた。彼女は上級天使の血を引いていた。


 ぱたぱたと去ってゆく羽後(ぱしり)の背にきらきらとした憧れおめめを向ける頭蓋骨陥没女子小学生はいっぱい勉強して地元女子中学に入りたいものだという大志を抱く。


 少女はそういうお年頃だった。


 はい。なのでお話はサッカーの旨に戻ります。↓どうぞ。











 哀れな羽後(ぱしり)ちゃんがパイセンたちからパワーハラスメントされた次の次の日あたりのことです。


 ようするに今話の冒頭あたりの翌々日あたりな早朝の物語だった。


 具体的に述べ述べすれば日曜の午前四時くらいな出来事でもある。


『朝だよー!? 朝だよー!?』


 地元某所の畑の小脇に傘が差されてあった。


 傘の下にあるのはらめらめスマホだね。らめぇ。雨露を傘で凌ぐスマホは早朝の四時を一生懸命頑張って告げていた。朝だよー!?


「……ん」


 らめらめスマホがしばらく叫んでいると近くの土が何やらもぞもぞと動いた。


 もぞもぞ。


 そんで土中からパジャマを装備した女の子が這い出てくる。


「もぞもぞ」


 今しがた土のなかから這い出てきたこいつは畑の土をベッドとする輩だった。ちなみに種族的にはもう人間ではない。


「むくり。現在時刻午前四時ジャストミート。朝練に備えて元気よくおめめを覚ました私は畑の土中から這い出てきたよ」


 もぞもぞ。もぞり。


『朝――……』


 土のなかから這い出てきた彼女はスマホを容赦なく黙らせる。すしゃしゃ。


 夜になると土中に潜り早朝四時になれば地上に這い出てくるこいつは一年三組所属にして園芸部期待のルーキーな朝露(あさつゆ)瑞菜(みずな)だった。


「……~ッ。……~ッ。……~ッ」


 寝起きな瑞菜(みずな)の小脇では昨晩の彼女が容赦なく埋め立てておいた可愛い弟として知られる朝露(あさつゆ)若葉(わかば)くん(十歳)がもがいている。もがもが。可愛いね。


 一緒の畑ですやすやしてるあたりなかなかの仲良し姉弟なようだ。


「まったくもう。軟弱な輩なんだから」


「……~ッ。……~ッ。……~ッ!?」


 すしゃしゃしゃしゃ。ぎゅっぎゅ。


 片手でスマホをすしゃしゃしゃする彼女は弟の命綱な息継ぎストローを思い切り折りたたんであげた。彼女はサッカーがしたいお年頃なのである。


 そう。これはサッカーのお話だった。


 ここ最近サッカーやりたい欲が高まってきたがゆえに特に意味もなく弟の命を指先で弄ぶ瑞菜(みずな)はスマホ向け無料メッセージアプリ『ライン川の攻防』をその場で目覚めさせる。すしゃしゃしゃ。


 スマホ片おてて装備寝起き状態彼女は便利な弟をだしに使ってきた。


『私の弟くんサッカーやりたいらしいの。まったく仕方ない輩だよね』


 便利な弟をだしに用いた末に地元女子中学一年生のみんなへと無差別ライン川の攻防爆撃が繰り出されてしまう。


 ぽしゅぽしゅ。ぴこんぴこん。


『サッカーやりたいなら仕方ないね。今日の昼あたりサッカーやろう』


『あたしは興味ないけどあたしの弟がやりたがってる』


『私も弟でサッカーやるにょ』


「うむうむ。よい喰らいつきだ」


 午前四時に繰り出されたメッセージに秒で返信が返りまくる。


 休日の午前四時におめめがギンギンのバイタリティは流石に超絶エリート女子中学生特有の代物だ。


 地元女子中学の一年生なわらわら小娘どもが地元女子中学に入学して早一ヶ月未満が過ぎている。


 こいつらとて女の子だ。一ヶ月未満もサッカーが欠乏しているならそりゃそろそろサッカーをやりたいお年頃となる。


 弟を活用するという瑞菜(みずな)の画期的な提案に体力有り余り組一年生どもが物凄い勢いで飛ぶついてくるのもある種当然の摂理だった。わらわら。わらわら。


 ぎゅっぎゅ。おりまげぇ。


「……~ッ! ……~ッ!? ……~ッ」


「えへへ。可愛いなこいつ」


 サッカーに対する物凄い喰らいつきに気分を良くした瑞菜(みずな)は弟のストローをこしこしと弄んでやる。


 一年生(赤リボン)の暇な連中が今日のお昼くらいに弟虐待サッカーをすることになったのにはそういう次第があった。











 日曜日の午前中を終えた過酷な旅程の果てにその者はいずる。


「昼休み~。昼休み~。優雅な優雅な昼休み~」


「俺は日曜日のお昼を駆け抜ける運動不足おじさん! 普段は給料男の激務で運動不足に陥っているからこれを機に運動量を稼ぐぜ!」


 どすどすどすどす。


 いずってきたのは昼休み告げバードと運動不足おじさんだ。


 日曜日のお昼時ゆえに昼休み告げバードが舞い飛ぶお空の下。運動不足おじさんが今しがた通り過ぎて行った公園では日曜日ゆえに何だか小娘どもがわらわらしていた。


 わらわら。わらわら。


「ぼくはそこそこデカめ公園だよ。広さがそれなりに自慢さ」


 地元女子中学の近くに「そこそこデカめ公園」は今日も相変わらず(そび)えている。


 今現在その刹那の時節はお昼お昼お昼~なあたりだ。


 お昼時のそこそこデカめ公園にわらわらするのはサッカーの臭気に引き寄せられた地元女子中学一年生(赤リボン)どもの面々と見て間違いない。


 部活の朝練終わりなお昼時だもの。部活終わりの新鮮なシャワーも浴びずに速攻で集ったこいつらはめっちゃわらわらしていた。わらわらわら。


 ちなみに思う存分サッカーしてくれと述べ述べせんばかりに今昼(こひる)のお日様は上機嫌にげらげらしている。げらげらげら。


「ぴかーん」


 お日様のげらげらに照らされてそこそこデカめ公園の芝生が緑緑緑緑緑に光り輝いていた。いわゆる春春サッカー日和というやつだね。


 絶好のサッカー日和にわらわら少女たちのボルテージも上げ上げだぜ。


「私たちは弟どもでサッカーをするために近くの公園に集まってきてるよ」


「やーん。弟どもが丸くなってるぅ。もー。蹴り飛ばしちゃおっ」


「ぎゃぁあああああああああああああああああああああッ!?」


「ひぃいいいいいいいいいッ!? ぐべッ!?」


 わらわら。きゃーきゃー。わーわー。


 せっかく休日の公園に集まったわけなのだから貴重な休日を一秒たりとも無駄にしたくない少女たちは早速行動を開始する。


 本格的にサッカーが開始する準備運動として各々が強制連行してきた弟どもで軽く遊び始めたのだ。まだサッカーは始まってすらいない。


「わぁ。同級生の弟だぁ。蹴り転がして遊んであげるぅ」


「へーい。桜弘(おぐ)ちゃんパース。私の触手サッカーボールキックが火を噴くぜー」


「ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああッ!?」


 もちろん桜弘(おぐ)(かなえ)もこの場にしれっと混じっていた。


 同級生の弟で遊ぶことでしか得られない栄養素の摂取に彼女たちは夢中となっている。


 わらわら。きゃーきゃー。わーわー。げしげしげし。


 今回の物語はそういう感じでお送りしていきます。


「弟でパス練習するのたのし~。楽しいから技術が身に着いちゃう~」


「きみ蹴り飛ばしやすいね。もしかして将来の夢ボールだったりする?」


「まったく亀さんみたいに丸くなりおって。いけない子だよほんとにお前は。私のこと誘ってんのか? おらおらっ。早く竜宮城に連れて行けっ」


「ぐぇえええええええええええええええええええええええええええッ!?」


「ぎゃぁあああああああああああああああああああああああああッ!?」


「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ!?」


 げしげしげしげしげしげし。わらわらきゃーきゃー。


 元気いっぱいのわらわら少女たちは強制連行してきた弟どもを各々蹴り転がしていい感じにボディを温めていた。げしげしげしげし。


 これなるはウォーミングアップの構えと言えよう。こうしたウォーミングアップにより部活終わりのテンションを遊び時テンションにコンバートしていくのだ。


 春のとある日のよく晴れた休日の昼下がりな物語はそこそこデカめ公園の芝の緑を可愛い弟どもの血で赤く染めながら進行中だった。


 んで。


「サッカーやるよー!」


 姉どものボルテージがいい具合に高まってきたあたりを見計らって今回イベントの仕掛け人な朝露(あさつゆ)瑞菜(みずな)は両おててを万歳三唱しながら高らかに宣言を繰り出す。


 ばばーん。


 ふむ。芝生の緑がいい感じに朱くなってきたし本格的なサッカー開始を繰り出しても大丈夫そうという判断を彼女は下したようだ。


「わーわー。弟どもでサッカーだー」


「弟のボールをいっぱい蹴るぞぉ。わー」


「わーわー。新鮮なサッカーは弟でやるに限るよね」


 わらわら。きゃーきゃー。わーわー。


 サッカーの誘いに応じた体力有り余り組わらわら少女たちは体力が有り余ってくるので元気よくわーわーしている。みんなして例外なく新鮮な弟でサッカーがしたいお年頃だった。


「むーッ! むーッ! むぐぅうううッ!」


「ひ、ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ!」


「たすけて……。たすけて……」


「よいしょ。よいしょ。よいしょっと。抵抗しちゃダメだよ。抵抗の意志を確認したら麻酔無しでボールを千切り飛ばすからね。穏和(おとな)しく磔にされてね」


 サッカーをしたいのだから次の刹那に繰り出されるのは情け容赦のないサッカーの準備に他ならない。よいしょ。よいしょ。


 元気いっぱいな地元女子中学一年生の女どもがわらわらしている公園式サッカーフィールドの中央に先ほどまで遊ばれていた弟たちが運び込まれてゆく。


 彼らはこれから逆さ磔にされるのだ。そういう「しきたり」だ。


 冷静に考えてみて欲しい。弟はボールであるがサッカーで使う新鮮なボールはいつだって一つだけだ。


 一つしかボールを使わない今日のサッカーのため持ってきた弟どもは基本的に逆さ磔とされる。


 逆さ磔中の弟どもは使用中な弟の空気が抜けたときの交換要員だった。今回執り行われる弟虐待サッカーは適宜での弟交換ルールを採用している。


「ぐぇええええッ。ぜ、全然、自由じゃない……。なんでこんなおめめに……」


 弟交換ルールでの弟虐待サッカーのボールを務めるために逆さ磔構えで拘束された朝露(あさつゆ)瑞菜(みずな)くん(十歳)は苦悶の面構えで己の無力を嘆いていた。彼はどこまでも無力だった。


 逆さ磔でフィールド中央に拘束された彼らはみんなして男子小学生たちである。


 そこに人権などないのだ。中学生の姉を持つ男子小学生に人権などあるわけがない。


「くわんくわん……」


「ぼ、ぼくは意思無き奴隷です……。ぐぇええええええ……」


「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない」


 圧倒的で理不尽な姉パワーを日常的に浴びせ倒されてきた彼らはとうの昔に屈服済みの構えを取っている。この世界の不条理なところを幼少の(みぎり)から彼らは存分に味わっていた。


 うむ。だんだんとサッカーの準備が整ってきたようだね。


「ゴールキーパぁー! ゴールキーパぁー! にょわぁああああああああああああああああああああああああああああっ!?」


 フィールド中央で逆さ磔にされている可愛い弟どもからゴール部分まで距離を開けたくらいの距離ではドラム缶生首生物が何やら騒いでいる。わーわー。


 本日のゴールキーパーを務めるのは桜弘(おぐ)のようだ。ゴールキーパーを任された彼女は直立ドラム缶の構えのままぐるんぐるんしている。


 ぐるんぐるんるぐん。


 何という巧みな重心移動であろうか。凄い気合だ。こうまで凄い気合いを入れられてはそれは会話になるわけがなかった。


 ならばこそであろう。


 ゴールキーパーに熱中するあまり理性を喪失して会話にならない桜弘(おぐ)をひとまず捨て置き脚部触手の構えを確かめつつな(かなえ)は今回の発起人たる朝露(あさつゆ)瑞菜(みずな)に馴れ馴れしくダル絡みを繰り出していた。


「ねえねえみっちょん」


「はい。私はあだ名がみっちょんの朝露(あさつゆ)瑞菜(みずな)です。園芸部員です。一年三組の構成員です。では用件をどうぞ」


「そんなもんねーよばーか」


「ねえねえ(かなえ)ちゃん」


「あーん?」


「一組に息恵夜(いきえよ)締子(ていこ)とかいう輩いたじゃん?」


「知らねー」


「そいつ昨日■んだよ」


「へー」


 べちょんべちょん。


 昨今の(かなえ)瑞菜(みずな)のヘッド皮に向けて特に意味も無く触手粘膜をべちゃべちゃと叩きつけてあげている。べちょべちょーん。


 べちゃべちゃとしたその行為に意味などなかった。意味がないからこそのダル絡みだ。め、面倒くせぇ。


 にこにこ。だがダル絡みを喰らった筈の瑞菜(みずな)は何だか上機嫌な面構えを構築している。


 みんなでサッカーできるとのことなので今の彼女はとても機嫌がよかった。にこにこ~ん。


 (かなえ)瑞菜(みずな)のお喋りで今しがたお名前が出てきた締子(ていこ)の例を見れば分かるが地元女子中学において一年生(赤リボン)の命は季節はずれの淡雪の如く儚い。


 気を抜けば明日の暁を待たずして■んでしまう厳しい地元女子中学生ライフでは適切な英気の養いが重要とされていた。


 いい感じに英気を養うべく休日はみんなで集まってサッカーをする。


 ついでに可愛い弟どもで遊ぶ。


 弟でサッカーをすることでしか養うことのできない英気もこの世界にはあった。


 わーわー。わらわらー。きゃーきゃー。


「やーん。もー弟ども可愛すぎっ。我慢できないから鼻っ面蹴り飛ばしてキックオフしーちゃおっ」


「ぐべッ!?」


 そして一年六組の空手部の子な音宇都(おとうと)華流夜(けるよ)が弟の面構えに向けて元気のよい渾身サッカーボールキックを放った。


 ばきぃいい。


 鼻と頭蓋の砕ける小気味良い感触に華流夜(けるよ)はうっとりとする。


 新鮮な休日サッカーの開幕だ。


 無論のこと地の文担当者はサッカーについてあんまり詳しくない。


「サッカーサッカー楽しいなー」


「弟いっぱい蹴るぞー」


「勝ち負けよりも内容を重視したいなぁ。具体的に述べ述べすると弟をいっぱい蹴りたい」


 わらわら。きゃーきゃー。


 地の文担当者がサッカーに詳しくないということで現在時刻なお昼時から夕方にかけて行われる休日サッカーの描写はおもむろに省かれた。これもまた行間というやつである。


 ともあれ本日集まった一年生(赤リボン)の面々は弟でサッカーを繰り返していい具合に英気を養ったのだった。


 つまり次の瞬間に繰り出されるのは本作名物の雑時間経過&場面転換と考えて間違いない。ごごごごごごご。











 弟虐待サッカーの開幕より数時間が経過した夕方手前の時間帯。


 弟鮮血色なお空の渦中で少女たちはわらわらとしている。わらわらわら。


「たくさんサッカーしたから帰るよ」


「明日も早いからね」


「今日は楽しかったなー」


 部活の練習やら学校の課題やらがあるので今宵集った一年生(赤リボン)の面々はご帰宅のお年頃を構えていた。


 弟でいっぱい遊んでたっぷりと英気を養った少女たちは休日の終わりを漠然と認めている。述べ述べするなればのこのことお帰りの時節だった。


「ぐぇええ……」


「お、おごご……」


「しにたくない……しにたくない……ぃ」


 ぴくぴく。ぴくん。


 のこのことお帰りしてゆく少女たちの背後では弟どもが死出の痙攣をぴくんぴくんしていた。ぴくぴく。


「つんつん。弟うめー」


「喰い過ぎない程度に啄ばむぜ」


「酒のつまみって感じだな」


 白おめめを剥いて泡を噴いている瀕死の重態な弟どもは近所のカラスたちから無抵抗のまま啄ばまれている。


 フィールドの中央で逆さ磔にされる彼らの拘束を解く者は誰もいなかった。


 理不尽に負けない強い男になって欲しい。


 姉たちの切なる願いのため彼らは明朝までこのまま放置される。流した汗と涙の数だけ実戦で流れる血は減るのだ。


「サッカー楽しかったねー。時間空いたらまた集まってやりたいなー」


「楽しかったなぁ」


 べしべしべしべし。


 大好きしゅきしゅき大しゅきな桜弘(おぐ)に遠慮なくべったりと纏わりついてくる触手生物は桜弘(おぐ)に纏わり着いたままの構えでさっき拾った物干し竿を用いて逆さ磔中の弟どもを叩く。べしべしべしべしべし。


 こいつらも休日の終わりを感じていた。切ないね。


「ばいばーい。また明日学校でー」


「養った英気を活用してこれからの部活を乗り切るぞっ」


「恒例行事にしてもよくってよ。またこの公園でサッカーがしたいものですわね」


 わらわら。わーわー。のこのこ。


 トワイライトバスターの予兆が見える夕焼け小焼けのなかで最後尾グループのわらわら少女たちもわらわらと退散してゆく。わらわら。のこのこ。


「そろそろ帰るよぉ」


「名残惜しいねー」


「ぐぇえええええええ……」


 逆さ磔状態で放置される半死半生の弟どもに名残惜しくも殴る蹴る等の暴行を加えていた桜弘(おぐ)(かなえ)もお帰りの構えを取った。のそのそ。


 どうやらこいつらが最後の二人のようだね。


 あとは部活に備えてお帰りするだけだった。休日の夕暮れは優しい。そして少し寂しげである。


 今回エピソードはそうした昔日の哀愁的な物語なのかもしれなかった。











 しかしその刹那。


 逆さ磔状態の弟どもを背にお帰りする二人の背後に響く謎の緊急脱出音の影!


『ふぉんふぉんふぉんふぉんふぉん! 緊急脱出開始! 緊急脱出開始!』


 うわ。なんだ。びっくりした。


 背筋を冷凍ドリルでごりごりするような緊急脱出音が周囲に響き渡る。


 これなるは緊急脱出を隠し芸とする一年十一組所属な須内(すない)派吾(ぱあ)ちゃんが用意した緊急脱出装置の作動音だ。


 姉たちが可愛い弟に愛の鞭を振るうのは強い男になって欲しいがためである。


 憎いなら普通に■してしまうだけだった。今なお生きているということは逆説的に弟どもは何だかんだ姉たちに可愛がられているということに他ならない。歪んだ愛情というやつだ。


 強く育って欲しい可愛い弟どものため過保護にも逆さ磔用十字架の内部に据えられていた緊急脱出装置が何やら次から次に作動してゆく。うぃーん。


「ぐぇえええええええええええええええええええええええええええええッ!?」


「ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああッ!?」


「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ!?」


 ちゅどーん。ばごーん。ばがーん。どかーん。


 断末魔の叫びをあげながら逆さ磔にされていた新鮮な弟どもは次から次に射出されていった。その速度は音速の二倍だったりする。これで急なテロに襲われても安心の構えだ。


「緊急脱出装置が動いてる。なんだろぉ。誤作動かなぁ?」


「よくわかんないけど誤作動ってことは無いでしょ。ほらー。見た感じ何か爆発しそうじゃん」


 緊急脱出していった弟どもを見送る桜弘(おぐ)(かなえ)は急に引き起こされた緊急脱出の構えにきょとんとした。それでも一応は急なテロに備えてあたりを警戒する。


 警戒の甲斐あってか次の瞬間に訪れたのは逃れ得ぬ圧倒的な破壊だった。


「ぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああッ!?」


 どどどかーん。


「きゃぁあっ!?」


「わー!?」


 周囲を警戒していた桜弘(おぐ)(かなえ)のおめめ前。


 そこそこデカめ公園が擁する新鮮な公園式サッカーフィールドさんが爆発する。


 爆発する際にあげた彼の叫びは断末魔の叫びだ。見た感じ間違いなく即死の構えに他ならない。


 今話の冒頭を読者諸兄らは覚えておられるだろうか。


 小学校が急に爆発した悲しい事件のやつだ。


 断末魔の叫びをあげて即死した公園式サッカーフィールドさんを鑑みるに最近の地元をざわざわさせている噂の小学校爆破事件の魔のおててがこのあたりにも伸びてきたということなのだろう。


 だから今話の冒頭で近所の小学校が爆破されたとかいう話を地の文担当者は差し込んだ。そういう次第である。


「わふぅうう」


「ぬわーっ」


 ころころ。ころ~ん。


 おめめ前で発生した凄まじい爆風と爆炎を浴びせ倒された女子中学生二人組はころころと転がる。


 ひとしきり転がったところでようやく構えを立て直した二人はマジでびっくりしながらおめめをぱちくりさせた。


「こ、公園式サッカーフィールドさーんっ!」


「そ、そんなぁ。し、新鮮な公園式サッカーフィールドさんが……きゅ、急に爆発して死んじゃったぁ……!」


 煤で多少汚れた桜弘(おぐ)(かなえ)はひとまず素直な感想を述べ述べしてお茶を濁す。一息ついた二人のおめめには悲しみの涙が浮かんでいた。うわ。薄っぺらい涙。


 友達とわらわらした休日を過ごした思い出の公園式サッカーフィールドさんが爆発して跡形も無く死んでしまったのだ。


 充実した思い出を彩る公園式サッカーフィールドさんが死んでしまったという事実を女子中学生二人連れは咄嗟に受け入れることができない。


 ちなみにこの世界の学校とか公園とかは普通に生きていた。


 ほら。いつぞやの地元女子中学付属病院だって何か生きてたでしょ? なのでこれは普通に殺人事件だった。


 述べ述べするなればさしずめ『公園式サッカーフィールド爆破殺人』の構えとでも言ったところか。


 もちろん普通に殺人事件であるので上空からは急行してきた警察の連中が超特急で駆けつけてきた。しゅばばばばばばばば。


「俺たちは警察だ! パラシュート無しの降下で現場に駆けつけるぜ!」


「爆破事件は速度が大事だ。俺たち警察はこういうときのために落下ダメージ慣れスキルを覚えてる」


「ぎゃぁあああああああああああああああッ!? 足首を粉砕骨折したぁああああああああああああああああッ!」


 うわ。マジか。もう来た。すごい。


 最近地元をざわざわさせているのでこういう建造物さん爆破殺人については警察も本腰を入れている。


 それゆえに場面転換によるタイムラグすら無しに唐突に警察の連中がわらわらと何かやってきた。どたどた。わらわら。どたどた。す、すごいスピード感。


「警察署な俺はこういうときのために警察を素おててで投擲する。うりゃッ!」


 ぶぉおおおおおおんッ。


 隠し芸『気配察知』で新鮮な爆発を敏感に察知した警察署がさらなる隠し芸『素手投擲』を連携させることでこの意味分かんないくらいの超速警察出動は可能となるらしい。すげぇ。


 そう。今しがた出動してきた警察連中は警察署から物凄い勢いで投擲されてきたのだった。


 ぴゅーぴゅーぴゅー。


「上空から降下するぜ! ぎゃぁあああああああああああッ!? 尾てい骨を粉砕骨折したぁあああああああああああッ!」


「ぎゃぁああああああああああああああああッ!? 俺は頚椎を粉砕骨折したが落下ダメージ訓練を日頃から嗜んでるおかげで割と何ともないぜ!」


「俺は肋骨が心臓にぶっ刺さったが落下ダメージ慣れスキルのおかげで今のところは生存に支障ないぜ!」


 ばこーん。ばしーん。どこーん。


 超高速で現場に急行してきた警察の連中は日頃の訓練の成果を生かして早速現場検証を行ってゆく。しゅばばばばば。


 投擲されてこの場に飛来してきた彼らは血だらけの血みどろだった。だ、大丈夫なの?


 ともあれこの出動速度は流石の優秀さである。


 プロ殺人鬼なんて職業が消極的とはいえ認められているこの世界では警察なんて組織は優秀じゃないとやってられないのだ。だからこその超高速&超優秀なのかもしれない。


「わー。何か物凄い勢いで警察塗れになったねー」


「プロフェッショナルって感じだなぁ」


 先ほどまで地元女子中学一年生(赤リボン)の連中がわらわらと弟虐待サッカーをしていた領域はあっという間に警察たちでわらわらなことになった。わらわら。わらわら。


 これは。まさか。


 これなるは『警察の突発的大量発生』の構えだとでもいうのか!?


「速度が大事な俺たちは物凄い勢いで現場検証するぜ!」


「けほけほッ。肺に刺さった新鮮な肋骨の影響でさっきから吐血が止まらん!」


「両足を粉砕骨折した俺は這いながら現場検証したいお年頃だ!」


 プロフェッショナルな警察たちはマニュアルに基づいて素早い現場検証をこなしてゆく。しゅばばばばばッ。子供には真似できないプロの技がそこにはあった。


桜弘(おぐ)ちゃーん」


「なあに?」


「豆腐の道は豆腐屋へって述べ述べするじゃーん?」


「うん。するかもぉ」


「だからこういうとき素人が邪魔しちゃ駄目だよねー」


「そっかぁ」


 おめめ前で繰り広げられるプロの技を少女たちはぼけーっと見物する。


 最近プロ殺人鬼との交戦経験を重ねてきたが桜弘(おぐ)(かなえ)も所詮は女子中学生の身の上だった。いわゆる女子供というやつだね。


 殺人鬼ランキング十五位なプロ殺人鬼『電光石(でんこうせっ)カラス』のときみたく何かのコネクションでずぶずぶしたいときを除いて率先して警察連中にちょっかいをかけたいお年頃なわけではない。


 上質なカリキュラムを地獄みたいな強度で日夜施されている桜弘(おぐ)(かなえ)は自分たちの節度というやつをちゃんと弁えていた。


 これは。まさか。


 これなるは『警察の連中に任せておけば何とかなるでしょ』の構えだとでもいうのか!?


「公園式サッカーフィールドさん話したことないけどいい人だったのになぁ」


「あんないい人が死んじゃうなんてこの世界は理不尽なことだらけだねー」


 警察に大方の事情を丸投げしたこいつらは公園式サッカーフィールドさんという尊い人命が失われたことを素直に悼んでいた。


 無論のこと彼女たちの思考は「これから部活に行くの体力的にしんどいな」という現実逃避を兼ねている。


 結構な全力でサッカーを楽しんじゃったせいで桜弘(おぐ)(かなえ)は二人して割と疲れていた。でもたとえ疲れていても部活は強制参加なのでサボりとかは絶対できない。


「……うぅ。公園式サッカーフィールドさぁん」


「……ずびびっ。公園式サッカーフィールドさーんっ」


 みんなの思い出な公園式サッカーフィールドさんという尊い命が失われたこと事実。


 その事実を悼む二人はほろほろ鳥のようにほろほろと涙を流す。


 体力的にしんどいからこれから部活に行くのがマジでしんどくてこいつらは現実逃避の涙を流さずにはいられなかった。


 んで。


 部活の時間が迫っているのに現実逃避がてら桜弘(おぐ)(かなえ)がだらだらと時間を浪費していると気づけば何やらあっちの方が騒がしくなっていた。


 むむ。どうやら警察連中が犯人候補生を確保したようだね。


 あっちのほうぅううう。


「警部! 何か怪しげなホームレスがこの公園の滑り台の下のあたりでうろうろしてました! ホームレスなんてやってるんだから絶対こいつが犯人ですよ!」


「そうだな! ホームレスなんだしこいつが犯人で間違いない! 爆発物の取り扱いなんていう高度な知識が必要なものはホームレスでもなきゃそう簡単にできるわけがないしな!」


 あっちの方におめめを向けてみると警察と警部がホームレスをがっちりホールドしていた。


 いわゆる『ホームレスホールド』の構えである。


 二人がかりでがっちりホールドされているホームレスは涙ながらに無実を訴えていた。


「ひ、ひぃいいいいッ。わ、わしは無実のホームレスじゃぁ。ば、爆破殺人なんてろくにやっておらん!」


 無実のホームレスは涙ながらに身の上の潔白を主張する。


 でも彼が繰り出す無実の涙を信じる者などこの場にいるわけがなかった。


「うるさい! この冤罪ホームレスめ! 俺はお前をさっさと逮捕して心臓に突き刺さった新鮮な肋骨を引っこ抜きたいんだ!」


「人命救助だと思って穏和(おとな)しく冤罪逮捕されろ!」


 警察と警部は血を吐きながら冤罪逮捕の構えを取る。ホームレスなんていう危険種族に相対する二人に油断はなかった。


 この世界におけるホームレスは大抵が超絶エリート出身者だったりする。


 ホームレスは高度な科学技術に精通しているのだ。ホームレスにしてみれば爆弾の取り扱いなどコウロギ(※コウモリのようなコオロギのような謎の生物。夏場に出没する。弱い)の捕獲のようなものだ。


 この世界のホームレスとは一種の治外法権に近い構造を有する強力な実力者集団である。


 強力な力を宿すがゆえに一般人から嫉妬による差別意識が持たれることも決して珍しくなかった。そうした軋轢は昨今の社会問題となっている。


 おめめ前で進行する深刻な社会問題の現状をぼけーっと眺めていた桜弘(おぐ)(かなえ)の小娘二人はこの世界の未来を担う超絶エリート女子中学生の一員として深刻な社会問題について果たして今何を思うのか。


「ぼけー」


「ぼけぼけぇ」


 何も考えてないみたいだね。


 実際問題のお話として地の文担当者も何も考えていないのでプロ殺人鬼『爆ダンボール』の登場シーンは次回に持ち越されるのだった。

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