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竜のお店はダンジョンに  作者: ぱぴえもん
第二章
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第五節 反省会

「うーん、おかしいですわね。何がいけなかったのでしょうか?」

「何もかも全部じゃろうが……」

 番兵の説得に失敗した儂らは一目散に逃走し、最初に降り立った森の中まで引き返していた。

 弁明の余地なく大いに怪しまれてしまったが、ここまで追いかけられることがなかったのは不幸中の幸いだろうか。

「まぁ、俺たちに門番の説得など不可能だったということですね」

「そんなわけはなくってよ! 今のはちょっと、運が悪かっただけに違いありませんわ!」

 運よりもまず疑うべき悪い点がいっぱいあったと思うが。

「やはり身分証やら通行証なるものが無ければ通るのは無理そうじゃな」

 番兵の反応を思い返してみるに、それらが無ければどう言いくるめようとも無駄だということは分かった。

 逆に言えばそれさえあれば難なく通れそうなものだが──

「物で身分を証明しようなど、我々の社会には無い考え方ですからねぇ」

「持っておるわけないよなぁ……」

 ならば、どうやってそれを手に入れるかだが、そう簡単に手に入れられる物なら番兵など必要ないだろう。

「街に入れば身分証を作って下さるお店もあるのではなくって?」

「その街に入るために身分証がいるのではないか」

 そもそも、身分が証明できない怪しい者に身分証など作ってもらえるわけがないと思うが。

 そう考えると身分証を作るために身分証がいるのか? 考えているとなんだかおかしくなってきたな……。

「……あの街に入るのは諦めた方が良いかもしれんのう」

 あれだけ大きな街だからこそ、警備が厳重なのかもしれない。そうなると、無理に入る方法を探すよりも諦めて別な街を探した方が早そうだ。

 ヒトの街が全て、先程と同じくらい厳しいのであれば、その時はもうどうしようもない。大人しく借金取りと共に余生を過ごすとしよう。

「そんな、諦めるにはまだ早すぎますわ!」

 儂の意見に対し、パルイーフが一際大きな声を張り上げる。

「確か、空から見た時は門があと三つほどあったはず。わたくし、別な門から入れないか試してきますわ!」

「ちょ、ちょっと待たぬか」

 言うや否や、パルイーフは森の外へ向かって駆け出していた。

 ええい、あやつめ、全然人の話を聞かないではないか。

「あのやり方で通れる門があったら、それはそれで問題じゃろうに……」

「全くです」

「言っておくが、お主の方が酷かったのだからな?」

「恐縮です」

「褒めておらんわ、阿呆め」

 様々な手段を試してみるのは悪くないことだと思うが、二度も三度もあのような失敗をしていては、番兵たちに顔を覚えられてしまうだろう。

 そうなると試すどころでは無くなる。儂らの顔が見つかり次第騒ぎになって、街を自由に見学なんぞ出来なくなるだろう。

「あの程度の石壁であれば『真化』に頼らずともよじ登れるとは思うのですが、それではダメなのですか?」

「ダメじゃろうな。そういうことをする輩や飛来する魔物に備えておらぬわけが無かろうし、見つかって騒ぎになるのは間違いないじゃろう」

 外壁をよじ登っての侵入。恐らく誰しも思い付くことだろうから、それに備えていないはずがない。

「では、石壁が崩れている箇所から入ってみるとか」

「そんなところがあったとしても放置しておるわけがなかろう」

「まぁまぁ、可能性は低いかもしれませんが、調べてみる価値はあるでしょう。俺が調査して参りますので、サチュ様はこちらでお待ち下さい」

「お、おいシチーリ」

 そしてシチーリも、気味の悪いくらい滑らかに動きながら、街へと向かって走っていってしまった。

 森の真ん中で一人取り残された儂は、呆然と佇む。

「あやつら、自分が監視役じゃと言うことを忘れておらんか……?」

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