第一節 つづきから はじめる
重く垂れ下がっていた瞼を押し上げると、そこには見知らぬ女の顔があった。
波打つような長い金髪を垂らし、じぃっとこちらを眺めている。その顔は大人のようでもあり、子どものようでもある、そんな境目くらいの印象を受けた。
「……あら、目が覚めましたのね!」
ぼうっと眺め返していると、女は鼻と鼻が触れ合うほどに顔を近付けて来た。まるで宝石のように輝く、大きな金色の瞳が迫って来る。
しかし、その瞳に見覚えはない。この女は一体誰だ?
「封印を解けばすぐに目覚めるはずだと聞いておりましたのに、中々起きて下さらないものですから……。わたくし、ちょっと焦ってしまいましたわ」
というか、ここは何処だ?
眼前に迫る顔から目を背けるように身を反らし、周囲を軽く見渡してみる。
どうやらここはどこかの部屋のようだが、これもまた見覚えがない。壁や床を見ても何一つ思い当たる節がない。
ただ一つ。この状況に当てはまる言葉は思い出した。
「どうしたんですの? どこか痛みまして?」
どうもこうもない。そもそも──
「──なぁ、儂は誰じゃ?」
間違いない、これは『記憶喪失』というやつだ。