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甘くて甘い、正妻チョコ戦争

「ふたりきりだね」

「いつもだよな!?」


 授業の始まる前、俺と真弓はいつもと変わらず話をするために部室に来ていた。そう、いつも通りに。

 なのに、入ってすぐに扉を背にしたまま鍵を閉める。

 そのまま意味深に上目遣いに俺を見ながら近づいてくる。もしかしたら刺されるのかもしれない。

 恐怖を感じて動けないでいると、目の前で止まった。冷や汗が首筋を伝う。

「今日、何の日かわかる?」

 小さな声で急に聞いてきた。今日は2月14日。

 そうか。

「……バレン、タイン」

「どうして区切るの?」

 誰かの名前みたいと口元に手を当て笑い出す真弓。刺されることはなさそうだと安心していると、口元に当てていた手をゆっくりとブレザーのポケットへと入れ何かを取り出した。

 もしかしたら刃物かもしれない。

 昨年、喧嘩したあの後、真弓の気持ちに応えなかったことが原因なら仕方ない。

 覚悟を決めて真弓の手元を見ると、持っているものは刃物ではなかった。

「それは?」

 ふふ〜、と悪戯な笑みを笑みを浮かべながら持っているものを俺の目の前まで見せてきた。

「リップ型のチョコだよ」

 そう言って、キャップを取り下の部分を回しチョコを出した。

「これ、見つけるの大変だったんだよ」

 言いながらくちびるに塗り始める。

「それ、どうするつもり?」

 上下のくちびるに塗り終えた真弓はこうするのと見つめ合いながら抱きついてきた。

 そして、そのくちびるを俺のくちびるではなく首筋に当ててきた。

 抵抗もできずにされるがままでいると当ててきたくちびるから湿った感触が出てきた。

 その感触が首筋から下顎まで登ってくると、真弓の顔が離れていく。

「ふふふ、美味しい。でも、これじゃあ俊樹にあげたことにならないよね?」

 そう言ってもう一度くちびるにチョコを塗ると、食べて、と、くちびるに重ねてきた。

 すぐに舌が入ってくる。瞬間、甘い唾液が口内に広がってきた。鼻腔に抜ける匂いに頭がどうにかなりそうになる。

 されるがまま口内を舐められていると、ゆっくりと真弓の感触が離れていく。

「……美味しい?」

 甘く囁くように聞かれて、無言でうなずくと、何度も何度も同じようにくちびるを重ねた。


「やりすぎちゃったね」

「……あぁ」

 チャイムで現実に戻された俺と真弓は、恥ずかしくなり顔を合わせられなかった。

 教室に向かうために出る準備をしていると、準備を終えたらしい真弓が近づいてきた。

「ねぇ……、これ」

 振り向くと谷間が見えるように上から三つボタンを外してブラウスをはだけさせた真弓が立っていた。

 よく見るとその谷間にチョコが塗ってある。

「これ、片付けてもらっていい?」

 馬鹿か、そんなことしたら今日の授業なんて頭に入らなくなる。

 言い訳を考えていると、真弓は谷間を見せつけるように顔に近づけてきた。

「早くしてくれないとここから出られないよ、私はそれでもいいけど」

 もしかしたら咲葵が手を出せないように牽制しているのかもしれない。

 覚悟を決めた俺は谷間に顔を押し付けるように、そのチョコを片付け始めた。

 早くこの状況から脱したい俺は、真弓の嬌声が耳に入らないようにすぐに舐め取った。

「……いじわる」

「それは真弓もだろ」

 顔を上げると、う〜、と口をとがらせながら頬を膨らませていた。

「それよりも時間」

 そう言って、壁掛け時計に視線を向ける。つられて真弓も見る。朝礼までもうほとんど時間がなかった。

 慌てて真弓も出る準備を済ませて扉を開けると、誰かが立っていた。

「……俊樹ぃーーー!!!」

 仁王立ちで出待ちをしていたらしい咲葵が眉間に皺を寄せて俺と真弓を交互に睨む。

「咲葵、そんな顔してたら皺増えるよ?」

 真弓が油を注ぐ。朝から戦争でも起こしたいのだろうか……。

「後で話聞くから教室に急ごう、間に合わなくなる」

 俺のひと声でその場を落ち着かせる。

「仕方ない、後で話って忘れないでよ!」

 不服そうな咲葵は口をとがらせながらも同意して、それから三人で廊下を走り出した。


 今年のようなバレンタインはもう過ごしたくない。

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