7 熱湯風呂は45度
7 熱湯風呂は45度
「我が帝国に協力して頂ければッ! こちらの金塊を全てッ! 差し上げますッ!」と、女騎士が金塊をススっと山田の前に押し出した。「さあッ! 行きましょうッ! 我が帝国にッ!」
「……よし行こう!」
「ありがとうございますッ!」と、女騎士は跪き深々と頭を下げた。
「と、言いたいところだが一つ聞きたいことがある」
「まだなにかあるのですかッ!?」と、女騎士は拍子抜け。「足りなければ我が帝国で追加しますッ!」
「誤解しないでくれ。金額の問題じゃない。俺が引っかかっているのは出所だ」
「出所ッ!?」
「そうだ。出所だ。そんなとんでもないお宝、いったいどこから持ってきたんだ? 表に出せないヤバいカネじゃないのか?」
「心配ございませんッ! 表に出せないカネではなくッ! 表に出す必要のないカネですッ!」
「……いわゆる機密費ってことか?」
「その通りですッ! プロ野球リーグ設立計画はッ! 我が帝国の威信をかけた国家事業ですからッ!」と、女騎士は自信たっぷりだ。「予算の心配は何一つありませんッ!」
「……なるほど。それなら安心だ」
「予算はいくら使ってかまいませんッ!」
「……いいのか? そんなこと言って? 俺に妙な正義感があって、しかるべき所にタレコミでもしたらどうする?」
「問題ございませんッ! 我々がしかるべき所ですッ!」
「……大丈夫そうだな」と、山田の目は金塊に釘付けだった。(……俺の目の前に金塊がある。金の延べ棒が積んである。4段ピラミッドだ。
4+3+2+1。合計10個。夢みたいだ。ところが、その夢が掴める距離にある。どんな危険もこの輝きには霞むな。これがカネの魔力!
勇気を出すんだ……俺。毒食わば皿まで。やるしか……ねえだろ!)
「どうですかッ!」と、女騎士は期待に満ち溢れた目をした。「これでダメならあきらめますッ!」
「ご奉公させてもらいます」と、山田は深く頭を下げた。
「ありがとうございますッ!」と、女騎士は山田よりもっと深く、深く頭を下げた。「では行きましょうッ!」
「すまない。待ってくれ」と、山田がバツの悪い顔をした。
「今度はどうされたのですかッ!?」と、女騎士は不安で声が震えてた。
「……シャワーを浴びて着替えたいんだ。あと仮眠を取りたい」と、山田はパンツ一丁で少し寒そうにしていた。帰宅して玄関で服を脱いでからずっとこの格好だったのだ。「お姉さんも寝た方がいい。こんなとこでなんだけど」
「すみませんッ! 気づきませんでしたッ! お言葉に甘えて寝ますッ!」と、女騎士はテーブルに突っ伏してすぐ寝た。早飯、早グソ芸の内。早寝も軍人の特技の一つだ。
「さてと。熱めにするか」と、山田はシャワーの温度を46度にまで上げた。