48 インテリアのテイスト遠い国になりがち
48 インテリアのテイスト遠い国になりがち
「お邪魔しまーす」と、宅配のお兄さんが荷物を抱えているのに、へっぴり腰で入ってきた。異世界に。
「ありがとね。よく来てくれた」と、山田が荷物を受け取った。「いや、しかし勇敢、勇敢」
「あの……これって、どうなってるんですか?」と、宅配のお兄さんは、あちこちキョロキョロしだした。「違法建築ですか?」
「説明が実に、ややこしいんだけどさ、その……日本じゃないんだよね。ここって」と、山田はぎこちなく笑った。
「えー! それって、つまり大使館ですか?」と、宅配のお兄さんは驚いた。
「……大使館でも……ないんだよな。治外法権には違いないけども」と、山田。「まあ似た様なもんかな?」
「分かったぞ!」と、宅配のお兄さん。「ここは外国人の要人向けの風俗だ! んで、ここは、その事務所!」
「違いますッ!」と、シュルストロンがすかさず前に出た。右手はお腰に付けた剣にかけていた。
「ここは誇り高きマツズーム帝国の宮殿ですッ! それを風俗店とはッ! 無礼極まりないッ!」
「謝罪、土下座」と、クレトンはペティナイフを手にしていた。
「ひえー! ヤクザの事務所だ!」と、宅配のお兄さんは震えて逃げ出そうとした。
「待った! 待った! 待った!」と、山田が間に入った。「刃物はダメ! 一線、超えてる! 両手を上げて! んで! お兄さんは逃げちゃダメ!
棚の組み立てのオプション払ってんだから! 前払いで!」
「少ししか切りませんッ! だから問題ありませんッ!」と、シュルストロンの手はまだ剣にかかっていた。
「安全、安心」と、クレトンもペティナイフは持ったまま。
「問題は大ありだし! 安心でも安全でもない!」と、山田。
「あのー! やっぱり帰ってもいいですか!? こんなヤクザなところ!?」と、宅配のお兄さん。
「だから帰っちゃダメだって!」と、山田が宅配のお兄さんを引き留めた。「あとね! お兄さんは誤解しているから! ヤクザも風俗も何も関係ないから!」
「じゃあ……マフィアですか?」と、宅配のお兄さん。
「反社会的な発想から離れろよ! まったくもう!」と、山田はあきれた。
「でも! どう見たって堅気じゃないですよ!」と、宅配のお兄さん。「でっかい剣は持ってるし! ナイフは出てくるし!」
「それはね、お兄さんが2人に対して失礼なことを言ったから怒っているだけ!」と、山田。
「それって……風俗って言ったことに対してですか?」と、宅配のお兄さん。
「それだよ! それ!」と、山田。
「だって、女騎士とメイドですよ! イメクラでしょう!」と、宅配のお兄さん。
「いや、せめてさ、ただのコスプレっ考えぐらいは思いつかなかったのかなあ?」と、山田。
「それにしては天井の趣味が悪すぎるでしょう!」と、宅配のお兄さん。「青空だけならまだしも天使まで描かれているのは、どうかと思いますよ!
この趣味の悪さは場末の風俗、以外で見たことないですよ!」
「天井のデザインは、この国の文化だから!」と、山田。
「勝手に文化として語られると困りますッ!」と、シュルストロンは弁明しだした。「宮殿の装飾はッ! あくまでも陛下の趣味ですのでッ!」
「声量、大。小、小」と、クレトンは指先でシーっとした。
「もう、いいから! 棚を組み立てるぞ! いいかげん!」と、山田は段ボール箱をビリビリ破った。




