47 宇宙飛行士はほんのり被爆している
47 宇宙飛行士はほんのり被爆している
「今ッ! 異世界湾曲航法窓から声が聞こえませんでしたかッ!?」と、シュルストロンは耳を疑った。
「山田さーん。宅配便でーす。お届けに参りましたー」と、宅配のお兄さんの声がシュルストロンの部屋の窓から響いている。
「鮮明」と、クレトン。
「……あれ? 俺、何か注文したっけ?」と、山田はスマホのアプリで注文履歴を探し出した。
「あのー。山田さーん。家具ですー」と、宅配のお兄さん。「組み立てサービスも注文されていまして。あと、時間指定でカギを開けているので中に入ってもよろしいと備考欄に書いてあったものですから入ったんですけども」
「思い出した!」と、山田は記憶が蘇った。「夜中にテレビショッピングで見て本棚を注文したんだった!」
「その通りですー」と、宅配のお兄さん。「あと確認したいことがあるのですが」
「はい、何でしょう?」と、山田。
「本棚を置く部屋は、山田さんの部屋の、おどろおどろしい光を放つ所を通ってとのことですが……」と、宅配のお兄さん。
「ええ、そうです。どうぞ、このまま上がって、ください」と、山田。
「あのー……本当に……これは大丈夫なんですか? すごく……おどろおどろしく光っているんですけど……人体に影響は……その……失礼ですけど」と、宅配のお兄さんはたじろいだ。
「大丈夫ですよ! 臭いもしないし! 影響はありませんよ! ……多分」と、山田はハッキリできなかった。
「えー。多分って、そんなー。そこはウソでも大丈夫で押し通して、くれないと」と、宅配のお兄さんはもどかしくなった。
「あの……俺さ」と、山田はシュルストロンの耳元に近づいた。「ここ、この窓を通るときさ、勢いで入ったけども、どうなの? 実際のところ? よくよく考えると放射能とか発してそうな見た目してるけど?」
「大丈夫ですッ! 何も心配ございませんッ!」と、シュルストロンは即答した。
「前も聞いたよ」と、山田。「でも言葉じゃなくて、こう数字で現わして欲しいんだよ。ないの? グラフとか書いてあるやつ?」
「……数字、盲点」と、クレトンは頭を掻いた。
「ちょっとクレトンさん、さ。盲点ってことは、もしかして調べがついてないの?」と、山田。
「健康被害、発想、皆無」と、クレトンは顔をそらした。
「無事に行き来できているのですからッ! 問題ありませんよッ!」と、シュルストロンは胸を張った。「なんせッ! 他国では異世界と行き来する際ッ! 爆発事故が起きた事例があるぐらいですッ! 五体満足なら100点満点ですッ!」
「そんな極端な事故の情報は今いらないんだよ」と、山田。「てか、そんな危なっかしいシロモノなのか? これ? 聞いてないぞ」
「我がマツズーム帝国は無事故ですからッ! そんなッ! ありえない話はよほどヒマでなければ必要ありませんッ!」と、シュルストロンはまた胸を張った。
「お国自慢の安全神話はもう、いいから。で、派手な事故じゃなくて、毛が抜けたとか、かゆくなったとか、下痢になったとか。そういう小さな身体の影響とか聞いたことないか?」と、山田。
「仮にあったとしてもッ! 我が帝国はッ! ありとあらゆる病気を治療することが可能ですッ!」と、シュルストロンは背骨が痛みそうなぐらい胸を張った。
「だ、そうだ。だから、お兄さん。男は度胸だ。頼むよ」と、山田は呼びかけた。
「えー……分かりましたよ。行きますよ。そっちに」と、宅配のお兄さんは渋々、荷物を持ち上げた。




