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45 必要なものは後から見つかる


   45 必要なものは後から見つかる法則


「いや、しかし参ったなあ」と、山田はポリポリ頭をかいた。「ずいぶんと規則が厳しくないか?」


「曲がりなりにも宮殿ですからッ!」と、シュルストロン。「花瓶の配置を1つ変えるにしてもッ! ハンコが何個いることやらッ!」


「いや。違う、違う。そうじゃなくて書類の扱いだよ。持ち出し禁止だなんて、そんな思わなかったから。てことは家に持ち帰ったり、気分転換にカフェに持って、ちょっと一仕事とか。

 それすらダメなの?」と、山田。


「自分は国家公務員ですよッ! 仕事に関わるモノは当然ッ! 基本的に機密扱いですッ! 家はもちろんのことッ! 喫茶店などの公共の場に持ち出すなどッ! 懲罰ですよッ!」と、シュルストロン。


「理屈としては、そうだけどさ」と、山田は腑に落ちなかった。「実際のところ公務員ほど口が軽い連中はいないぞ。セキュリティ意識は底辺だ」


「口はどうにもッ! ならないとしてッ! その分ッ! こと紙に関しては厳しいのですよッ!」と、シュルストロン。


「へー」と、山田。「やっぱり口は軽いんだ。日本も異世界もどこも同じだな」


「死体を除けばッ! ……顎関節症の患者しか口を閉じることはッ! ……前例が思い当たりませんッ!」と、シュルストロン。


「口、軽量」と、クレトン。「文書、過重」


「その割には保管、管理が随分と雑じゃないか? こんな部屋じゃ、いくつか紛失してるだろ?」と、山田。


「ありえませんッ!」と、シュルストロンは即座に否定した。「なぜなら本と書類が互いに重なり合うことによりッ! 飛び散らないからですッ!」


「でもさ」と、山田は切り出した。「正直な話、何かしら問題が起きたとき、意図的に公文書を紛失させたことの、1回や2回はあるよな?」


「そんなことはッ! しませんッ!」と、シュルストロンは首を横に振った。


「またまたーそんなこと言って」と、山田はねばった。「俺は外国もとい、異世界に慣れてないんだから。そういうオトナの事情ってものを知っとかないと。で、実際どうなの? あるでしょ?」


「文書、紛失、皆無。事実」と、クレトン。


「建国以来ッ! すべての記録は帝国図書館に保管されておりますッ!」と、シュルストロン。


「これは、これは。かなり真面目な国だな」と、山田は感心した。「堂々としてるね。焼却処分しない国はいい国だよ」


「いえッ! そういうことではなくッ! 検索が困難になるだけですッ! 紛失ではなくッ! 困難ッ!」と、シュルストロン。


「困難ね。……なるほど! うん! 巧妙な手だな! 実に上手い!」と、山田はもっと関心した。


「問題、鎮静、、途端、文書、発見」と、クレトンがニカっと歯を見せた。


「時間が経てばッ! 責任の所在はうやむやにッ! なりますッ! ですからッ! あとは歴史学者の仕事ですッ!」と、シュルストロン。


「ありがたい話だ。文書は学者、記者の飯のタネ」と、山田。


「持ちつ持たれつですッ!」と、シュルストロン。


「ズブズブって言うんじゃないの? それは?」と、山田はからかった。


「金銭の授受はありませんのでッ! 健全な関係ですッ! ……おそらくッ!」と、シュルストロ

ン。


「ああ、なるほど。この国のジャーナリズム精神がどういうのかが今、見えた」と、山田は理解した。

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