44 鉄火巻きよりサンドイッチのほうが手は汚れない
44 鉄火巻きよりサンドイッチのほうが手は汚れない
「このサンドイッチとんでもなく美味しいな」と、山田はパクパク、届いたサンドイッチを頬張った。
「お皿が本の上でなくッ! 机の上に乗っていてッ! イスに座って食べれたらッ! もっと美味に感じましたよッ!」と、シュルストロンは不満気ながらもムシャムシャ、サンドイッチを口に運んだ。
「同意」と、クレトンはもう食後のコーヒーを飲んでいた。
「だったら置けばいいじゃないか。机とイスを。」と、山田。
「それができたらワケないですッ!」と、シュルストロン。
「大丈夫だって。食事をしながら、じっくりと、この部屋をどうするか考えるんだ。そのためのサンドイッチだろ?」と、山田。
「食事をしながら考え事はできませんッ!」と、シュルストロン。
「食事って言ってもサンドイッチじゃないか」と、山田。「サンドイッチは片手でポイポイ食べれるんだぞ。それが何を意味しているのか分かるか?」
「分かりませんッ!」と、シュルストロン。
「もう一方の空いた手で仕事をしろってことだよ」と、山田は左手にサンドイッチ。右手にペンを持って画用紙にシュルストロンの部屋の配置図を書いていた。
「違いますッ! 空いた手は飲み物を持つためにッ! あるのですッ!」と、シュルストロンはコーヒーを飲んだ。「第一ッ! 仕事は食事をしながらッ! するものではッ! ありませんッ!」
「えーそっちじゃ、そういう文化はないの?」と、山田もコーヒーを飲んだ。「ランチミーティングとか、料亭や高級レストランで会食とか、あるだろ?」
「ないことはッ! ないですけどッ!」と、シュルストロン。
「ほら、ほら、ほら。あるじゃないの」と、山田。
「ありますけどッ! 昼食会での会議は食堂で開催するものですしッ! ここは料亭や料理店とは似ても似つかない場所ですッ!」
「でも、そんなこと言ってる間に見取り図ができたぞ」と、山田は図面を広げた。「な、仕事が捗るだろ?」
「片手間、手抜き」と、クレトンがヤジる。
「そんなこと、ないぞ」と、山田はクレトンに図面を見せた。「ちゃんと本棚の位置も応接セットの位置もバシっと決まってるじゃないか」
「……見事」と、クレトン。
「ですがッ! どうやって設置するのですかッ!?」と、シュルストロン。
「いったん本を廊下に出せばいいだろ」と、山田。「簡単な話だ。割れ物は特にないだろ。この部屋に。さっさっさっと、できるさ」
「それがッ! できさえすれば簡単ですけどねッ!」と、シュルストロンはやや落ち込んだ。
「そんな心配するなよ。3人もいるんだ。シュルさんもクレトンさんも若いし。首、肩、腰、膝。どこも問題ないだろ?
俺だって基本はデスクワークだけど取材費を節約するためにタクシー乗らずによく歩くから案外、健康だぞ」と、山田。
「廊下、荷物、禁忌」と、クレトン。
「禁忌ってそんな大げさな」と、山田。「別に常設するんじゃないぞ。ちょっと大掃除だ。半日もかかりっこない」
「廊下は宮殿の共用部なのですッ!」と、シュルストロン。「一切ッ! 出せないワケではないのですがッ! 慣習からいってッ! もっても30分かとッ!」
「30分!? たったそれだけ!?」と山田は焦った。「あーどうすりゃいいんだ? そうだ! 倉庫! レンタル倉庫とかないか!? 予算はあるんだ! そうだよ! よくある話だ!
事務所と別に倉庫を借りてるヤツなんて山ほどいる! 俺の知り合いのジャーナリストなんか田舎に一軒家を借りてるぞ」
「それがッ! 本も書類も基本的に機密扱いなので持ち出しは禁じられていますッ!」と、シュルストロン。
「……コッソリも無理?」と、山田。
「門番、常駐」と、クレトン。
「……あちゃー」と、山田は自分の頭をペシリと叩いた。




