27 フラッシュバック
27 フラッシュバック
飲んで、酔って、ケンカして。何やかんやで夕焼け空はほぼ赤色。真夏の5時過ぎ。山田たちは警察に見つからないよう、念のため裏路地を進んでいた。
「しかし恥ずかしいケンカだった」と、山田は熱中症予防にレモンサイダーを飲んでいた。「口はカッコいいのに行動がダサすぎる」
「勝利、官軍。敗北、賊軍」と、クレトンはオレンジジュースえを飲む。
「クレトンの言う通りですッ!」と、シュルストロンはアセロラドリンク。「勝たなければ終わりッ!」
「理屈としては分かるが。何だかなあ」と、山田は心にモヤモヤがモクモク立ち込めた。「まあ、済んだことだしいいか。それより、これからどうする? シメにラーメンかお茶漬けでも食べに行く?」
「炭水化物、拒否」と、クレトン。「甘味、甘味」
「たしかに甘いものが欲しいですねッ!」と、シュルストロンの舌はすっかり甘い舌になった。「山さんッ! どこかいい所ありませんかッ!?」
「いい所か。あんまりシメに甘いのは食べないからな。あっそうだ」と、山田は思い出した。「駅前のカラオケがスイーツフェアやってたな。どう? と言ってもそこ以外だとアイスクリーム屋ぐらいしか知らないが」
「カラオケッ! いいですねッ!」と、シュルストロンの目の色が変わった。「甘いものを食べてもすぐ運動できて健康的ですッ!」
「シュルさんカラオケ好きなの?」と、山田。
「シュルストロン、上手」と、クレトン。「宴席、演芸、名人」
「そうか。せっかくだし一曲聞いてみたいな」と、山田。「待てよ。そもそも知ってる曲は日本のカラオケに入っているのか?」
「潜入調査時の宿替わりですよッ! カラオケはッ! 何曲も覚えましたッ!」と、シュルストロンは小指を立てた。
「なるほど。身分証はいらなかったな。カラオケは」と、山田。「よし。そういうことなら思い切ってフリータイムで歌いまくるとするか?」
「賛成」と、クレトン。
「食べて歌ってッ! 歌って食べてッ! 繰り返しましょうッ! 朝までッ!」と、シュルストロンのエンジンがかかってきた。
「よし! 駅前まで案内するぞ!」と、山田もエンジンがかかったのかその足取りは千鳥足だけど意気揚々。
「カラオケ、会員、アプリ」と、クレトンがスマホを取り出した。
「スマホ持ってるのかよ!?」と、山田の足が止まった。「どうやって契約した!?」
「WiFi、専用」と、クレトン。
「あーそういうことか」と、山田は納得してまた歩き出した。「端末を買うだけなら契約書も何もいらないもんな」
「ここ数年で街中にWiFiが増えましたしねッ! 昔はいちいち魔法石に念を込めて連絡を取ってたんですよッ!」と、シュルストロン。
「魔法石はそんな使い方もできるんだな」と、山田は感心した。「そう言えば昔、俺がガキの頃、雑誌の付録に鉱石ラジオってあってな。石ころに線を繋いだら電波を拾って音が……」
「どうしたんですかッ!? 黙ってしまってッ!?」と、シュルストロン。
「……何か大事なことを忘れてる気がするんだよ」と、山田はトボトボ歩く。「……居酒屋で飲んだのは目的があったはずなんだけどな」
「……野球」と、クレトン。「……プロ野球!」
「あッ!」と、シュルストロンは記憶が蘇った。
「そうだよ! シュルさんの国にプロ野球リーグを作る話をするんだった」と、山田もアルコール漬けの頭でやっと思い出した。




