26 明日の天気は晴れ
26 明日の天気は晴れ
(剣の無い騎士などッ! 包丁を持たぬ料理人同然ッ!)と、シュルストロンはかなり焦ってた。(甲冑を着てるとはいえッ! それはあくまで防御のみッ!)
「どうした! どうした! ビビってんのか!?」と、プリン頭のお姉さんがヤジを飛ばす。「不戦勝じゃ不完全燃焼だ! さっさとやろうぜ!」
(どう戦えばッ!? 状況は広い戦場ではないッ! 市街地の接近戦ッ! 武器になりそうなモノは……見当たらないッ!)と、シュルストロンは決して多くない頭で必死に考えてた。(マズいッ! 策が無いッ!)
「シュルストロン! 気合! 必勝!」と、クレトンが檄を飛ばす。「帝国! 矜持!」
(……そうだッ! これは帝国の意地だッ! 近接格闘が苦手とかッ! 何とかッ! 言ってられないッ! やるしかないッ!)と、シュルストロンは拳を握り、足を肩幅に広げ、腰を浅く落とし
た。
身体は左半身をやや正面に向けた。左手は腹の高さで軽く突き出し盾を持つように。右手は顔の高さまで上げて顔の近くに引き付け剣を持つように。
実際に盾と剣は無くともこれぞ騎士といった構えだ。「我こそはッ! マツズーム帝国ッ! 近衛師団ッ! 突撃隊長ッ! エリキ・シュルストロンッ! でッ! あるッ!」
「カッコつけやがってコノヤロー! ウチだってキメてやらあ!」と、プリン頭のお姉さんは負けじとメンチを切って口上を述べ出した。「旧車會! 美苦蛇亜頭〈ビクターズ〉特攻隊長! 九里マロンだ! 夜露死苦〈よろしく〉!」
「……始まるな」と、山田がつぶやいた。
「こいやーー!」と、九里がさすまたを突き出す。
一方、シュルストロンは急にその場でしゃがみ込みんだ。
(靴ヒモでも切れたか!?)と、山田はシュルストロンの足元を見たが、履いている靴は甲冑の鉄靴でヒモはどこにも見えない。
「今さらビビったかコノヤロー!? こっちから行くぞオラ!」と、九里は痺れを切らせて突進。
それと同時にシュルストロンはすくっと立ち上がって構えを戻した。ただ、右足だけはボールを蹴るかのごとく膝下を振りかぶる体勢だった。
(初手で蹴るのか!? だが、それだと長さの差でさすまたの餌食だ! 負けるぞ!)と、山田は瞬時にそう判断した。ところが、
「とりゃーッ!」と、シュルストロンが右足を振り下ろしたその瞬間、バッコーン! と音が鳴り響いて九里は仰向けにひっくり返ってた。
「勝者! シュルストロン!」と、クレトンは両手を上げて喜んだ。
「やったーッ!」と、シュルストロンも両手を上げて喜んだ。
「……何が起きたんだ!?」と、山田の老眼の目だと追いきれなかった。
「俺は見えたぞ!」と、せせり串を持ったオッサン。
「本当か? 老眼のクセに」と、砂肝串を持ったオッサン。
「俺も老眼だけど見えなかったぞ」と、ハツ串を持ったオッサン。
「遠視もやっちゃてるからいい感じに見えたんだよ」と、せせり串を持ったオッサンはチッチッチと指を振った。「あのコスプレの姉ちゃんがヤンキーの姉ちゃんに向かって靴を蹴り飛ばしたんだよ。
最初しゃがんだだろ。あの時に靴を緩めたんだよきっと」
「そんなダッセえことしたのかよ?」と、砂肝串を持ったオッサン。
「あっ本当だ! コスプレの姉ちゃん、片足靴無いや!」と、ハツ串を持ったオッサン。
「シュルさん! そんなダサい方法で勝ったのか!?」と、山田は少し恥ずかしくなった。「もっとこう! 小手返し! とか! 飛びつき膝十字! とか! 何か無かったのか!? 騎士道に反しないのか!?」
「これぞ一撃必殺じゃないですかッ! 勝ってこその騎士道ですッ!」と、シュルストロンは清々しい顔だった。




