25 聖剣マグロソード
25 聖剣マグロソード
「てかよー! いつになったらケンカできんだコノヤロー!」と、プリン頭のお姉さんは店の外で待ちぼうけ。
「ほら、相手も待ってることだし。相手してやれよ」と、山田。
「……しょうがないですねッ!」と、シュルストロンは勝手に作ったレジカウンターのバリケードを
スゴスゴどかして入口を元通りにした。「マツズーム帝国の騎士の実力をお見せしましょうッ!」
「いいぞネエちゃん!」と、砂肝串を持ったオッサン。
「ポロリしろよ!」と、せせり串を持ったオッサン。
「チラリでもいいからね!」と、ハツ串を持ったオッサン。
「必勝!」と、クレトン。
「どうだっていいから早いとこ済ませてよね。ケンカなんて」と、居酒屋・大洋水産の店長がひょっこり出てきた。「もうすぐ5時になるから混むんだよね」
「一瞬ですからッ! 一撃で終わりますからッ! 安心して下さいッ!」と、シュルストロンは力強く表に出た。「さあッ! 始めましょうかッ!」
「やっと来たかコノヤロー! タバコ買いに行くとこだったぞ!」と、プリン頭のお姉さんの足元には吸い殻の山。「さっさとやるぞオラ!」
「その前にッ!」と、シュルストロンが制止する。「店員さんッ! 先ほど預けた剣をお願いしますッ!」
「卑怯だぞ! 武器使う気かよ!」と、プリン頭のお姉さんはたじろいだ。
「自分は騎士ですッ! 剣を使うのは当然のことですッ!」と、シュルストロン。
「これ、防犯用のさすまただけど良かったら使ってよ」と、店長がプリン頭のお姉さんに差し入れ。
「……無いよりマシか」と、プリン頭のお姉さんは腰を落として臨戦態勢。
「ハッ! ハッ! ハッ! ムダッ! ムダッ!」と、シュルストロンは舐め腐っていた。
「自分の剣技にかかればさすまたなどッ! 一太刀でッ! ……ちょっとッ! 剣はまだですかッ!?」
「おきくさん! さっせん!」と、スタッフのニイチャンが冷汗を流してやって来た。「ねんす! めっけんねえす!」
「ちょっとッ! 見つからないってどういうことですかッ!?」と、シュルストロンは怒り心頭。
「……あのー?」と、店長が前に出た。「もしかして、剣って……長くて……鞘に入ってるヤツでしたか?」
「そうですッ!」と、シュルストロン。「まさしく剣ですッ! 見覚えがあるのならッ! 早く探して下さいッ!」
「……申し訳ございません!」と、店長は勢いよく土下座した。「……お客様の剣ですが! マグロ包丁と間違えて! マグロの解体ショーを実施する系列店に! 宅配で送ってしまいましたー!」
「……はいッ!? 宅配ッ!? 」と、シュルストロンは事態が上手く飲み込めない。「……マグロってッ! あの魚のッ!?」
「そうですッ! 魚介類ですッ!」と、店長アスファルトに額をこすりつける。
「どうしてくれるんですかッ! 自分はッ! これから戦うんですよッ! 騎士に素手で戦えとッ!?」と、シュルストロン。
「こり……けへりに」と、スタッフのニイチャンが出刃包丁を持って来た。
「こんな短いので戦えませんよッ!」と、シュルストロンは出刃包丁を押しのけた。
「ははッ! ざまあねえなッ!」と、プリン頭のお姉さんはさすまたをブンブン振り回してた。「こっちは準備万端だぜ!」
「……卑怯者ッ! 素手を相手に武器で挑もうとはッ!」と、シュルストロンは拳を握りしめた。
(お前が言うな)と、その場にいた人間はそう思った。だが、ただ一人、クレトンを除いては。




