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24 不健全で不衛生


   24 不健全で不衛生


「ウチはな! ガキの頃からままごとよりケンカで遊んでたんだ! 舐めんじゃねえぞ!」と、プリン頭のお姉さんは勇ましく店の外に出た。


「自分だってッ! 騎士の一族としてッ! 幼少のころからッ! 武芸に勤しんでましたッ!」と、シュルストロンが後に続いた。


(ケンカ自慢のヤンキー娘ⅤS女騎士。これは見ものだな)と、山田はすでに手に汗を握っていた。ところが、


「さてと」と、シュルストロンはドアの手前で立ち止った。


「ん? 飲み過ぎで吐き気でもしたか?」と、山田は心配になったが、


「よいしょッ!」と、シュルストロンは入口横のレジカウンターをズルズル引きずってドアを塞いでしまった。「よしッ! これで敵を追い出したッ!」


「策士! 軍師! 武人!」と、クレトンが称賛を送る。


「てめー卑怯だぞ!」と、プリン頭のお姉さんは状況に気づいて猛抗議。「正々堂々! 勝負しろやー!」


「戦わずして勝ってこそ戦争では真の勝者ですッ! 愚か者ッ!」と、シュルストロンはベロベロバーと相手をバカにした。「さあ皆さんッ! 裏口から帰りましょうッ!」


「ダサいぞ! すげえダサいぞシュルさん!」と、山田はズッコケた。「てっきりカッコよく格闘術とか見せてくれると思ったのに! 期待外れ!」


「どんな手を使ってでも勝つッ! それこそが軍人のあるべき姿なのですッ!」と、シュルストロンは堂々とふんぞり返った。だが、この態度に他の客が黙ってなかった。


「ちゃんとケンカしろ!」と、砂肝串を持ったオッサン。


「ポロリが見たいんだ!」と、せせり串を持ったオッサン。


「つべこべ言わずやれ!」と、ハツ串を持ったオッサン。


 もう店内は大騒ぎになった。


「おきくさん! なあーやってすか!?」と、スタッフのニイチャンが厨房からすっ飛んできた。


「ちょっと愚か者を外に追い出しただけですッ!」と、シュルストロンは毅然とした態度。「それよりッ! 裏口まで案内をお願いしますッ!」


「ねんっすよ。いれぎちぇはひつつしかねんっす。ひじぇぎちけんようっす」と、スタッフのニイチャン。入口には確かに非常口のランプが設置されていた。


「そんなッ! いい加減なッ!」と、シュルストロンはたまげた。


「厨房、通用口」と、クレトン。


「そうですッ! 食材や残飯を出し入れする出入口があるはずですッ!」と、シュルストロンは厨房を覗いた。 


「ねんっす。ほり」と、スタッフのニイチャンは外を指さした。店の向かいの街路樹の側にポリバケツが2つ。「へいていごぜんぺんはそきにしむっちんです」


「シュルさん」と、山田がシュルストロンの肩をポンポン叩いた。「そっちの国じゃどうなってるか知らないけど、ここら辺りじゃ土地が狭いから勝手口が無い店なんてザラにあるよ」


「……知らなかった」と、シュルストロンはうなだれた。「不衛生じゃないですかッ! 実質的にもッ! 気分的にッ! 出入口と搬入口が同じだなんてッ!」


「まあ、言わんとしてることは分かる。魚のアラだの血合いだのの生ごみを同じドアに通すのは確かに嫌悪だ」と、山田。


「そうですよねッ! 我が帝国では、飲食店の出入口と搬入口は分けるよう法律で定められてますッ!」と、シュルストロン。


「でもな、シュルさん。この街はな、街全体が……不健全で……不衛生なんだ」と、山田はシュルさんの肩をまたポンポン叩いた。

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