22 肌面積
22 肌面積
「おまっとーさむ!」と、スタッフのニイチャンがワインと紹興酒を持ってきた。
「俺は2人に現代日本のナンパの仕組みを教えるからよく聞けよ」と、山田はワインと紹興酒と空いたジョッキにチャンポンして飲み干した。「いいか、何度でも言う。ナンパされたくなかったらワンピースは着ちゃいけない」
「不満」と、クレトン。「ワンピース、便利」
「そうですッ! ワンピースは便利ですッ!」と、シュルストロンも同調。
「……あのな。基本的に男はワンピースが大好きだ。そもそも、それを理解しているのか?」と、山田。
「山さんッ! ワンピースはッ! ありふれた地味な普通の服装ですよッ!」と、シュルストロン。
「無難、普遍」と、クレトン。
「これは確認だが、ワンピースの柄は何だ?」と、山田。
「無地ですよッ! 柄物なんて目立って着こなしが面倒ですッ!」と、シュルストロンはいやいやと手を振った。
「無地、白」と、クレトン。「クレトン、肌、褐色。色彩、調整」
「よりによって無地かー」と、山田が天井を見あげた。「しかもクレトンさんは白か。誰が選んだの?」
「工作員」と、クレトン。
「自分もッ! 工作員に用意してもらいましたッ!」と、シュルストロン。
「それ工作員の趣味だよ」と、山田からため息が出た。「あれだろ。どうせ、いい歳したオッサンだろ、その工作員」
「諜報一筋50年の古参兵ですッ!」と、シュルストロン。
「……ジジイじゃねえか」と、山田。「しかもエロジジイだ」
「そんな失礼なこと言わないで下さいッ!」と、シュルストロンはムっとした。「我が帝国が誇る工作員ですよッ!」
「仕事、有能」と、クレトン。
「仕事がデキるヤツほどエロいんだよな」と、山田はやれやれといった態度。「それに工作員と殺し屋は昔からエロいって相場が決まってんだよ」
「偏見」と、クレトン。
「そうですよッ! 我がマツズーム帝国の工作員はッ! 敵の恋人を寝取りッ! 精神攻撃を吸時もありますがッ!
それはあくまでッ! 作戦であってッ! ハレンチな性欲などではありませんッ!」と、シュルストロンが墓穴を掘った。
「……人様はそれをエロいって判断するんだよ」と、山田。
「……それはいいとしてですねッ!」と、シュルストロンは逃げた。「ワンピースに劣情を催す作用などありませんッ!」
「皆無。無味無臭」と、クレトン。
「劣情の作用はあるし。雰囲気もプンプン匂う」と、山田。
「変態、変態」と、クレトンが煽る。
「変態じゃない! 俺は普通のオッサンだ!」と、山田は断固、否定した。「人間、オッサンになるとワンピースと浴衣が大好きになるんだよ!」
「もしやッ!」と、シュルストロンが閃いた。「山さんはッ! ワンピースの丈を膝上だと思ってますねッ! 我々のワンピースは膝下ですッ! 長いんですッ!」
「膝上、目線、注目。諜報、不利」と、クレトン。
「当たり前だろ!」と、山田の熱い反論。「膝上のワンピースは邪道も外道だ! 第一、品が無い!」
「劣情は品の無さとッ! 肌面積に比例しますッ!」と、シュルストロン。
「気温、低下。カーディガン、追加」と、クレトン。
「そうですッ! カーディガンですッ!」と、シュルストロン。「ご存じですかッ!? ワンピースはカーディガンと相性がいいのですッ!
肌寒くなれば羽織りますッ! よってッ! 肌面積は極小になりますッ! 故に劣情は生まれませんッ!」
「生まれるんだよ! これが!」と、山田。「最高の相性だろうが! カーディガンとワンピース! ”故に“生まれるんだよ! 劣情が!」
「目、異常」と、クレトンはあっかんべーの、べー無し。
「カーディガンにワンピースッ! 布ばかり見てッ! 山さんッ! 何が一体どうなるんですかッ!?」と、シュルストロンもあっかんべーの、べー無し。
「オッサンはな! 老眼が進むごとに”心の目“が開くんだよッ! 見えないもモノが見えるんだ!」と、山田まであっかんべーの、べー無し。




