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19 初手ポテサラはよくない


   19 初手ポテサラはよくない


「俺はとりあえず、冷酒と、カニみそ甲羅焼きと、あおさの卵焼き。あと、タコわさにする」と、山田。


「……飲み物、メガレモンサワー」と、クレトン。


「おっメガか! 行くねえ!」と、山田は嬉しくなった。


「食べ物、海鮮ユッケジャン、お新香」と、クレトンは続けた。「アジフライ、ハマグリの酒蒸し。以上」


「……馴れてる!?」と、山田は驚いた。「クレトンさんの注文、スキがないな! もしかして飲み歩きしてるのか?」


「潜入、調査、複数回」と、クレトンは手慣れた感じでタッチパネルに注文をピッピッと打ち込む。「……シュルストロン。注文、未決」


「ちょっと待って下さいッ! えーとッ!」と、シュルストロンはやっとの思いで、ひねり出した。


「んーッ! フライドポテトッ! 唐揚げッ! ポテトサラダッ! あとッ! メガビールッ!」


「……了解!」と、クレトンは注文ボタンを押した。


「注文のセンスはクレトンさんが、ずっと上だな」と、山田は感心した。


「どうしてですかッ!? 無難な注文じゃないですかッ!」と、シュルストロン。


「どうしてってポテトが被ってるだろ」と、山田。


「だって好きですからッ! ジャガイモッ!」と、シュルストロン。


「あとな」と、山田は追撃にかかる。「フライドポテトと唐揚げって、これも揚げ物が被ってるじゃやないか」


「酒は揚げ物が一番ですッ!」と、シュルストロン。


「その点、クレトンさんは見事だぞ」と、山田が語ろうとした所で、


「おまっとーさむ!」と、スタッフのニイチャンが品を持ってきた。「のめもむが、メガレモンサワー、メガビール、冷酒。おとむみが、海鮮ユッケジャン、お新香、ポテトサラダ、タコわさ。でーす!」


「とりあえず乾杯だ」と、山田はグラスをかかげた。「乾杯!」


「「乾杯!」」と、シュルストロンとクレトン。


 みんなグラスをカチャっとして、グビーっと飲んだ。


「ぷはー! 見ろ!」と、山田はタコわさをつまみながら解説を始めた。「クレトンさんは、この夏の暑い昼間、サッパリとしたメガレモンサワーを軸に、甘辛く、それでいて海鮮居酒屋らしい海鮮ユッケジャンを選んだ。

 しかもだ、口直し用にお新香まで付けている。メガという分量をよく考えているんだ。これでスピードメニューが海鮮ユッケジャン一品だけだと手持ち無沙汰になる。それを見事に回避している」


「うん、うん」と、クレトンはうなずきながら海鮮ユッケジャンをヌチャヌチャよくかき混ぜる。


「そして、この2品を食べ終わった頃合いにアジフライとハマグリの酒蒸しが来るだろ。ザクっとしたフライはサワーと相性抜群だ。

 付け合わせのキャベツも嬉しい休憩になる。そこに、ほっこりと磯の風味があふれるハマグリ。ここで丁度、メガレモンサワーは飲み切る」


「2杯目、注文。延長戦」と、クレトンは海鮮ユッケジャンをチビチビ食べる。


「な、計算されてるだろ。1杯目から2杯目のことを考えているんだ」と、山田。「一方シュルさんはどうだ? ポテサラとビールって」


「美味しいじゃないですかッ! ポテトサラダッ!」と、シュルストロンは気にしながらもパクパク食べる。


「たしかに美味しい。だけどな、メニューの写真をよく見るんだ」と、山田はメニューを開いた。


「パっと見でも分かる小ささ。それと、この質感。分かるか?」


「質感がッ! どうしたんですかッ!?」と、シュルストロンのポテトサラダは半分に減っていた。


「トロトロしてるだろ。明らかに滑らかなのが分かるな?」と、山田。


「とてもッ! 柔らかな口当たりですッ!」と、シュルストロンのポテトサラダは残り4分の1。


「味付けがかなり甘いだろ」と、山田。「それじゃあビールとの相性は良いとは言えない。クレトンさんの様にレモンサワーが最適解だ」


「それはッ! 承知の上ですッ!」と、シュルストロンはゴクゴクっとビールを飲んだ。ポテトサラダは既に食べ切っていた。「しかしッ! 自分はビールじゃなきゃいけないのですッ!」


「そこまでこだわる理由でもあるのか?」と、山田。


「そ……それはッ!」と、シュルストロンは言いよどんだ。


「シュルストロン。酸味、苦手」と、クレトンがバラした。


「クレトンッ!」と、シュルストロンの顔は酔ってもないのに少し赤くなった。


「なるほどな。だが方法はある」と、山田はタッチパネルをタッチしだした。「それを証明するためにポテサラを追加注文する。メガビールはまだまだ余ってるしな」


「だってッ! メガですからッ!」と、シュルストロンのビールはまだ5分の4ほど残っていた。小さなポテトサラダでは太刀打ちできなかった。

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