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17 マッドタウン


   17 マッドタウン


「……何だあれ? コスプレか?」と、通行人のオッチャンがシュルストロンたちをチラチラ見てた。


「まあコスプレだろ。そんなことよりラーメン食いに行こうぜ。今日は替え玉だ!」と、オッチャン2号は先を急いだ。


「山さんッ!」と、シュルストロンはややへっぴり腰で歩いてた。「やっぱり目立ってますッ!」


「視線、集中砲火」と、クレトンはシュルストロンの背中に隠れてた。


「気にし過ぎだ。2人より目立つのは山ほどいるぞ」と、山田はスタスタ歩いた。「周りをよく見ろ」


「全員殺す! 全て殺す! みんな殺して俺だけ生きる!」と、薄らハゲのサラリーマンが叫ぶ。


「神に懺悔しろ! そうしなければ世界は終わるぞ! 神と和解しろ!」と、と、M字ハゲの爺さんが演説中。


「私を抱きしめろ! 優しく! それでいて熱く! 激しく! 抱きしめろ! 今すぐ!」と、ロングヘアーのカツラの隙間からツルっとハゲが見えるニューハーフが客引きに精を出す。


「な」と、山田はほれ見ろといった顔。「それに、変わり者を気にするのは決まって田舎者の観光客だ。だけどな、こん所に観光客は滅多に来ない。いたとしても道に迷ったマヌケだ」


「どうしよう兄ちゃん!」と、眉を全剃りした田舎者がビビってた。「気が狂ったヤツばっかりだし! 甲冑の女はいるし! ヤバい所だろ! しかも田舎者ってバレたみたいだし! もう帰ろう!」


「クソ! 東京を舐めてたぜ!」と、眉が無い田舎者の兄は足早に駅に向かった。


「ここは異世界ですかッ!?」と、シュルストロンは頭が痛くなった。


「魔境」と、クレトンは吐き捨てた。


「そりゃそうだ。2人にとっちゃここは異世界だろ」と、山田。


「そう言う意味じゃありませんッ! この街は異常ですッ!」と、シュルストロン。「右を向いてもッ! 左を向いてもッ! そこら中におかしな人であふれてるッ! 何なんですかッ! 本当にッ!? しかも今ッ! 昼間ですよッ! 昼間ッ!」


 そう。この時、東京は真昼間だった。季節は夏。ジリジリ太陽が照りつけてた。


「ちょっと暑さで頭をヤラれただけだ」と、山田は汗をぬぐった。


「風紀、混沌」と、クレトンはあきれてた。「アホ」


「こんな街ぐらいどこにでもあるだろ」と、山田。「シュルさんは軍人だし、クレトンさんは皇室のメイドだ。真面目で真っ当な仕事だから頭は固いし、住む世界が違う。それだけのことだ。ここは下界ってやつだ。ただの庶民の街だ」


「おえー!」と、てっぺんハゲのマッチョが山田の近くでゲロを吐いた。「おや! ゲロがプロテインシェイクそっくり! あははははは!」


「……すまん。前言撤回。ここはとんでもない街だ」と、山田は頭を下げた。


「当然ですッ!」と、シュルストロン。「もう帰りましょうッ!」


「街。臭気、酸味」と、クレトンは気分を少し悪くしてた。「椅子、不要」


「そんなこと言っても、もう着いたんだよ。目当ての店」と、山田は立ち止った。店はピカピカと漁船みたいなライトが目印の海鮮居酒屋〈大洋水産〉だ。しかも24時間営業。年中無休。

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