12 身体で覚える
12 身体で覚える
「冷たいも温かいもこれ一つ……か。石油なんて目じゃねえぞ!」と、山田は魔法石を手にして興奮に似た感動さえ覚えた。
「魔法石。熱量、力。念、自由、自在」と、クレトンが説明する。
「さあッ! 山さんも魔法石を握り込んで下さいッ!」と、シュルストロンが山田の手を包んだ。
「念さえ送ればッ! 何とかなりますッ!」
「コツとかあるのか?」と、山田。
「気持ちですッ!」と、シュルストロンは一言。
「根性!」と、クレトンも。
「……じゃあ……そうだな……よし。冷たくなれ!」と、山田は魔法石に念じた。「冷たくなるんだ!」
「もっとですッ! もっと念じるのですッ!」と、シュルストロンが激励を送る。
「念! 送信! 念! 送信!」と、クレトンも手に汗握り見守る。
そうこうしていると山田の手の中からボヤーっと白い煙が出てきた。
「シュルさん! 出てきたぞ! さっきの白いの!」と、山田は嬉しそう。「このあとどうする!?」
「そのままッ! そのままッ!」と、シュルストロンはドウドウと山田を落ち着かせる。「あと少しッ!」
「ああ! もうムリだ! 痛え!」と、山田は魔法石を離した。コロコロ転がった魔法石は床に霜を張っていった。「ドライアイス以上だこれ!」
「初めてにしては上出来ですよッ!」と、シュルストロンは感心していた。
「感性、上等。入口、好調」と、クレトンも褒めた。
「どうも! しかし痛え!」と、山田は手のひらをフーフーしながら軽く頭を下げた。「凄えシロモノってのは分かったけど、だいぶ危ねえな」
「馴れですッ! 馴れッ!」と、シュルストロンが手のひらを見せつける。皮が厚くなった丈夫そうな手のひらだ。タコも少々。「痛みを知って学ぶのですッ!」
「懐古、追憶」と、クレトンは懐かしそうに目を細めた。
「そんなもんかね」と、山田は腕組み。
「しかし本当に初めてにしては上手くいった方ですッ! ほとんどの場合ッ! 爆発しますからッ!」と、シュルストロン。
「……え? 爆発までするの?」と、山田は動揺を隠せなかった。「そこまで危ないことを事前に何の説明もなくやらせたワケ?」
「大丈夫ですッ! みんな幼少期に親から習うぐらいのことですからッ!」と、シュルストロンは必死に弁明にかかる。「それにッ! ケガしても魔法石で治せますッ!」
「キズ薬にもなるのか!?」と、山田はたまげた。
「念じれば胃腸薬にもなりますッ!」と、シュルストロン。
「万能薬」と、クレトンもキッパリと。
「ここまで万能だと、もしかしたら水をワインに変えちまいそうだな」と、山田は何気なく言った。
「さすがにそれはッ!」と、シュルストロンは苦笑いだった。