表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/52

11 魔法石王


   11 魔法石王


「我が帝国ッ! マツズーム帝国はッ! それはッ! それはッ! 素晴らしい国なのですッ!」と、シュルストロンは熱く、熱く、熱く語りだした。


「正解」と、クレトンが拍手を飛ばす。


「んで、どう素晴らしいのさ?」と、山田はまだ温度が乗り切らない様子。


「いい質問ですッ!」と、シュルストロンがビシッと指を指した。「なぜ素晴らしいと思いますかッ!」


「思考、検討、考察。やれ」と、クルトンが急かす。


「待て、待て、待て。……そうだな」と、山田はとりあえず考えた。「経済が発展してるとか。治安がいいとか。飯が美味いとか。まあ、そんなとこだろ」


「その通りですッ!」と、シュルストロンが胸を張った。「我が帝国は全てッ! 考えうる限り全てッ! 素晴らしい国としての条件を満たしているのですッ!」


「完璧、無欠」と、クレトンが大きくうなづいた。


(何か、このノリ……悪徳セミナーの潜入取材を思い出すな)と、山田の目は疑いの目になっていた。(謎の黒酢を買わされたバアさんは健康になったのだろうか? まあ、なってねえな)


「さて山さんッ! 我が帝国の素晴らしさをッ! 支ええているのは何かッ!? 分かりますかッ!?」と、シュルストロンが山田に詰め寄った。


「んなこと言われてもな。分からねえから教えてもらってんだろうが」と、山田はやや投げやり。


「じゃあ、あれだ。石油でも噴き出てくるんだろ」


「おしい」と、クレトンは残念そう。


「おっ。近いのか。じゃあ一体、何だ?」と、山田は当てに行き始めた。「……だったら金山があるとかか? それなら納得できる。俺の報酬も金の延べ棒だしな」


「いえッ! それも違いますッ! もっとスゴいんですッ! 金の延べ棒よりもずっと価値がありますッ!」と、シュルストロンは笑顔だった。「ちなみに金山は隣国にありますッ! 金は輸入してますッ!」


「これ」と、クレトンがポケットから取り出したのは、鮮やかな虹色にキラキラ輝く小さな石ころだった。「貴重」


「なるほど。宝石か」と、山田はキレイな石をまじまじ見る。「うん。これは売れるだろうな」


「宝石、異種」と、クレトンは首を横に振った。


「魔法石ですッ!」と、シュルストロンが続いた。「鉱物ではありませんッ! 資源ですッ! 資源ッ!」


「資源? つまり石炭みたいなモノか?」と、山田は顎をさする。


「そこらの資源の水準など軽く凌駕しますよッ!」と、シュルストロンは鼻息荒くそう言った。「論より証拠ッ! クレトンッ! 見せて下さいッ!」


「……むん!」と、クレトンが魔法石をギュっと握って気合を入れる。そして魔法石をポーイと投げた。「えい!」


 放物線を描いた魔法石はチャポンと飲みかけの湯飲みに入った。すると、すぐさま湯飲みから真っ白な煙が吹き出てピキピキ音が鳴った。


「完成」と、クレトンが湯飲みを山田に差し出した。


「冷たい!?」と、山田は心底、驚いた。さっきまでお茶だったのに凍っていたからだ。「一瞬でカチコチに!? どうなってんだこれは!?」


「これが魔法石の力ですッ!」と、シュルストロンはガッツポーズを決めた。「ではクレトンッ! もう一丁ですッ!」


「むん!」と、クレトンが魔法石をもう一つ取り出して念を込める「えい!」


 今度はそっと湯飲みにポチャリと魔法石が入った。さっきと同じ様にまた真っ白な煙が吹き出した。ただ違うのは、ピキピキではなく、ゴポゴポ音が鳴った。


「おい! 熱くなってきたぞ!」と、山田は焦った。凍ってたはずのお茶がみるみるうちに溶けたからだ。ハッキリと目の前で寿司屋ぐらい熱いお茶になったのだ。「どうなってんだ!?」


「言いいましたよねッ! これが魔法石の力ですッ!」と、シュルストロンはガッツポーズを繰り返した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ