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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

永遠のリンネ

この宇宙は無限の広さを持っているだと?


時は永遠に流れ続けるだと?


それは違う。始まりが有るのなら必ず終わりが有る。永遠に存在する事象など存在しない。


そう終わりは必ずいつか訪れる。


いつか必ず…




 星々の大海原を眺めながら、この何処までも続く宇宙空間を光輝く閃光のような速さで飛翔する小さな物体。


 人のような形をしたその物体。生命体ではあるが正確には人では無い。頭上に生えた巨大な2本の角に悪魔の如き翼を備えた【魔神】ともいうべき存在か。その瞳は感情を表す事はなくただ一点を見詰める。


 魔神は一つの惑星を視認し、動きを止める。惑星の周りには人工衛星が飛び交い、地表には所々に点在する沢山の光の粒。知的生命が謳歌する惑星だ。


 遥かかなたの宇宙空間に位置する魔神は、その手のひらを惑星に向け、まるで惑星を包み込むように拳を握り締める。


 その瞬間、凄まじい熱と光と供に惑星は塵と化して消え去った。その星に住まう全ての生命と共に…


 愛を語り合う恋人達も、優しい笑顔を向ける老夫婦も、未来に希望を向ける子供達も全て等しく無に帰る…


 そしてまた魔神は宇宙を駆ける。次なる生命の波動を探して。


 魔神の目的は全ての破壊。そして消滅。何故、破壊しなければならないのか、理由は魔神本人も解らない。余りにも永く生きすぎた為に忘却してしまったのか。


 幾つもの星々を消し去り、尚も宇宙空間を飛翔する魔神。既に、数十万年の間、宇宙空間を飛翔し続けている。


 魔神は一つの惑星へと降り立った。そこは、生命など到底存在できぬ、灼熱の荒涼とした大地だった。空気は存在せず、近過ぎる恒星の光が、容赦なく降り注ぎ、大地を焦がす。


「あらあら…こんな所で会えるなんてね」


 不意に魔神に話しかける声。聞き覚えのある声。いや声なのか、それとも頭の中に直接語りかける何者かの意志なのか。魔神は声の方向に深き闇の双瞳を向ける。


 其処には、静かに燃えながら揺らめく赤色の長い頭髪と赤い瞳。全身から炎を発する少女が佇んでいた。それはまるで炎そのものに生命が宿ったような姿の女の子だった。



「火…憐か…」


魔神は数十万年ぶりに声を発し、炎の少女の事を火憐と呼んだ。


()()は随分速く見つけてくれたね

 1千万年ぶりぐらいかな?」

火憐と呼ばれた少女は笑みを浮かべて魔神に話しかけた。


「強き生命の波動を感じた処に……


 たまたまお前が存ただけだ」


「今回の転生は()()()のようね」

少女が微笑みながら問いかけると


「当たりでは…無い…この程度のチカラでは


 宇宙を消滅させる事は…出来ない」


魔神は表情を変えずに答えた。


「ふーん。私に取ってはこの身体でも十分大当たりだけどねぇ。やっぱ、宇宙を3つ消滅させた先輩の言うことは違うなぁ」


 炎の少女は楽しそうに魔神の廻りをクルクルと飛び回った。


「ねぇ…私もあなたについて行っていい?

 ――今回は少しは力になれると思うし…」


炎の少女が魔神に問いかけると魔神は表情を一切変えずに答えた。


「………好きに…するがいい」



――――――


 魔神は宇宙空間を飛翔する。かつては独りであったが今は隣に炎の少女を供にして。


 魔神は命満ちる惑星発見し、何時もの様に躊躇無く破壊した。


「キャハハすっごーい綺麗~!」


 生命の終末を秘めた爆発を眺める少女の瞳はまるで花火でも眺めて喜ぶ子供の様だった。


 魔神は何も感じない。心など遥か昔に喪っているのだ。


炎の少女はまだ心を保っている。


既に壊れかけてはいるけれど。


――――――


 数千年の時を二人は一緒に過ごした。無数の星々を魔神は破壊し、炎の少女を喜ばせた。しかし今、二人の時間は終わりを迎えようとしている。 


 宇宙空間の浮かぶ二人。


 炎の少女はもうかつてのような炎を発してはいない。くすぶり、今にも消えてしまいそうな炎の少女。彼女は間もなく寿命を迎えようとしていた。


「ここ……までだね……


 私は……先に……次の世界へ行ってるね……


 アナタと一緒にこんなに永く過ごせて……


 私……嬉しかったよ


 もう2度と会えないかもしれない……


 最期に…私の手を…」


 炎の少女は消え入りそうなその腕を魔神に向かって掲げたが……


 魔神がその手を取ることは無かった。


 炎の少女は悲しそうな表情を浮かべながら、生命の火は消え、冷たく凍りつくように息を引き取った。


 魔神は表情を変えず、また破壊の旅を再開した。


――――――



 全ての事象には終わりがくる。


 それはこの魔神にとってもだ。


 数千万年の時が流れ、魔神もまた、最期の時を迎えようとしていた。

 無数の星々を破壊した魔神。だが宇宙の広さと比較すると魔神の破壊行為など、地表の蟻を一匹潰したのと同程度の事なのだ。


 チカラを使い果たし、宇宙空間を漂う魔神は、死を迎える最期の直前、宇宙空間を手のひらに納めるように掲げ、一言だけ呟いた。


「……よ…」



「……」



――――――



 ここは地球と良く似た惑星のとある国。とある高校の教室内。ひとりの少年が授業を受けながら物思いにふけっていた。


(……()()()転生も大ハズレだ…)


(ならば今回も為政者となりて)


(大量破壊兵器を用いてこの惑星もろとも…)


 表情に乏しく、誰とも仲良くなろうとはしない独りぼっちの少年。死を迎えた魔神は、更に何度も転生を繰り返し、現在は何のチカラも持たない高校生の少年となっていた。しかしこの姿となった今でも彼の目的は変わらない。


 

 ある日、少年のクラスにひとりの転校生がやってきた。


天野 火憐(あまの かれん)です。よろしくお願いします☆」


 燃えるような赤いロングヘアーの女の子。転校生の彼女は、その大きな瞳で一番後ろの席に座る少年を見て優しく微笑んだ。


(とうとう……見つけたよ)


 少年は表情を変えず専門書を読み、女の子には全く興味を示さなかった。


 ある時、少年は学校の屋上で独り、ただ座って空を眺めていた。ここは誰にも邪魔されない、独りで居られる場所だから。


「輪廻くん」


不意に少年を輪廻と呼ぶ女の子の声。


「俺の事を輪廻と呼ぶな」


少年は顔も合わせずにそう呟いた。


「やっぱり輪廻だ~」


 赤い髪の女の子、火憐が嬉しそうな表情で少年に近寄ってきた。少年はただ空を見つめ、それ以上は口を開かなかったが、火憐はひとりでしゃべり続ける。


「同じ時間、同じ場所、同じ種族に転生したなんて


 奇跡よ!奇跡!


 大ハズレの転生かと思ったけど


 大当たりよね!」


少年は無言で立ち上がり、この場を去ろうとする。


「あっ待ってよ~。折角、出会ったんだから

 今回も一緒に居ていいでしょ?」


少年は立ち止まり、火憐に背を向けたまま、一言呟いた。



「好きにしろ」



火憐は満面の笑みを浮かべて少年の後ろからついて行く。



――




――



「輪廻くん、この星も破壊しちゃうの?ふーん…」


――


「輪廻くん!見てみて!こんなに綺麗な景色だよ!」


――


「この人生は休憩みたいなもの?面白いことも言えるんだね輪廻くん」


――



――



――



「輪廻くん……私ずっとアナタのことが……」


――


「ずっと……ずっと夢に見ていた……今夢が叶った……」


――


「輪廻くん……好き……アナタの事をずっとずっと愛してる…」


――


「生まれる前からずっと…」



――



――



「輪廻くん、神様って居ると思う?私は信じているよ」


「だって私の願いを叶えてくれたもん」



「輪廻くん、ほらまた動いたよ。」


「私たちの子供、女の子だって」


「ほら、触ってみてよ。うふふ」


――



――


「輪廻くん……もうやめようよ破壊なんて」


「私、この世界を失いたくない……」


「アナタのことも、子供達も……」



「輪廻くん」



「輪廻くん……」


――



――



――――――



 70年程の時が流れ、此処は病院の一室。年老いた女性が、その一生を終えようとしていた。


 ベッドに横たわる女性の前にはその、息子、娘、孫達が神妙な面持ちで見守っていた。そしてその女性の夫である年老いた男性も。


 無表情な男性の顔には深いしわが刻まれ、その瞳には感情が宿って居ないように見えるが、命尽きようとしている妻の事をじっと見つめていた。


「アナタ……」


 私は……幸せだったよ」


(何万回繰り返した人生の中で……)


「一番幸せだった……」


 赤く美しかった頭髪は真っ白くなり、しわが無数に刻まれた顔の年老いた女性は同じく年老いた夫の顔を見ながら幸せそうに微笑んだ。


「私は……もう満足……


 さようなら……輪廻くん……」


 年老いた女性は、またね、ではなくさようなら、と夫に呟いた。


「最期に……私の手を……」


 そう呟いた老女であったが、その腕はもう振り上げるチカラも無く…


年老いた夫は妻の手を取り優しく握りしめた。


 年老いた妻は、幸せそうな笑顔を浮かべ、永遠の眠りについた………


 家族達の悲しみの嗚咽が漏れる。


 妻を失った夫は相変わらず無表情であったが




 その瞳からは一筋の涙がこぼれ落ちた……




 老人は幽鬼のように歩きながら思いを馳せる。


(思い……出した……)


(私が……破壊する理由……)


(……よ……)


(主よ……)


(何故……私をこの世に存在させるのだ……)



「父さん……何故……?何故こんな事を……」



(何故……これほどの悲しみを……)


(与え続けるのだ……)



「お爺ちゃん……やめて……やめて……」



(主よ……アナタが私をこの世に存在させ続けるのなら……)


(良いだろう)


(私はアナタの創ったこの世界を…)



「この子だけは……お願いこの子だけは……」



(全てを消滅させてやろう)


(主よ……アナタが根を上げるその時まで……!)



――その日、痛ましい事件が起きた。


 妻の死に自暴自棄となった老いた夫が


 自分の家族を皆


 惨殺し


 自らもその命を絶った




 





 

メインで執筆しておるお話のスピンオフでもあったりするかもしれない。

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― 新着の感想 ―
[一言] これ、さらなるバットエンドに向かっちゃてない? これから、ずっと一人で…… いや、ハッピーエンドか。 これ以上すり切れることが無くなるんだから。
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