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9、


読みに来ていただき

有難うございます。


評価、ブックマークの登録、

有難うございます。




 乗合馬車が目的地、平民街の中心に到着した。


小さな噴水を中心とした広場の周りには、各種ギルドや

宿屋、食堂、酒場、商会といった、大きな店舗、施設があり、建物の周りには街路が縦横無尽に走っていた。


馬車が通る大きな車道や、広場に面した大通りは、

整備されていたが、建物の横の通りを進むにつれ、

初めて訪れた者は確実に迷子になる様な造りになっていた。


万が一敵の侵攻を受けても、直ぐには王城へとたどれない

複雑な道路状況に、マルグリットは未だに全ての道の攻略が

出来ていなかった。



 乗合馬車を降りようとしたマルグリットに、

エリュシオンの手よりも先に、クリストファーが手を

差し出していた。


マルグリットは差し出されたクリストファーの手を取って、

馬車から降りると、小さく礼をして、ドナルドとグリフィスの所に歩いて行った。


エリュシオンは、馬車から降りるマルグリットを

エスコート出来なかった事に加え、自分に見向きもせず、

マルグリットが向かった()()二人を見て、

イラついていた……。


クリストファーはマルグリットの手が、淑女仕様では無く、

素手だった事で、動揺していた。


社交会で交流する令嬢は、手袋をしている。

素手で淑女の手に触れるなど、普通は無い……。


学園では()()で過ごしている淑女科の生徒を、見る事はあっても、接触する事は無い。


アトキンス侯爵家嫡男、クリストファーは、年頃の令嬢の手に直接触れたぐらいで動揺する程の純情男子だった。




************




 ドナルドとグリフィスを連れて、マルグリットは、

ハンターギルドの扉を開けて中に入っていった。


入って正面の受付カウンターには三人の受付担当者が

ハンターの対応をしていた。


右側壁面には大きな掲示板があり、ランク別に依頼の

書かれた用紙が張り出されていた。


朝一の喧騒が済んだギルドの中は、落ち着いた雰囲気で、

中堅のハンターが数名、雑談がてら情報交換をしていた。


そんな中をフード付きの白いローブを着た男女と若い男の

三人組が、受付カウンターに足を進めた。


少し遅れてギルドの中に入ってきた、エリュシオンと、

クリストファーの二人もマルグリット達のいる受付へと、

迷うことなく合流してきた。


 見目のいい若い男二人が入ってきたことで、受付担当の

若い女性職員はソワソワとしていた。


口を開けて見惚れている受付嬢、色めき立ち、ギラギラした目で二人を見ている女性ハンター達を、面白くなさそうに

男性ハンター達は見ていた。


注目を浴びている二人は、周囲を気にせず真直ぐに、

マルグリット達のいる受付に並んでいた。


「ようこそハンターギルドへ……本日の御用は、

ご依頼ですか?」


受付嬢の問いかけに、マルグリットが返事をした。


「いや、先ずは、ハンター登録をお願いしたい」


「はい、三名様ですね?」


マルグリットは一名だけ……と言い掛け、後ろを振り向いた。


「……シ、オンと、クリスは……二人はハンター登録を

するの?登録済?それとも、何か依頼するの?」


何故か責める様な口調で、矢継ぎ早に問われた

エリュシオンは、登録に来た、というのだった。


「ふ~ん、登録ね……二人とも?」


ジトっとした目で聞かれたエリュシオンは、

短く、そうだ、とだけ答えた。


マルグリットは向き直ると、受付嬢に向かって、

三名新規で登録を頼んだ。


 マルグリットとドナルドは、既にハンターとして、

活動していた。


 魔法科の生徒の中には、魔道具の研究、実験の為や、

薬草や素材を収集する為に、ハンターギルドを利用する

生徒も多かった。


多くの生徒はお金を払って、依頼を出していたが、

ドナルドの様に、諸事情からハンターとして登録し、

自ら活動する者も少なくなかった。


 騎士科の生徒の中には、腕試しとばかりに、

ハンター登録する者もいたので、学生が登録にきても、

ベテランのギルド職員ならば、対応にも慣れていた。


三名分の登録用紙を受け取ったマルグリットは、

グリフィスとクリストファー、そしてエリュシオンの

三人に、受付嬢には聞こえぬよう、小声で囁いた。


「名前の欄は、偽名にして下さいね……」


エリュシオンについては、何も言わずとも、当然のように

偽名で記入するだろうと思っていたが、後の二人は、

そのまま本名で記入するのでは、と心配していた。


 三人が登録をしている間に、マルグリットは掲示板に

貼ってある依頼をチェックしていた。


マルグリットが探しているのは、王都の外に出るのに、

都合の良い依頼があるかどうか……


マルグリット達がハンターギルドに来た目的は、

グリフィスのハンター登録をする事と、ドナルドが

マルグリットからもらった“魔法の杖”を試用する事だった。


ついでにグリフィスの耳に付けたピアスも、どの程度まで

耐えられるか、試してみよう……


マルグリットは、余計な厄介事(ふたり)を引き寄せた

グリフィスと、ドナルドに怒っていた。


王都から出て、半日ほどの所にある森に行けば、

()()()()()騒がしくしても……ついでに、薬草とか魔石とか採集して……


掲示板の前で、一人楽しそうにしているマルグリットに、

二人組の若い女性ハンターが話し掛けてきた。


若い男(いいおとこ)を四人も引き連れて、

いい気になってるんじゃない?」


「掲示板の前でぼーっと立ってんじゃないわよ」


「何様?無視してんじゃないわよ!」


始めに話しかけてきたピンク髪の女の子が、

マルグリットの肩を掴んで、強引に振り向かせた。


同時にもう一人の茶髪の女の子が、後ろからマルグリットのフードを引き外した。


「「!!」」


被っていたフードが脱げて、マルグリッドの銀色の髪が、

零れ落ちた……


マルグリットの銀髪を見たハンター達がざわめき出していた。


ざわざわ……


「お、おい()()って……」


「……あ、あいつら……死んだな……」


「まさか、マギー様だったとは……」


マルグリットの銀髪を見たハンター達の間から、

不穏な呟きと共に、『マギー様』、『打撃の女王様』、

『銀の明星』、などという二つ名が囁かれていた。


マルグリットに絡んでいた若い女の子二人組はといえば……


「「あ、あああ……す、すいませんでしたぁああ」」


悲鳴を上げて、ギルドから逃げる様に出て行ってしまった。




登録とギルドカード、ランクについての説明が終わり、

注意事項の説明をしようとした受付嬢だったが、

エリュシオンが他の二名、ドナルドとマルグリットから

聞くといわれ、あとは手数料を払うだけだった。


「手数料、一人分銀貨一枚です。」


「クリス……立て替えてもらっていいか?」


「え?持ってませんよ……」


「ウォルトは?」


エリュシオンに聞かれたグリフィスは、

黙って首を横に振っていた。


「私の口座から落としておいて……」


マルグリットはそう言うと、受付嬢にギルドカードを

提示していた。


「それと、この依頼受けるから……」


マルグリットは、掲示板から一枚の依頼書を選び取り、

受付担当者に差し出していた。


「はい、Bランクハンターのマギー様ですね。

依頼内容、西の森のスパイダー調査ですね」


「異常繁殖していた場合は、そのまま討伐しても?」


「はい。異常繁殖、五個体以上の繁殖が認められた場合、

討伐依頼に移行します。無理な場合は刺激せず、報告

のみでも、依頼達成になります。」


「了解。できれば討伐してくる……」


「マギー様、パーティ登録はされますか?」


「う~ん……それは次回に、かな……」


マルグリットは受付カウンターを離れ、ドナルド、

グリフィスが待つ扉の所へ向かった。


エリュシオンと、クリストファーは、受付カウンターにいた

別の職員に、捕まっていた。


“魔法の杖”と“ピアス”について、

詮索されたくないマルグリットは、今がチャンス!とばかりに、ドナルドとグリフィスの二人を連れて、ギルドを後にした。



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