6、
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有難うございます。
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ドナルドとグリフィスの二人に、医務室に
運ばれたマルグリットは、医務室勤務の
治療師に診てもらう事が出来た。
「少し魔力の流れが悪いかな……あと、疲労してるね……
何をやらかしたのか、本人に聞きますかね……」
そう言うと治療師は気付け薬の入った瓶を棚から取り出し
マルグリットの鼻先に、突き付けた。
意識の無かったマルグリットは、気付け薬の、腐った牛乳より強烈な刺激臭によって、目を覚ました。
「うぅ……目と鼻が痛い……」
「目が覚めましたか、レディ?」
「う~ん、ここは……?」
「ここは医務室……治療師のアシュトン・マーティンと
申します。早速ですがレディ、二、三、お聞きしても?」
「え……?」
マルグリットは治療師に、二日ほど不眠不休で、
魔道具を開発していたことを話した。
素直に話したのは、今回作った魔道具、親子鑑定の
魔道具についての助言が欲しいからだった。
************
「それで……やっとの事で完成したんですけど、
よろしければこの後、アシュトン様には魔道具についての
助言と、効果の証明者になって頂きたいのですわ」
マルグリットは、開発した親子鑑定の魔道具について
治療師のアシュトンに熱く語っていた。
無理をして完成させた魔道具の事を、夢中になって話す
マルグリットに、治療師のアシュトンは眉間を押さえ
小さく息を吐くと、マルグリットの頭に手刀を落とした。
「馬鹿ですか……?無理して倒れたのに、考え無しの
おバカさんですね、貴女は……」
「ご、ごめんなさい……。謝罪いたしますわ……
でも、医療関係者なら興味を引く魔道具で……ギクッ……」
治療師のアシュトンが、イイ笑顔で、手刀を構えていた。
マルグリットは、話すのを止め、顔を強張らせた。
「はぁ……魔道具については、週明けに話を聞きます。
今日の所は、寮に帰って、休むこと……もちろん、食事も
忘れずに取りなさい……わかりましたね?」
マルグリットは、嘘くさいアシュトンの笑顔に、
黙って頷くことしか出来なかった。
アシュトンは、医務室の外で待っているドナルドと
グリフィスの二人を、部屋の中に呼び入れた。
「二人が、貴女をここまで連れて来たのですよ」
アシュトンにそう言われて、マルグリットは二人を見た。
「ドナルド……と、騎士科の……え、と……?」
「グリフィス・ウォルター……遠征で同じ班だった……」
「ええ、そうそう……もちろん憶えていてよ。ちょっと……名前が浮かばなかっただけですわ……」
シレっと言うマルグリットに、ドナルドは、ニヤリと口角を上げて、勝ち誇ったように言った。
「それ、忘れてたって、事だよな?マギィ……」
「そうとも言うわねぇ……ダック……」
「だから、俺の名前はダックじゃねぇ!」
「え~だってガァガァ言うから……ダックでいいじゃない?」
「ハン、マギィちゃんは体調管理も出来ないくせに……」
「なんですってぇ?」
売られた喧嘩は、買うぞこの野郎!と言わんばかりの
マルグリットと、ドナルドのやり取りに、治療師の
アシュトンは、顔を引き攣らせながら、
唸るように低い声で言い放った。
「お、前らぁ……喧嘩するほど元気なら、とっとと出て行けぇ~~!!」
「「「しっつれいしました~」」」
慌てて、医務室を出て行く三人に、アシュトンは
フンっと、鼻息を荒くしていた。
************
医務室を出たマルグリットが、寮では無く研究室に向かおうとしているのを、ドナルドが見咎めていた。
「アシュトン治療師が言われたよなぁ?今日は大人しく
寮に戻れって……」
「わかってるわよ……忘れ物を取りに行くだけよ」
マルグリットの両脇を固める様に、ドナルドと
グリフィスが歩いていた。
「何で一緒に歩いてるのよ!」
「いや、お前の研究室、魔法で施錠しちゃったから……」
「え?……なんで?」
「お前、憶えてないのか?部屋の中で倒れたからだよ」
「え?倒れて……じゃぁ、医務室までどうやって……」
「それはぁ、グリフィスが横抱きにして……」
「ちょ……嘘?嘘でしょ?」
「いや、本当。いきなり倒れたから、心配した」
いつも不真面目、お笑いキャラなドナルドが、
真剣な顔で、マルグリットに告げていた。
「そ、それはありがとう……ございます?」
「何で疑問形……?」
「え、つい……」
マルグリットは、黙って横を歩くグリフィスに振り返ると
ありがとう、と、感謝の言葉を述べた。
(う~、研究棟から医務室まで横抱き……恥ずい……)
「貴方もありがとう……お世話をおかけ致しましたわ。あ~、でも、重くなかったかしら?」
照れ隠しに、マルグリットはグリフィスにそう言った。
「いや、全然……羽根の様に軽くて、柔らかかった……」
(ななな、なんですとぉ~~~)
「ソーデスカ……」
更に恥ずかしくなり、マルグリットは
居たたまれない気持ちになっていた。
************
研究棟に着いた三人は、マルグリットの研究室の
ドアの前に立っていた。
ドナルドが魔法で鍵を解除すると、マルグリットは
部屋の中に入っていった。
研究室とはいえ女の子の部屋に、黙って入る事は出来ない。
二人は大人しくドアの外で、マルグリットが出てくるのを
待っていた。
少しして、部屋から出てきたマルグリットは、
手に何かを持っていた。
マルグリットは、手に持っていたソレを
二人に手渡しながら、改めて感謝の言葉を口にするのだった。
「二人とも、本当にありがとう……」
「そんな、大したことしてないよ。何の研究か、
興味半分で、覗こうとしてただけだし……」
馬鹿正直なドナルド……いろいろ台無しである……。
「自主鍛錬に、出てこないので、心配していました」
「そ、うね……そういえば朝練に、行って無かったわ。
週明けから、また参加するようにするわ」
ドナルドは、自分とグリフィスとで、口調を分ける
マルグリットを不服そうに見ていた。
「お待ちしております。ですが……鍛錬をせず、鈍った体が元に戻るまで無理は禁物です……」
グリフィスは満足そうに頷きながらも、苦言を呈していた。
ドナルドはグリフィスの固い口調に、まじまじと顔を見返していた。が、すぐに、ま、いっか~と、追及する事はしなかった。
「ところでマギィ、コレ……なんだ?」
マルグリットから手渡されたものについて、
ドナルドが問いかけていた。
「ああ、それ魔法の杖……」
「はぁああ……??」
「魔力発動の補助が出来て、武器にもなるから……。
使い方を想いながら、『アクション』っていえば、
その通りにつかえるから……」
「貰えるか!こんな……」
「えぇ~?気に入らない?」
「そういう事じゃなくて、何で?」
「お礼……だって、助けてくれたから……」
学園で、同じ歳の学生に助けてもらうのも、お礼をするのも、初体験のマルグリットは、照れていた……
向かい合って、立っているドナルドの右足の靴の先を
見ながら、マルグリットは耳の先を赤く染めていた。
((な、何だこの、可愛い生き物は……))
ドナルドとグリフィンは、初めて見るマルグリットの
愛らしい仕草に、“敵わない”と、思うのだった。
グリフィスはドナルドが手にしている“魔法の杖”と、
マルグリットから手渡され、自分の手の中にあるソレを見比べていた。
「マルグリット嬢、コレは何でしょうか?」
「助けて頂いたお礼ですわ。つまらない物で、
申し訳ないのですけど……」
マルグリットがつまらない物と言ったソレは、銀で出来た腕輪だった。
「申し訳ないが、受け取る事は出来ない。目の前に倒れた
女性がいて、助けるのは当然の事だ。それに、
受け取ったらこれで終わり……そんな事にはしたくない」
「グリフィス……お前?」
「マルグリット嬢……私に、礼を下さるというのでしたら、ドナルドと同じように『マギィ』と愛称でお呼びする事をお許しください」
グリフィスはマルグリットの手を取り、熱のこもった目で、マルグリットを見つめていた……
改行、文章表現、誤字等で
修正する事があります。
話の筋は変わりませんので、
読み返さなくても、大丈夫だと
思います。
よろしくお願いいたします。