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12、

読みに来ていただき

有難うございます。


ブックマークの登録、評価を

有難うございます。


誤字、脱字、ございましたら、報告を

よろしくお願いいたします。


 ドナルドは、手の中にある、マルグリットからもらった

“魔法の杖”を見て、考えこんでいた。

(マギィには“魔法の杖”って、言われたけど……どう見ても小さな剣にしか見えないんだよなぁ……う~ん??)



マルグリットがドナルドに渡した“魔法の杖”それは、

手の平サイズの、シンプルな魔法の(ステッキだった。


地球世界の日本で、魔法少女が手にしていたステッキを元に制作していた。


愛用のペン型の杖の後に、剣としても使える様に……と

作られたが、剣を使えなかったマルグリットにとって、

無用の長物となっていた。



「ダック~お待たせ~~」


「……別に待ってなかった、けど」

(はぁ……マギィがダックって呼ぶ度、睨まれるんだけど)


マルグリットは気が付いていないが、『ダック』と

親し気に呼ぶたびに、エリュシオンがドナルドの事を、

射殺しそうな目で見つめていた。


「ん?どうかしたの?」


「いや……それよりコレ、魔法の杖って言うより剣の

ミニチュアにしか見えないけど……魔法剣って言った方がよくないか?」


ドナルドのいう事に、マルグリットは人差し指を立て、振りながら小さく舌打ちを繰り返した。


「チッチッチ……ダックってば、わかってないなぁ~」


「魔法剣は、全然、()()だよー。コレはね、

魔法の杖(ステッキ)だよ」


「ステッキ??」


「そう、ステッキ……それで、先に、他の人が、ステッキを使えないように登録しちゃおう」


「登録……そっか、必要だよな」


「そうそう、で、ハイ」


マルグリットはドナルドに向かって、右の手の平を

差し出し、ステッキを受け取った。


「使用者限定・隠蔽・リターン・抗状態異常……追加付与」


マルグリットはステッキに必要な魔術を付与すると、

ドナルドに呼び掛けた。


「ダックぅ~手出して……」


「?」


マルグリットは表情の無い笑みを浮かべながら、

無防備に差し出されたドナルドの掌にステッキを握らせ、

思いっきり引き抜いた。


「痛っ……」


「使用認証確定……うん、完了っと」


マルグリットは痛がっているドナルドの右手の平に触れ、

ヒールをかけて癒し、ステッキを渡した。


「起動する言葉は『アクション』だよ。声に出しても、

出さなくてもいい。どんな形にするかは、自分で考えて

私は、こんな感じでやってるよ」


そう言うと、マルグリットは持っていたメイスを一瞬で

ペンの形に戻した。

そして、今度はメイスでは無く、ランス……槍に変えていた。


目の前でペンを槍に変えたマルグリットを見て、

ドナルドは、今すぐ自分もやりたいと考えた。


「アクション!」


ドナルドは、手にしていたステッキをショートソードに

変化させた。


「ダック、剣は使えるの?」


「え?」


マルグリットの槍がドナルドめがけて打ち込まれた。


ガキーン


マルグリットが繰り出す槍を、ドナルドは剣で受け止めた。


「ブッブー……ダメじゃん……」


「えぇ~何で?……」


マルグリットのダメ出しに、ドナルドは不服そうに

唇を突き出していた。

()()()()をしたドナルドの顔を見て、マルグリットは吹き出してしまった。


「プップフ~……ダックぅ、やめ…お、お腹が……」


お腹を抱え、笑い続けるマルグリットに、ドナルドは

遠征研修前の組み分けで、初めてマルグリットと顔を合わせた時のことを思い出していた。





************





騎士科との合同遠征研修の前に、魔法科の生徒は二人づつ

組み分けられ、二十人程度の騎士科生のグループに振り分けられる。騎士科生に対して、魔法科生の数が少ないのは、

実際、魔法科の生徒が少ないからだった。


ドナルドは組み分けられた相手が、『氷乙女(アイスレディ)』と呼ばれる、マルグリットだと知ると、嫌そうに、顔を歪めていた。


マルグリットだからという事では無く、()()()()という事が、ドナルドは不満だった。


遠征研修は、風呂無し、ベッド無し、トイレ無し……

こんな状態で、組む相手が女なんて、面倒な予感しか無い

自然とドナルドは溜息を漏らしていた。


そんなドナルドにマルグリットは右手を差し出してきた。


「パートナーのマルグリット……よろしく」


「ドナルド・ダグワーズ……」


「え?ドナルド・ダックワーズ??」


「ダグワーズ……」


「クッ……ドナルド・ダック・ワーズッ……グッ」


「だから、ダグワーズ!ダックじゃねぇ」


「ご、ごめ……ククッ……わ、私の事はマギィでいいから

よろしくね。ダック……」


「だから、ダックじゃねー。わかったか、マ、マギィ……」


「ウンウン、わかってるよぉ、だってワザとだからね……」


「な!おま、え……」


「マ・ギ・ィ……ミギィじゃないよ、マギィだよ!」


「マギィ……」


「うん、よろしくね。ダック……」


「はぁ、もういいやダックで……よろしくな」


マルグリットは、ドナルドをダックと呼ぶことにし、

代わりに自分の事はマギィと呼ぶように言っていた。


ドナルドは、同級生や上級生の男子から羨望の眼差しを

向けられていた。


氷乙女(アイスレディ)』が、微笑みながら親しそうに

話をしている……。


遠征研修の組み分けは、双方の理解があれば変更、解消が

出来る。


マルグリットとのパートナーの解消を迫る者は大勢いた。

だが、ドナルドとのコンビを解消する気の無いマルグリットに、(ことごと)く阻止されていた。


ドナルド()()笑みを浮かべ、親しそうに話すマルグリットだったが、他の生徒に対する態度は、相変わらずの塩対応……『氷乙女(アイスレディ)』に、変わりは無かった。




学園に入ってすぐに、ハンター協会に登録をしていた

マルグリットは、数日遅れで登録に来たドナルドの事を

協会で見ていた。


魔法科の生徒がハンター協会に来ることは、珍しくは無い。

大概が薬草採集の依頼がほとんどで、自らハンターに登録

する物好きが自分以外にいた事に、マルグリットは驚き、

登録手続きをしているドナルドを、こっそりと見ていたのだった。


それからというもの……マルグリットはドナルドの事を、

協会で見かけるたび、気にかけていた。


マルグリットがドナルドを気にかけている理由……それは、

好き嫌いとかではなく、ドナルドが時々アヒル口になっていたからだった。


地球という世界の日本で生きていた時、唇を突き出し、

口角を上げている顔がカワイイとかいう事で、インターネットという発達した通信網でも、話題になっていた。


この世界にも、アヒル顔っているんだぁ……という理由で

ドナルドを見かけるたびに、注視していたのだった。




二年生になって、騎士科との遠征研修のための組み分けで、

まさか一緒になるなんて、マルグリットは思ってもいなかった。


しかも、名前が……名前が……ブフッ……

アヒル口で……ドナルド……プッ、しかもダグワーズ(ダック)クックック……


マルグリットは、出銭ランドのキャラクターのアヒルの姿を思い出すたびに笑ってしまうのだった。





************





「ダック、剣としても使えるけど、“魔法の杖”なんだから

もっと考えて使ってよ……魔法科生らしくさぁ……」


ペン型魔道具をメイスやモーニングスター、槍にして、

物理攻撃をしている自分の事は、棚上げにしている

マルグリットの事を、誰も突っ込めないでいた。


「こ~んな感じとかぁ、こ~んなの……」


マルグリットは槍を弓に変化させると、人差し指と中指で

弦を引き、弓を弾き絞って、見えない矢を天に向かって放った。


パヒューン……


音を立て空高く放たれた矢が、無数の火球となって

そらから降り注いだ。


「ふっふ~ん……どう、よ?」


(うぁあ……なんだこの表情かお……)

マルグリットのドヤ顔にドナルドはタジタジだった。


「ちょ、どうやったんだよ?今の……」


「すごいでしょ?」


「おしえてマギィちゃん、お・ね・が・い!!」


「え~、どうしようかなぁ~?……なぁ~んてね」


マルグリットはドナルドに魔法の杖の扱い方を

詳しく説明しはじめた。


「初めに言ったけど、“魔法の杖”何だから、どうやって

使いたいか、イメージして魔力を発動するんだよ」


「イメージ……イメージねぇ……」


「そう、何をどうしたいか……。難しいかな?」


「……どうしたいか……何を……」


「わかった。じゃぁ、先ずは、形を剣から別な何かに

変えてみて……例えばこんな感じで……」


マルグリットは、弓に変えていた魔道具を、水差しに

変え、傾けた。


マルグリットが傾けた水差しから、大量の水が零れ落ちていた。


次に、マルグリットは水差しをメイスに変化させると、

メイスの凶悪な尖頭から、水が勢いよく飛び出していた。


マルグリットは次に、メイスの突端に火を熾した。

松明の火の様に灯る炎が、メイスを前方に傾けると、

火炎放射器の様に炎を噴き上げていた。


「何て、凶悪な武器なんだ……」


遠くから眺めていたクリストファーが、呟いていた。


もしも、この場にハンター達が居れば、クリストファーの

呟きに、『イヤイヤ、まだまだ、()()に比べれば……』とか言っていただろう……



ドナルドは、杖を使って、次々と魔法を繰り出す

マルグリットを見て、どうやって、杖を使えばいいか、

何とか理解できたようだった。


ドナルドは杖を剣から、乗馬用の短鞭に変えると、

ヒュンヒュンと、音が聞こえるほど振っていた。


「ダックの魔力が、杖に浸透するまでは、火も水も、

最小のモノからにしてね」


「ああ、いきなりでかい魔法は使わないよ」


そう言うと、ドナルドは鞭の先に火を熾した。


「大きさを少しずつ変えてみて……」


マルグリットに言われて、ドナルドは鞭の先に灯った炎を

蝋燭の先に灯る大きさから、松明の大きさに変え、更に

大きな火球を作ると、鞭の反動を利用する様に、前方に

打ち出していた。


ドナルドの打ち出した大きな火球は、地面に着弾する直前、マルグリットが出した水球に打ち消されていた。


「ダック、すごい、もう一人で出来るね」


「え?ちょ、マギィ……待って……」


マルグリットは、ドナルドのいう事はマルっと無視して、

グリフィスを呼びに行っていた。


グリフィスと、ドナルドの二人に、魔道具の練習を、

二人でやる様にと、言うのだった。


グリフィスには、ドナルドに攻撃をされても、壊れないような防御障壁を張る様にと言い、ドナルドには、グリフィスが張る防御障壁を打ち破れる様に、攻撃する魔力を徐々に大きくして行くように、指示を出していた。


「二人とも、怪我しないようにね……何かあったら、

呼んでね。何処にいても、魔道具に呼び掛けてくれたら、

届くから……」



マルグリットはドナルドとグリフィスの二人にそう言い残すと、エリュシオンとクリストファーの二人を連れて、

スパイダーの調査をする為に、森の奥へと歩み進むのだった。



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