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世界旅行は姫様とともに  作者: tontoko
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1.出会い

1.出会い


初めて人を殺めたのはいつだっただろうか...もう殺した人間が男か女かも忘れてしまった。まだ小さい頃だ。あの頃はまだまだ技術もなくて危なかったな...

俺、笹口恭平は殺し屋だ。名前だけが日本人だが根っからの西洋人だ。平気で土足のまま家に入る。結構名が知れてる方で、依頼もたくさん来る。そのうちの一つを、今片付けようとしていた。

「さて、今日の標的はあそこか…」

30メートル程先を街を見物するようにゆっくり走る馬車を捕捉する。あれに乗っているのはこの国の貴族の一門、アルトリア家の長女、クリスティー・アルトリアだ。三日前に殺したジャンナはこいつの妹だ。

「どこで殺すか...」

右ポケットに入っているお気に入りのナイフを弄びながら殺害の算段を立てる。

あの馬車から降りたところをナイフで殺すか?それともここからリボルバーで撃ち抜くか...色々な案が浮かんだがやはり近づいて仕留めるのが良いと判断した。

その後しばらく尾行を続けていると、人気のないところで急に馬車が止まった。

「お、ラッキー!」

早速馬車を操っていた御者をナイフで首を切って殺し、馬車の扉を開ける。


...時間が止まった。比喩抜きに女神のようだった。透き通るような綺麗な金髪、すべてを吸い込むような目、世界一の彫刻師が作ったような流線美を描く鼻、程よく膨らんだ桜色の唇、それらが神が作ったかのようなバランスで並んでいる。

しかしその美しい顔には何の感情もなかった。御者が殺されたことに対する恐怖も、次は自分かという不安もなかった。

その無表情を見ていると何故かクリスティーを殺す気が無くなり、ナイフは自然にポケットの中へ戻って行った。

「...殺さないの?」

精緻な顔から突如言葉が発せられた。声もまた銀鈴のごとく綺麗なものだった。

「あ...あぁ、残念だけど、今日はもう気分が乗らないな。」

なんとか照れの感情を隠しながらそう言うと、彼女はさみしげな表情を一瞬浮かべたが、すぐにまた無表情に戻って予想だにしていなかったことを淡々と話し始めた。

「...あなたが御者を殺したから家に帰れないのだけど、馬は操れる?」

...は?

いやいやいやいや、何言ってんだこの女?さっきまで自分のこと殺そうとしてたんだぞ?

驚きで一気に照れとか吹き飛んでいった。

「お、おい...俺はさっきまでお前を殺そうとしてたんだぞ?」

「でも...もう殺さないんでしょう?」

「まぁそうなんだが...」

「じゃあ...大丈夫。」

うーん、この女の感性がわからん。一応馬車くらいは操れるからいいのだが...まぁいいか。殺されそうになった張本人か言ってるんだし。

「わかりましたよ、お嬢様。」

渋々了承して運転席に乗り馬に鞭を打ち始める。


後ろのクリスティーの指示に従って馬車をしばらく操っていると、急に彼女が「ここでいいわ」と言って馬車を止めた。

「おい、馬車はどこに置いておけばいいんだ?」


「それくらいあなたにあげる...」

「いやいや、別にいらないんですが?」

正直こんな大荷物を押し付けられても困る。そこそこの値打ちはありそうだが...

「...じゃああの屋敷の門の前に止めておいて。」

百メートルほど離れた場所にある城?を指さしてそう言うと、もう用は無いと言うようにそっちに向かって歩いて行った。

そんな無感情な後ろ姿を見ていると、今までずっと我慢していたことを言いたくてしょうがなくなる。

「なぁお嬢様!あんたこれから命を狙われるんだぞ?怖くないのか?」

どんどん離れていく背中を呼び止めるようにそう言う。今までずっと言ってこなかったが、正直馬車を走らせ始めてからこの事しか頭になかった。

余裕で聞こえるほどの声量で言ったはずだが、クリスティーはついに振り向くことなく人混みに紛れて消えてしまった。

結局俺の中での彼女の印象は「謎の美人」で固定されてしまった...超綺麗だったけど

今日は色々あって疲れた...早く家に帰って寝よう。

帰りに行きつけのパン屋でガチガチのフランスパンを買って、俺は帰路につくのであった。


クリスティーに初めてあってから一週間ほどの時間が経った。いつも通りに街をぶらぶら歩いていると、少し見覚えのある顔に呼び止められた。

俺の良き友人でもあり情報屋をやっているサイモンだ。ガタイがよく顔に大きな傷が入っているため、マフィアにしか見えないが、良い奴だ。

「よ、最近どうだ?」

「おぉ、聞いてくれよ。今まであった中で間違いなく一番の美人にあったぜ。なんか変なやつだったけど。」

しばらく歩きながら話していると「少しどうだ?」とサイモンが言い出し、近くの何故か地下にある喫茶店に入り、コーヒーを一杯ずつ頼む。しばらくクリスティーの美人さ自慢など他愛のないことを俺が話していると、突然黙っていたサイモンが真面目な顔になって重々しく口を開いた。

「なぁお前、今自分がどんな状況にあるかわかってるのか?」

「は?どういうことだよ?」

今までずっと悪事ばかり働いてきたが、今までこいつがここまで真面目な顔をして危機を忠告してきたことは無い。それほどのことを最近した覚えはないのだが...

「どういうことって...その美人さんにも関わることだよ。その...確かクリスティーだったか?確か暗殺を依頼したのはゴルゴッソ・ファミリーだろ?あそこはすんげぇ貴族がバックにいるって噂だ。」

「あー、なるほどな。貴族同士の争いか。そりゃ確かにおっかないが...」

「バカ違ぇよ!ゴルゴッソ・ファミリーがお前の暗殺を各所に依頼したんだ。例えば...ルイン兄弟とかな。」

顔を青ざめさせながらそう話しているサイモンを見る限り、どうやらただ事ではないらしい。しかも、サイモンが今口にしたルイン兄弟...殺し屋業界の中でも去年の冬頃から頭角を現し始めた双子だ。以前ちらりと見かけたことがあるが只者ではない雰囲気を感じた。

「分かった。その事についてのお前が持っている情報をくれ。言い値で買う。」

サイモンの雰囲気に引っ張られて俺も真面目にそういうと、サイモンは急にガハハと豪快に笑い出した。

「お前ならそう言ってくれると思ったぜ!恭平!」

俺はハメられたのだ。危ない状況であるのは確かなのだろうが、このぼったくり情報屋に軽々しく言い値とかいうんじゃなかった...

「くっそ!てめぇハメやがったな!?」

「いやいや、男に二言はない...だろ?」

そう言ってサイモンは子供が見たら泣いて逃げ出すであろう笑顔を見せたのであった。


「さて、まずゴルゴッソ・ファミリーについてだ。」

5万ドルという法外な料金をふっかけられたが、こいつの情報は確かだ。よく聞いておこう。

「ゴルゴッソ・ファミリーは主に麻薬密売や武器の密売、そして暗殺の請負が収入源のマフィアで、今回お前に来た依頼はイギリス北部の貴族、フィリス・エインズワースが依頼主だ。」

フィリス・エインズワース、よく聞く名ではあった。マフィアを使って邪魔な貴族を殺し、今の地位に上り詰めたという噂をよく聞く。クリスティーも邪魔と判断されたのだろう。

「で、今俺に迫ってる危険ってのは?」

「まぁ焦んなって。フィリス・エインズワースの依頼はアルトリア家の殲滅。お前に来た依頼はその一部だ。」

「あぁ、確かにクリスティーとジャンナだけだな。」

「だろ?じゃあ他の依頼はどこに行ったと思う?」

「まぁ...ほかの殺し屋だよな?」

「ご名答。でもその代理が問題なんだ。」

「...どういうことだ?」

残念ながら俺のお粗末な頭ではこいつの遠回しな言い方が理解できない。

確かに依頼をスカしたことは悪いかもしれないが俺はそんなの今回が初めてじゃないし「あいつはたまにスカす」的な噂も出回ってるらしいから了承済みだったんじゃないのか?

「その代理ってやつがな...あのシュタイナーだって言うんだよ。」

「あぁ...なるほどね...」

シュタイナー。ドイツの殺し屋だ。この界隈で「スコープをのぞかせたら右に出る者はいない」とまで言われている。

しかも、こいつが有名になった理由は腕だけではない。規律を重んじる性格から、適当な仕事をする殺し屋を殺し回る『殺し屋殺し』をやってるという噂があるのだ。

「そりゃ確かにやべぇな。俺なんて一発アウトだよ。だからこんな地下にある店だったのか。」

「そういうこった。感謝してくれてもいいぜ。」

サイモンの見た目に似合わない細やかな気遣いに対するチップの件はとりあえず置いておいて、俺は一番聞きたかったことを聞く。

「なぁ、これからクリスティーはどうなるんだ?」

するとサイモンはまるで宇宙人を見たかのごとく驚き、口角を上げながらこう言った。

「お前...惚れたか?」

「...いや、多分違う...と思う?」

「随分と曖昧だな。」

そう...正直今のこの感情がどんなものなのか、俺は何を求めているのか自分でもよく分かっていないのだ。それを確かめるためにも、クリスティーについてのことは聞いておきたかった。

「それで?どうなんだよ。」

「そうだな...ここからは別料金、と言いたいところだが珍しいものが見れたからサービスしておこう。」

「もったいぶんな。早くしてくれ。」

「まぁ怒んなよ。率直に言うと、殺される。」

「やっぱりか...」

「それも依頼されたのはシュタイナーだ。助けるとか馬鹿な真似はやめた方がいいと思うぜ。これは良き友人としての忠告だ。」

俺は自分で言うのはなんだが、大体の殺し屋に勝てる。しかし、相手がシュタイナーとなると話は別だ。長距離から狙撃してくる奴にナイフを使った近距離戦闘を得意とする俺が勝てる見込みは薄い。

かといって、こいつの忠告を受け入れる気にもならなかった。シュタイナーから逃げるのが癪だったというガキ臭い理由もあるが、何よりこの胸で燻るよくわからない感情、欲望の正体を知りたかったのだ。

「まぁ物は試しだ。ちょっとは抵抗してみるさ。そんでお前に一つ頼みがあるんだ。あるものを用意してほしい。」

止めても無駄だとわかっていたのか、溜息を一つ吐いて了承してくれた。もちろん法外な料金をふっかけられたが...



はじめまして!tonkotuと申します!

これが初めての作品となるので、至らない点もあると思います。そういったことがあった場合にはぜひ!コメントしていただけると嬉しいです!Twitterで言うのもありありですよ〜(Twitterの宣伝を挟んでいく)

とにかく、見ていただけるだけで励みになります!コメントバンバンしてください!


Twitter→@umimori0331

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