試験説明
眩い光に反射的に目を閉じた。
「おい、エルフと人間だ!」
「ここにいるってことは俺らとはライバルだな」
「きゃーーー!!! リアム様がいらっしゃるわ!」
「フォーサイス家の坊ちゃんの隣にいるあの赤毛は誰だ? どこの家のだ?」
非常に騒がしい。控えめに言わなくても五月蝿い。
ご覧の通り、どうやら場所が移ったようだ。
初めて経験する空間移動は、思いの外快適で苦痛も何も無い。かなり眩しくなる以外は。
しかし本当に一瞬だった。さっき目を閉じたばかりなのに開けると何もかもが変わっていた。一秒も閉じていないはずだ。魔法って本当不思議だ。
今、俺とリアムがいるのは、かなり開けた場所だ。何処かは分からないが学校の敷地内であるのは間違いないだろう。離れた所にあのシンボルとも言える城が見えるしね。
ここは様々な容姿の者で溢れかえっている。
人、エルフ、獣人など街で見かける容姿の者が大半だが、見たことがない者も少なからずいる。
「おいリアム! 入学試験があるなんて聞いてねぇぞ」
俺の声が聞こえなかったのか一言も喋らない。
「なんか言えよ。おーい! おぉーーーい!」
「五月蝿い」
冷たく光る白銀の目で睨みつけながら地を這うような声で突き放された。
へへ、ちょっと前の優しいリアムが懐かしいぜ……
「きゃーーーーー!!!!!」
突如、八方から上がる耳をつんざく黄色い歓声。
「リアム様が喋ったわ!!」
「あぁもう……だから喋りたくなかったんだ」
注目の的であるこの男は、嫌そうに顔をしかめ、俺を更にきつく睨みつけながら、まるで最初からこうなると予想していたかのように言った。
「えっ……なんかごめん……こうなるなんて思わなかったから……」
「もう起こってしまっては仕方がないからな。事前にこうなるって言わなかった俺が悪い」
重々しく吐き出された溜息が今までの苦労を漂わせていた。
「皆さーーん! 静かにお願いします」
頭上で声がする。
見上げると俺たちの少し上を女のエルフが飛んでいた。
碧眼に金髪でかなりの童顔だ。パンツが見えないようにするためかズボンを履いてきているのがちょっぴり残念。
「皆さんこんにちは。私は今回の入学試験の監督官であるハクア・トエイア・トイ・ハネスです。ハクアとお呼びください」
ハクア先生ねぇ……笑った顔が可愛い。口許にできるえくぼが特に!!
「皆さんにはこれから空間移動をして貰い、向かった先で魔獣を倒して頂きます。倒した魔獣毎にポイントが加算され、そのポイントの合計で今後のクラス編成をしていきます」
「なあ、リアム……俺、まだ魔法使えねぇのにちょっとハードじゃないか?」
「心配するなサポートはする」
いや、そういう意味じゃないんだよ……
「魔獣は私達教師陣が作り出したもので、倒されても一定時間後にはまた復活します。ですが、魔獣によって貴方たちが負った傷は本物になります。最悪の場合、命も落としかねません……もしこれを聞いて怖気付いた者がいましたら、今すぐ帰られた方が良いと思いますよ」
本当に命を落とす……この入学試験は生半可な気持ちで挑んでは確実に命を落とすって事か。なるほど、つまり俺みたいな魔法のまの字も知らないような輩は即刻お陀仏って訳か。
「試験は三日間です。今から三日後の正午までです。皆さんの健闘を祈ってますよ!」
彼女は最後に少しはにかんで校舎側に飛び去っていった。
「リアム! 頑張ろうな!!」
「当たり前だ」
「あぁ!!! ごめんなさーーい!! 言い忘れてました!」
間も無くひどく慌てた声で、彼女が戻ってきた。
「注意事項を言い忘れていました……本当にごめんなさい。
えっと……まず受験者同士での戦闘は認めません。すぐ発覚しますので馬鹿な真似はしないでくださいよ。処罰は基本稼いだポイントを下げるのですが、場合によっては入学停止にします。絶対にやらないでくださいよ! 絶対ですよ! 信じてますからね!! あと、三日間の生活は全て自給自足です。かなり過酷ですが頑張ってください! あ、最後に試験は二人以上のパーティで動きます。今から組んで下さい!」
俺はリアムと組むことは最初から決まっているから別に相手を探さなくても良い。
ただ周りの目が痛い。凄く痛い。頼むからそんな突き刺さる目で俺を見つめないでくれ。リアムと違って俺は慣れてないんだよ。
「組めましたか? あまり時間が無いのでもう試験を始めます。近くの魔法陣に移動して下さい。乗ったら自動的に発動するので、私からの説明はこれで本当に! 以上です。頑張ってくださいね!」
言ったすぐ後にさっき飛んで行ったのとは違う方向に飛んで行く。こういう人をドジっ子と言うのだろうな。
「さぁ、俺らも行こうぜ!!」
「あぁ」