不思議な立地
「ローレンツ魔法学校はこの国で一番の大きさを誇っている。かなり昔に設立されたとか。何年前だったかな」
隣で右手を顎に当てて悩んでいるポーズをとるがそれさえも絵になる。
ほら、ほら! 何人かがこっちを見た。
「すまない。忘れたから後で校内図書館で調べてくれ。ここの図書館は出入り自由だから」
「へいへーい」
何年に設立されようが別に興味は無い。
さっき校門を出発したが、校舎までまだまだ長い距離がある。
校門付近では多かった生徒も段々と数が減っていった。
みんなどこ行ったのかと思って周りを見てみると、消えてる……しゅばしゅば消えてる……!
「お、おい!! リアム、今人が消えたぞ! これは神隠しだ!!」
俺はこんなにも驚いてるのに、彼は微動だにしていない。
それどころか早歩きに俺から離れて別の場所で立ち止まった。
「リーテンアネモス」
突然唱えられた呪文。
しなやかな手が宙で弧を描くと静かに風が巻き起こった。周りに降り積もってある枯葉を巻き上げ、粉砕していく。
粉となった枯葉が彼に降り注ぎシミ一つない服を汚していくが、止んだはずの風が唐突に吹き、粉をどこかへ飛ばしていった。まるで彼を守るように。
見とれていると目が合った。
それはこっちへ来いと訴えてくる。
小走りに近づくと地面を指差していた。見てみると不思議な模様が描かれてある。それはまだ地面に積っている枯葉の下まで続いているようだ。
「何これ?」
「さっき言った魔法陣の一部だ。この学校は一つの大きな魔法陣の上に建てられている。校門から校舎まで遠いから生徒には予め各教室へ通じる呪文を教えておき、校門を過ぎれば魔法陣の上だから呪文を唱えればさっと行ける。便利なもんだ」
「何それ! めっちゃ凄いな! なあ、俺らもその呪文唱えて早く行こうぜ」
「残念だがそれはできない。俺は初めてここに来るから呪文は教えられていない」
「おいおい、マジかよ……そんな、校舎まで遠すぎるだろ。何なんだよここ」
そう本当に遠い。小さく見えるゴールが果てしなく感じる。
呪文を予め知っている生徒たちが恨めしいぜ。
「少しは我慢しろ。最初はみんな校舎まで歩いて行ったんだ。俺たちだけ楽は出来ない」
「えーー。俺もう疲れた」
ペタリと地面に座り込む。本当に長い。疲れた。
振り返ると校門がかなり小さくなっていて、どれ程歩いたのかを教えてくれた。それでも校舎までかなりの距離がある。
「そうか。なら置いていく」
嘘だと思ったが枯葉を踏む音が段々と遠くなる。本当に置いてかれた様だ。
「本当に置いてくのかよ……」
かなり先にいる。どんだけ歩くの速いんだよ。
ちっとも回復しなかった体を起こして、急いでリアムを追いかけた。
「待ってくれーーー!!!」