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98 エルダはどんな状況でもエルダである。



「何が始まるんですか?」



「いいから座りなさい。」



ジュリは、座っている面子を見てしりごむヒロを無理やり椅子に座らせ、自身もヒロの隣の椅子へと腰掛けた。



「それでは、皆さんお揃いになられましたね。」



ルーベル爺は、席に着いた皆の顔を見わたすと話始めた。



話は簡単にまとめると、このエストラ男爵領の隣のテトリナ子爵領の兵がガジール山脈のドワーフの集落に侵攻し、エストラ男爵領のハルム村にドワーフが逃げてきたという問題だった。



「侵攻の話は聞いてなかったのか?」



レキエラの言葉に「聞いておりません。」とルーベル爺は簡潔に答えた。



「申し訳ありません、レキエラ。僕が不甲斐ないばかりに。」



泣きそうになるラインベルトを横のエルダがうれしそうに凝視していた。



「気持ち悪いですよ、エルダさん。」



「な、何を言っているんだ、ヒロ。わ、私は、決してラインベルトの泣き顔が私の子宮に響くとかそんな破廉恥なことを考えていたということは決して無いんだぞ。ただ、純粋にラインベルトの涙を舐めてもいいだろうかと真剣に考えていただけだ。」



「それ・・どっちも駄目ですからね。」



「な、だったら、私はどうすればいいんだ、ヒロ。教えてくれ!」



「ちょっと、お静かにお願い致します。」



「「申し訳ない。」」



ヒロとエルダは、2人共ルーベル爺に頭を下げた。



「それで、とりあえず、ハルム村に急ぎ数名送ることになりましたので、よろしくお願い致します。」



ルーベル爺がヒロを真っ直ぐに見ていた。



「えっと、その数名に俺が含まれているということでしょうか?」



「はい、冒険者組合のエスト支部長には了解を得ております。というより、エスト支部長の推薦ですので。」



「エスト支部長って見たことないんですけど、どんな方なんですか、ジュリ様?」



ヒロは、隣に座っていたジュリを見るが、ジュリは笑顔で自分のことを右手の人差し指で示していた。



「・・・もしかして、ジュリ様がエスト冒険者組合の支部長なんですか?」



「その通りよ。私がこのエスト冒険者組合の支部長様なのよ。私の意外な権力に驚いたかしら。」



「それは、驚きま・・・せんね。」



ジュリの横暴な態度を散々見せ付けられたヒロにとっては、特に驚きはなかった。



むしろ、バイトという立場であの冒険者への権力を使っているという方が驚きというものだった。



「まったく、ヒロが驚かないなんて面白くないわ。」



ジュリは、不機嫌そうな顔になった。



そんなジュリは放っておき、ヒロはルーベル爺に尋ねた。



「別に行くのはいいんですが、他には誰が行くんですか?シーターさんは、冒険者組合の受付嬢になってますし、アレクシスさんは最近姿見えませんし。俺のパーティーいないんですけど?」



「アレクシスは、昨日正式にレキエラの部下として、このエストラ男爵領の兵士になったわよ。だから、シーターも冒険者辞めて受付嬢やってくれることになったの。結果、冒険者パーティー『イレギュラー・ナイト』は解散ということで受理したから。」



「俺、何も聞いてませんけど?」



「私が言っといてあげるって言ったのよ。」



「俺、ジュリ様にも聞いてませんけど?」



「今、言ったじゃない。」



「・・・。」



ヒロは、ジュリをジトッとした目で見たが、ジュリはどこ吹く風で話を続けた。



「この話は、エスト冒険者組合が正式に依頼として受けた仕事だから、ヒロに拒否権はないわよ。」



「普通、冒険者にも拒否権はあるんじゃないんですか?」



「普通はね。でも、ヒロにはないわよ。」



当然のごとく言い切るジュリ。



「意味がわからないんですが?」



「何言ってるのよ。ヒロとは、私のために奢り、私のためにボッタクられ、私の命令には絶対服従、そんな存在じゃないの。今更何を言ってるのかしら?」



にらみ合うヒロとジュリ。そんな2人にレキエラが仲裁に入った。



「まあまあ、ヒロもジュリも落ち着け。今回は、我も同行させてもらう。あと、ヒロの婚約者のミュミュという白ウサギ族の女性とあと1人隠密行動の得意な者を用意するそうだ。」



ヒロは、酒場の隅のテーブルに目をやると、そこではミュミュが大量のカラになった皿をテーブルの上に積んでいた。



ヒロの視線に気付いたミュミュは、「大丈夫です。まだまだイケるです。」と意味の分からないことを言ってサムズアップしてきた。



「それで、ハルム村に行くのはいいんですけど、行って何をすればいいんですか?」



ラインベルトは椅子から立ち上がった。なぜかエルダも立ち上がった。



「それについては、僕から説明させていただきます。ハルム村への伝言はレキエラに伝えていますので、道中にでもレキエラに聞いてください。あと、ヒロさん達には、ハルム村に着いた後、ドワーフの集落の現状調査を頼んでいます。現在、ドワーフの集落がどうなっているのか、テトリナ子爵の兵達の人数や行動を調査をお願いします。」



「わかりました。ですが、もしテトリナ子爵様の兵士と問題になったら、どうすればいいのですか?」



「そんなの決まってるじゃないか、ヒロ。『パンプキン・サーカス』の掟に従って行動すればいい。」



自信満々の表情でヒロを見下ろすエルダ。



ヒロは嫌な予感がして、エルダに念のため確認を取った。



「・・・一応確認しますけど、エルダさん、『パンプキン・サーカス』の掟とは?」



「『邪魔する者は皆殺し。邪魔しない者も皆殺し。パンプキン・サーカス以外皆殺し。(15歳以下のかわいい少年は除く。)』だ。」



「・・・見つからない様に行動しますね。ちなみに皆さんに誤解がないように言いますけど、それ『パンプキン・サーカス』の掟ではないですからね。エルダさんと『ほっかほっかのかぼちゃ』さんが勝手に言っているだけですからね。」



ヒロはエルダを無視して、ラインベルトに視線を向けた。



「それでお願いします。極力エルダの言うような行動はしないようにお願いします。あと、僕とエルダは今から至急王都に向い、今回の問題を王に伝えて、判断を頂いて来ますので、それまではどうか無理はしないようにお願いします。」



「フッ、ラインベルト、ここから王都に向かう道中にいい温泉のある町があるとルーベル爺に聞いたのだが、どうだろう、そこで2泊くらいして2人でシッポリと温泉にでもつかるというのは。何、一緒に温泉に入ろうと言っているわけではない。ただ、ルーベル爺によるとそこには混浴しかないらしくてな。仕方なく一緒に入ることはあるかもしれないが。」



ヒロとラインベルトはエルダの言葉を無視して話を続けた。



「・・・わかりました、領主様。それでいつ出発すればいいですか?」



「できればすぐにお願いします。」



「馬車の用意が出来たぞ。」



黒ウサギ族の女性が入ってきた。ヒロは知らないが、黒ウサギ族の族長のシリルだった。シリルは、先に依頼を受けて馬車の用意をしていたのだ。



「彼女は、今回の最後のメンバー、黒ウサギ族族長のシリルよ。元Aランクの冒険者で元ギルド『シャドーアサシン』のシリル。凄腕の暗殺技術を持ってるから、いつものように夜這いをして逆にあそこを落とされないように気をつけなさい。」



「お前が、あの有名なヒロか。噂だけは聞いているぞ。」



「どうも、ヒロです。・・・ところで有名って何で有名なんですかね?」



ヒロは、椅子から立ち上がり、シリルに手を差し出した。しかし、シリルはそのヒロの手を握ることなく、気まずそうに横を向いた。



「その・・・なんだ・・・私は、夫がいる身だからな。あんまり悪い噂のある者と仲良くしている姿を見られるのは問題があるというか・・・。」



「・・・どんな系統の噂かは理解できました。」



悲しそうに出した手を引っ込めるヒロ。その目は今にも涙が溢れそうになっていた。



「それでは、急ぎお願いします。」



ラインベルトの言葉で、それぞれが動き始めた。



「ちょっといい、ヒロ。」



馬車に向かおうとしていたヒロは、ジュリに呼び止められた。



「ヒロ、もし、戦わなくちゃいけなくなったら、本当のヒロの姿で戦ってね。」



「本当の俺の姿・・・ですか?」



「そう、ヴァンパイアの姿でね。」



「何か意味があるんですか?」



「念のためよ。」



それだけ言うとジュリは、冒険者組合のカウンターの中にあるドアの中へと消えて行った。



「ヒロお兄ちゃん。」



酒場のメグがヒロを見ていた。その表情はどこか暗かった。



「どうしたの、メグちゃん。心配しなくても大丈夫だよ。危ないことはしないから。」



「ううん。そうじゃなくて。あそこの白ウサギのミュミュちゃんの食事代払ってくれるんでしょ?」



そっちの心配かいと言いたいのを堪え、ヒロは微妙な表情でメグを見た。



「い、いくらかな?」



「大銀貨1枚だよ。」



「・・・はい。」



ヒロは、大銀貨1枚とチップで銀貨1枚を払った。メグはうれしそうに受け取った。



「いつもありがとうヒロお兄ちゃん。お金払いのいいところが、ヒロお兄ちゃんの唯一いいところだね。」



メグは悪気のない笑顔を浮かべ、自分が毒を吐いたことにも気付かずに戻っていった。



その後、ヒロは、まだ食べていたミュミュの首根っこを捕まえると、「まだです。まだ食べるです。」と言い張るミュミュを引きずって馬車に放り込んだ。



「それでは、行くか。」



御者席に座るレキエラの言葉で馬車はエストを出発した。


登場人物


ヒロ・・・ヒロ


ジュリ・・・実は、なんと!エストの冒険者組合支部長だった!・・・どうでもいいことですけど。


アレクシス・・・ヒロとシーターとパーティーを組んでいた。現在はエストラ男爵領の兵士。レキエラの部下になっている。


シーター・・・アレクシスとヒロとパーティーを組んでいた。現在はエスト冒険者組合の受付嬢。


メグ・・・冒険者組合に併設されている酒場で働いている少女。結構、毒舌ただし本人自覚なし。


ミュミュ・・・白ウサギ族。大食い。本人、大してお金を持っていないので、払いはすべてヒロ。ただし、ヒロと肉体関係はなし。現状では、ヒロの部屋に泊めてもらい、ヒロに食事を奢ってもらう、しかし、肉体関係はないし、恋人でもないし、友人でもないという、わけのわからない関係。ちなみに、ミュミュの兄は行方不明。

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