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95 ガドンガルとアダマンタイト


ガドンガルはゆっくりと歩き始め、鍛冶場を出て行く。



鍛冶場を出て、右手の先にガドンガルが誇り、そして嫉妬した愛息ガドリコが倒れていた。



自らが作った武器の中で、初めてドワーフの名工達に認められた片手斧を右手に持ったまま、血を流して倒れていた。



ガドンガルは、その片手斧だけを息子の右手から離すと、自らの右の腰につけた。



その間、常に周囲を警戒し、息子ガドリコの息がまだあるかもと確認もしなかった。



見ただけで、傭兵時代の経験上、ガドリコが流している血の量はとても助かるような量ではなかったからだ。



「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオー!!!」



ガドンガル、魂の叫びであった。



地下空洞に居たすべての兵士の心をガドンガルの叫びは震えさせた。



すべての兵士の視線がガドンガルの方へと向けられる。



「あのドワーフを殺せ!」



騎士らしき男の言葉で、兵士達は、一斉にガドンガル目掛けて突進してきた。



ガドンガルは、両手でハルバートを持って、顔を前に向けたまま、背中側に体を捻った。



ガドンガルの右側、正面、左側の三方向から同時に兵士が切りかかってきた。



しかし、その兵士達の剣がガドンガルに触れることはなかった。



斬りかかった兵士達の目の前で竜巻が起こった、いや、竜巻が起こったように感じた。



それが、ガドンガルに斬りかかった兵士が感じた最後の感覚だった。



ガドンガルは、ハルバートの攻撃範囲に兵士が入った瞬間に捻った体を開放した。



竜巻のような勢いでハルバートが兵士達の体を通り過ぎて行く。



その竜巻の前では、鉄製の鎧でさえ、何の意味も無かった。



残ったのは、地面に未だ立っている人間の下半身だけだった。



あまりの凄まじい攻撃にガドンガルに突進していた兵士達の足が止まった。



その兵士達の着ている鎧の紋章にガドンガルは気付いた。



「おぬし等、テトリナ子爵の兵達か。」



ガドンガルの声には、怒りも悲しみも含まれていなかった。



ただ、事実を確認しているだけだった。



兵士からの返答はなかった。だが、ガドンガルにとっては、テトリナ子爵の兵とわかっただけで十分だった。



「生きておる奴は、ハルム村方面に逃げろ!」



再び、地下空洞の中にガドンガルの声が響き渡る。



この地下空洞にある出口は、基本的にケイティート子爵方面かエストラ男爵領ハルム村方面か、ガジール山脈の地上に出る3つだけだった。



この中でケイティート子爵方面は、兵士がケイティート子爵の手の者ということで却下され、ガジール山脈の地上は地下空洞から臭う血のにおいで魔獣が集まることが予想されるので却下され、残されたのはエストラ男爵領ハルム村だけだった。



そして、ガドンガル自身も、ハルム村方面の出口がある坑道の方へと走り出した。



ガドンガルの目の前に現れる兵士は、悉く上半身と下半身を真っ二つにされ無残に地面に転がった。



そして、ガドンガルは、ハルム村に続く坑道の入り口の前で立ち止まり振り返った。



「坑道まで来れば、ワシがこれ以上兵士は通さん!死ぬ気でここまで来い!」



ガドンガルの言葉を聞いた生き残りのドワーフ達は、戦って傷を負いながらも、必死に坑道へとたどり着く。



ガドンガルは、坑道に近寄ってくる兵士達を躊躇い無く殺し続けた。



20人ほどのドワーフが坑道の中へと消えた後、地下空洞の中に見えるのは、捕まったドワーフと死んだドワーフのみだった。



「お前達は、馬鹿ですか?何をまともに戦っているのですか。距離をとって弓で殺しなさい。」



全身を漆黒の鎧で包んだ騎士が、ゆっくりとガドンガルの立ち塞がっている坑道へと近づいて来た。



その男が着ている鎧を見て、初めてガドンガルの目に感情が表れた。



「その鎧は・・・まさか・・・アダマンタイトか!」



「さすがドワーフですね。アダマンタイトにすぐ気がつくとは。」



漆黒の鎧の男は、ガドンガルを遠巻きに囲っている兵士達の集団を抜け、ガドンガルのハルバートの攻撃範囲まで歩を進めた。



「攻撃してこないのですか?」



漆黒の鎧の男はフルフェイスのため表情は分からないが、明らかにガドンガルを馬鹿にした声だった。



「戦いは鉱物で決まるのではないぞ。」



ガドンガルは、力いっぱいハルバートを漆黒の鎧の男の胴目掛けて振るったが、ハルバートが当たったのは、アダマンタイトの鎧ではなく、今の今まで持っていなかったはずのアダマンタイトの盾だった。



ガアアーーーン、という音が響き、ガドンガルのハルバートは、アダマンタイトの盾に跳ね返された。



「ま、まさか・・・リング化・・・か。」



「さすがドワーフ。リング化も理解していただけるとは、この装備のよさを分からない者が多くて自慢しがいが今までなかったんですよ。」



漆黒の鎧の男の右手にはいつの間にか漆黒の剣が握られていた。



そして、その剣を振り下ろした。



ガドンガルは、左手の盾で防ごうとするが、盾を真っ二つにされた上に左腕を軽く切り裂かれた。



「くっ。」



ガドンガルは、わずかに下がりながら盾で受けたため、左腕を落とされなくてすんだのだ。



「あなた達、何を見とれているんですか。私に矢が通ることはありえませんから、気にせず、私達目掛けて矢を放ちなさい。」



ガドンガルを遠巻きに囲んでいた兵士達が、漆黒の鎧の男の言葉で弓を構えた。



「お主、名前は何と言う?」



漆黒の鎧の男は、少し考え込んだように見えたが、「まあ、いいでしょう。どうせ、あなたは死ぬのですし。私の名は、サイラス伯爵家三男のハインリヒ。よく覚えておいて、あの世で他のドワーフ達に自慢しなさい。」と答えた。



「サイラス伯爵家三男ハインリヒか・・・。覚えておこう。ちなみに、ワシもいいことを教えてやろう。」



「どうせ、しょうもないことでしょうが、言い残す言葉として聞いてあげますよ。」



サイラス伯爵家三男ハインリヒの声には、勝利を確信した自信に溢れていた。



「ドワーフの作る坑道にはな、秘密の仕掛けがある。こういうふうにな。」



ガドンガルが、ハルバートを思いっきり坑道の壁に叩きつけた。



「何を・・・、放ちなさい!」



初めて焦った声を出すハインリヒ。



ガドンガルは、そんなハインリヒに構わず、ハルバートを叩きつけてすぐに、坑道の奥へと走り始めていた。



そんなガドンガルの背中に数本、放たれた矢が突き刺さった。



しかし、ガドンガルは走るのをやめない。



ゴゴゴゴゴゴゴゴオゴゴゴゴッゴゴオゴゴゴオゴオーーーー



という音と共に、坑道の入り口部分が上から崩れ落ちた。



後に残されたのは、呆然とした兵達と体中から怒りの雰囲気を出しているハインリヒだけだった。


登場人物


ガドンガル・・・元『抗う心臓』のメンバー。強いです。


ガドリコ・・・ガドンガルの息子。・・・反応が無い。ただの屍のようだ・・・。(これ書いたら反感かうような気がしないこともなかったんですけどね・・・。とりあえず、先に謝らせていただきます。我慢できませんでした、ごめんなさい。)


ハインリヒ・・・サイラス伯爵の三男。パパにアダマンタイトの鎧・兜・盾・剣をおねだりした。今回、何故かテトリナ子爵の兵に同行していた。って大した謎ではありません。


アダマンタイトの武器・防具・・・前にサイラス伯爵領サイラスの武器屋でエルダが売った物。というわけで今回の問題の7割はエルダのせい。・・・はさすがに言いすぎ。少なくともハインリヒはガドンガルの攻撃が見えていたというわけで・・・まあ、アダマンタイト以外で受けられるかは、また別の話。


ハルム村・・・エストラ男爵領エストから東に馬車で1時間ほど行った村。詳しい説明はこの次の話で。


テトリナ子爵領・・・エストラ男爵領の東、ガジール山脈の麓にある領地。テトリナ子爵はガジール山脈に勝手に住み着いていたドワーフとの取り引きによって結構ガッポガッポ儲けていた。


ガドンガルの叫び・・・心の奥底に深く染み入る。演歌を歌わせたら、ミリオンヒット間違いなし。


ガドンガルに最初に体を真っ二つにされた兵士・・・名前は、フリット。昨日、子供が産まれたばかり。奥さんに帰ったら名前を付けるからねと言って出てきた・・・。


ガドンガルにトイレの中で柄で殴られた男・・・名前は、コント。博打大好きな兵士。皆に嫌われている。訓練をサボる。お金は返さない。本当にどうしようもない奴だが、命は助かった。


人生・・・不条理の塊。いい奴が長生きするとは限らない。まあ、ドワーフ殺してる時点で子供産まれようがいい奴じゃないけどね。(誰のせいだという突っ込みは受け付けませんが、あえて言おう!ごめんなさいと!)



こんな虚言を含んだ登場人物紹介を書くのに20分以上かけている作者・・・本当にアホだと思う。

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