92 ガジール山脈のドワーフ
とりあえず、説明回ですので、適当に読んでもらえたら。
説明が長くなりすぎましたので。
アリステーゼ王国の北に位置するテトリナ子爵領の北側にはガジール山脈が脈々と連なっていた。
テトリナ子爵領の範囲は、ガジール山脈の麓までである。
というのも、このガジール山脈は、アリステーゼ王国とガジール山脈の北側にあるキワール帝国がその領有権を主張しているため、王国の一領主では手に余る土地だからである。
それ以外にもガジール山脈の奥地には、ワイバーンなど平地とは違う強い魔物がいるため、奥まで入ることは出来ず持っていても仕方がないという理由もあった。
そのため、アリステーゼ王国では、この土地を国王直轄地としているが、王族がこのガジール山脈に立ち入ったことは歴史上なかった。名目上の国王直轄地である。
ちなみに、アリステーゼ王国とキワール帝国は、ガジール山脈の領有権を主張しているが、直接戦うには険しい上に魔物の多いガジール山脈を越えなければいけないため、将来のために領有権を主張しているだけであり、実際にその領有権が公式の場で争われたことはなかった。
そんな人間ではとても住めないガジール山脈に集落を作っている種族があった。
種族名は、ドワーフ。部族名は、ガ族であった。
ドワーフは、部族名が最初にくるように名前をつけており、例えば、エストラ男爵領エストにいるドワーフのグンゾウは、正式にはグ・ンゾウであり、部族名がグ、名前がンゾウであった。
ドワーフは基本的に部族単位で動き、山から山へと移動していくために、人間のいう国と言う概念が薄い種族でもあった。
唯一、現在確認されているドワーフの王国は、アリステーゼ王国の東に位置するシャナール聖王国の南にある、この大陸最大級の山が連なるエラベント山脈の地下にあると言われているが、このドワーフの国と交易があるのはシャナール聖王国だけであり、その実態はシャナール王国以外は掴めていなかった。
また、ドワーフの気性は、自分勝手というのがピッタリと当てはまり、グンゾウみたいに個人で世界中を動いている者も多く存在していた。
このあたりが、ドワーフがエルフと対比される所でもあり、エルフはドワーフとは逆に協調性にすぐれた種族と言われていた。
ただ、エルフの場合は、あくまでエルフという種族内での協調性であり、他種族との協調性は皆無と言ってもよかった。他種族との協調性という面では、ドワーフの方が優れていると言えた。
よく森に住むエルフと穴を掘り地中に住むドワーフとは、仲が悪いと言われているが、実際にはそんなことはなく、森と地中とでは関わること自体が少ないため、関わりの少ない種族同士というのが正確な表現であった。
むしろ、現在は、シャナール聖王国の東に位置する大森林地帯に王国を作っている獣人の王国と同じく大森林地帯に国を作っているエルフの国とが戦争状態にあり、そういう意味では獣人とエルフの方が仲が悪いと言えた。
ただし、これは、あくまで大森林地帯の中の話であり、人間の国にいる獣人とエルフは冒険者として同じギルドに在籍していたりと普通の関係であった。
ガジール山脈の麓から坑道を通り、山をひとつ分越えた先にドワーフの部族であるガ族が住んでいる地下空洞があった。
地下空洞と言っても、天井は網目状に空が見えるように地上と繋がっており、これは、ドワーフが坑道を掘って様々な鉱石を採掘する他に鍛冶仕事もするためであり、山からの吹き降ろしの風が網目状の地上を抜け地下空洞に入り、洞窟内に新しい空気が行き渡るようになっている。
鍛冶仕事のように火を使う仕事は、密閉された空間では一酸化炭素中毒を引き起こしてしまうからであるが、ドワーフはそんなことはまったく知らないが、どのドワーフも経験上、いや、生まれた時からそういうことを理解している種族なのだ。
また、この地下空洞には地下水が流れており、その水を様々なことに利用していた。
ちなみに、地下空洞とは言っているが、かなりドワーフの手が加えられており、網目状に見える天井もしっかり石材で補強されており、太い柱が何本も立っており、まず崩れ落ちるという心配はなかった。
ここで掘り出された鉱物(主に鉄だが)は、自分達で使う以外は、定期的にアリステーゼ王国のテトリナ子爵領の商人達が買い取りに来ており、そこから様々な場所に運ばれているのだが、ドワーフ達に興味はなかった。
何かを作ることにはことには異常な執念を燃やすドワーフだが、それを売ることにはあまり興味がないのだ。
実際、アランドベル大陸の商人組合に所属している商人の中にドワーフはいなかった。ただ、グンゾウのように何かの目的のためにお金を稼ぐため、商人に雇われているドワーフは存在していた。
基本的に、穴を掘って、材料を手に入れて、材料から物を作り、酒さえ飲める生活が出来れば、ドワーフは満足なのだ。
ただし、何かを作るといっても、それは、自分が作りたい物を作るのであって、他人から命令された物を作るというのは自分勝手なドワーフの性に合わないらしい。
もし、命令されてやっているドワーフがいるとすれば、それは、酒を飲むために仕方なくやっていることがほとんどだった。




