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89 ディートヘルムは感謝する。ミヒャエルはプロポーズする。


「それぐらいにしておけ、2人共。」



王子達が入ってきたドアとは別のドアから、王子達の父親であり、アリステーゼ王国現国王であるイグナーツ・カミル・フォン・アリステーゼが入ってきた。



王子達は一斉に椅子から立ち上がり、直立の姿勢をとった。



イグナーツは、ゆっくりと上座の豪華な椅子に腰を下ろすと、王子達にも座るように促した。



「王子達は、母親がどうあろうと皆、余の大事な息子には変わりないことを忘れるな。」



「「申し訳御座いません。」」



ゲルハルトとミヒャエルは、頭を深く下げた。



「ゲルハルト。」



「はっ。」



イグナーツに声を掛けられ、ゲルハルトは再び椅子から立ち上がった。



「先ほどまでの会話を聞いておって、今回の件にそなたは向いてないと判断した。この部屋からの退室を命じる。」



「えっ?いや、はい、かしこまりました。」



ゲルハルトは、イグナーツの言葉の意味することを理解できなかったが、イグナーツの反論を許さないという表情を見て、素直に命令に従った。



ゲルハルトは、部屋のドアの前で再び一礼すると部屋を後にした。



ゲルハルトの後に続いて、ゲルハルト付きの騎士も出て行った。



(なるほど、この部屋は盗聴防止がかけられていると思ったけど、王が入ってきたドアの向こうの部屋には聞こえる造りなんだな。)



ディートヘルムは、イグナーツの言葉で先ほどまでの王子達の会話を聞いていたのだなと推測した。そして、それは正しかった。






イグナーツの話は1時間にも及んだ。



すでに部屋からイグナーツは去っており、残された王子達は放心状態で椅子に座っていた。



「皆さん、それではお元気でー。」



まず最初にミヒャエルが椅子から立ち上がり、部屋を出て行こうとした。



「おい、ミヒャエル。」



出て行こうとするミヒャエルをディートヘルムが呼び止めた。



「何ですかー?」



「・・・ありがとよ。」



ディートヘルムは、恥ずかしげにミヒャエルがいる方と違う方を向いたままで会議が始まる前の事に対するお礼を言った。



「何ですかー?」



ミヒャエルは、聞こえなかったのか、ディートヘルムに近づいてきた。



「だから、ゲルハルトの件、ありがとうって言ってんだよ。」



再び、ディートヘルムは明後日の方向を向いたままでミヒャエルにお礼を言った。



「何ですかー?」



ミヒャエルはさらにディートヘルムに近づいて来た。



「・・・お前、絶対聞こえていただろ?」



ようやくミヒャエルの方を見たディートヘルムに「ああー、先ほどの『ありがとうございました。ミヒャエル様にはお礼のしようもございません。』という言葉は僕に対して言っていたのですねー。てっきり違う方向を見ていたので、4にしか見えない人間でもいるのかと思いましたよー。」と納得した表情で言った。



「ちっ、言葉は違うが、そういう意味だよ。分かったら、さっさと出て行けよ。」



恥ずかしそうに顔を赤くしながら、ディートヘルムは再び顔を背けた。



そんなディートヘルムのことなど関係ないとばかりにミヒャエルは話を続けた。



「実はですねー。僕、昨日、プロポーズを断られましてねー・・・。」



「「「プロポーズ????」」」



ディートヘルムだけでなく、ローマンとパスカルもミヒャエルの言葉に食いついた。



「そうなんですよー。」



「あ、相手は誰なんだい?」



ローマンの顔には驚愕と好奇心が半々張り付いていた。



「相手ですかー。恥ずかしいですねー。」



「いいから言えよ。」



ディートヘルムが急かす。



「生きてる人間なんですよね???」



パスカルのミヒャエルへの印象は相当悪いらしかった。



「生きてますよー。相手は3日前に出会った研究所の女性なんですけどー。彼女、平民なんですよねー。」



ローマンとディートヘルムとパスカルの3人は、ミヒャエルがなぜゲルハルトに絡んだのかを納得した。



自らが平民に恋したから、ゲルハルトの言葉がミヒャエル的に許せなかったのだろう。



前のミヒャエルはあんな風にゲルハルトに絡むことなどありえなかった。



「それは断るだろうね。」



ローマンは納得したとばかりに何度も首を縦に振っていた。



王族と平民など今のこの世界ではありえないのだ。というか、王子が王の許しを得ないで女性にプロポーズするというのも十分ありえないのだが。



「そうなんですよー。『王子は嫌。』とそれはもうー気持ちいいくらいバッサリと断られましたー。ショックでしたー。」



ミヒャエルの表情は、どう見ても平常時と変わらなかった。



「一応確認しておくけど、ミヒャエルの今の顔は、落ち込んでいる顔なんだよな?」



「そうですよー。人生初の落ち込みようですよー。」



「・・・どこがなの?」



パスカルは、ミヒャエルの顔を凝視したが、分からなかった。



「でもー、これで、彼女にもう1回プロポーズできるので、今はちょっと元気が出てきましたー。」



相変わらず、ミヒャエルの表情に変化は無かった。



「よ、よかったね。」



ローマンは困惑しながらも、ミヒャエルを祝福した。



「はい、良かったです。それでは、皆さん、もう二度と会うことは無いと思いますが、お元気でー。」



ミヒャエルは、それ以上は何も言うことなしに部屋を出て行った。



登場人物


イグナーツ・カミル・フォン・アリステーゼ・・・アリステーゼ王国第99代国王。59歳。


ローマン・ヴィリー・フォン・アリステーゼ・・・王位継承権第3位の第3王子。30歳。


ディートヘルム・イーヴォ・フォン・アリステーゼ・・・王位継承権第4位の第4王子。25歳。


ミヒャエル・ウッツ・フォン・アリステーゼ・・・王位継承権第6位の第6王子。22歳。


パスカル・ラルフ・フォン・アリステーゼ・・・王位継承権第7位の第7王子。15歳。


ゲルハルト・ギュンター・フォン・アリステーゼ・・・王位継承権第5位の第5王子。24歳。

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