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88 ディートヘルムは怒れない。怒れば、代わりに怒ってくれた人の行為を無駄にすることを理解しているから。


「何だ、変な臭いがするぞ、この部屋?」



再び、ドアが開き、男が入ってきた。



金色の短髪で、背はディートヘルムと同じくらい、体つきはディートヘルムよりやや太く、筋肉質だった。



「チッ、何だ、臭いと思ったら、平民が紛れ込んでいたのか。」



「やめなよ、ゲルハルト。」



ローマンがたしなめたのは、ディートヘルムの1歳年下の24歳である王位継承権第5位を持つ第5王子ゲルハルト・ギュンター・フォン・アリステーゼだった。



ゲルハルトは、臭いの元であるミヒャエルではなく、ディートヘルムを睨んでいた。



「馬鹿は死ななきゃ治らないっていうが、お前の場合は、死んでも直りそうにねぇーな、ゲルハルト。」



「気軽に俺の名を呼ぶな、平民。失礼だぞ。平民なら平民らしく、俺の前に跪き、俺の靴でも舐めていろ。」



「いい加減にしろ、ゲルハルト。ディートヘルムは、僕達の大事な兄弟の一人だ。ディートヘルムを侮辱するなら、僕が相手になるよ。」



今までに見せたことのないような表情でゲルハルトを睨みつけるローマン。



「はいはい。さすがに30歳にもなって独身を貫く王子サマは言うことが違いますね。兄弟兄弟って俺達は、兄弟であって兄弟じゃないだろ?むしろ、王位を争う敵同士だ。馴れ合ってどうするってんだよ?」



「王位は争うものではないよ、ゲルハルト。守っていくものだ。」



「ハハハハハッ、そんなだから、王位継承権第3位にもかかわらず王座争いに名前も挙がってこないのさ。」



「それが僕の誇りだよ。」



「意見の相違だな。」



ローマンとゲルハルトは、30cmも離れてない距離でにらみ合う。



ローマンに怒りの矛先を取られたディートヘルムは、頭をかきながら、「ローマン兄貴、いいよ、ありがとう。そんな奴を相手にしたら、兄貴の株が下がっちまう。」とローマンの肩に手を置いた。



「さすが平民。逃げ足の早いことだ。」と言いながら、ゲルハルトは、会議室内のいつもの席に着いた。



「ディートヘルム・・・。」「ディートお兄ちゃん・・・。」



ローマンとパスカルが、心配そうにディートヘルムを見つめるが、ディートヘルムは無理やり笑顔を作り「大丈夫だ。」と言いながら会議室の席に着いた。



その後を追って、ローマンとパスカルも席に着いた。



ゲルハルトがディートヘルムのことを平民と呼ぶのには理由があった。



ディートヘルムの母は、領地を持っていない王宮付きの男爵家の娘であり、その男爵家は平民よりも貧乏なくらい落ちぶれていたのだ。



母は双子だったのだが、王都の貴族の間では、有名な美人姉妹だった。



その噂を聞いたディートヘルムの父であるイグナーツ国王の目に留まり、妾妃として後宮に招かれたのだ。



その際、ある程度、身分を合わせる為に、母は、王宮付きの伯爵家に養子に入っていた。



そのため、名目上は、ディートヘルムは、その伯爵家の身内ということになるのだろうが、母が死んでいる今となっては、会うことすら無くなっていた。



・・・ディートヘルムの王都での悪評に巻き込まれてはたまらないとあえて避けているのかもしれないが。



そのため、ディートヘルムのことを嫌う貴族などは、ディートヘルムのことを平民と侮蔑して呼んでいた。



ちなみに、ディートヘルムの母は双子の姉なのだが、妹の方は、姉のおかげで社交界に呼ばれるようになり、そこで出会った領地持ちの貴族と結婚したらしいという話は聞いた事があった。



「あのー、ちょっと聞きたいのですが?」



読んでいた本を下げて、ミヒャエルがゲルハルトを見ていた。



「何だ、ミヒャエル?」



「なぜ、4を平民と呼ぶのですか?確か、名目上は4は伯爵家の娘の子のはずですが?」



ディートヘルムは、心の中で(お前、4と呼ぶ割に詳しいな)と思っていたが、これ以上ゲルハルトと関わりたくないため黙っていた。



「ふん、名目上はな。現実は、平民以下の生活をしていた男爵家だ。俺の母は、侯爵家出身。俺から見れば平民と変わらん。」



「なるほどー。母の出身以下の爵位持ちは皆、平民と変わらないという考えなのですねー。」



ミヒャエルは、「なるほどー、なるほどー。」と繰り返していた。



そんなミヒャエルにゲルハルトは、興味もなさそうな表情で「そうだ。」と断言した。



「ふむふむ、でしたら目障りですから、僕の目の前から消えてもらえますか、平民。」



「なっ!」



ミヒャエルの視線の先には、ゲルハルトがいた。



ゲルハルトは瞬間的に怒り、椅子から立ち上がっていた。



「あれー、何で怒るのでしょうか?僕の母は公爵家出身ですから、クズの母親より爵位は上ですけどー、僕、何か間違えましたかね?」



「この俺様を平民呼ばわりの上に・・・クズだと・・・・。」



ゲルハルトの顔には、今にも切れそうなほど血管が浮かんでいた。



先ほどとは違い、ローマンもディートハルトもパスカルも誰も止めに入らなかったというか、ローマンはミヒャエルの言葉を聞いて、必死に笑いを堪えている表情だったし、ディートヘルムは無表情だが明らかに口の端が先ほどより上がっていたし、パスカルは、後ろを向いて口を隠して小声で笑っていた。


登場人物


ローマン・ヴィリー・フォン・アリステーゼ・・・王位継承権第3位の第3王子。30歳。


ディートヘルム・イーヴォ・フォン・アリステーゼ・・・王位継承権第4位の第4王子。25歳。


ミヒャエル・ウッツ・フォン・アリステーゼ・・・王位継承権第6位の第6王子。22歳。


パスカル・ラルフ・フォン・アリステーゼ・・・王位継承権第7位の第7王子。15歳。


ゲルハルト・ギュンター・フォン・アリステーゼ・・・王位継承権第5位のクズ。ゴミにつける年齢はねぇー!



全員、母親が違います。

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