表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/234

86 ディートヘルムは絡まれる。パスカルは夜毎にカラむ。


3時15分前には、ディートヘルムは今回呼び出された国王の私的な場合に使う会議室の中にいた。



私的と言っても、国同士の打ち合わせもできるような部屋であり、部屋の真ん中には大きく豪華な長方形のテーブルがあり、上座に豪華な椅子が1席、両側には椅子が合わせて20席、そして下座には椅子が3席座れるようになっていた。当然、上座の席は国王が座る席であり、勝手に座ることは、例え王子であっても許されてはいなかった。



それ以外にも、部屋の隅には高級皮を使ったソファーが備えてあり、壁にはアリステーゼ王国を代表する画家の絵画がかけてあった。



「グラハム、この壁に飾ってある絵なかなかいいな。」



ソファーに深く腰掛けていたディートヘルムの言葉に、壁際で直立の姿勢で立っていたグラハムは驚いた表情になった。



「何をそんなに驚いてんだよ?」



「いえ、酒と女にしか興味がないような駄目王子の典型であるディートヘルム王子が、まさか芸術作品を見てそんなことをいうようになるとは・・・。長年の私の苦労が報われたようでございます。」



目頭を押さえ、俯くグラハム。



「相変わらず、失礼な奴だな。俺だって芸術作品に興味くらいあるさ。・・・ところで、この絵、売ったらいくらぐらいになるんだ?」



「・・・・・はぁーーーー。」



グラハムは、深く長いため息を吐き、頭を数回左右に振った。



「な、なんだよ?普通、気になるだろうが。この絵を売れば、娼館に何回通えるかとか、高級酒何杯分の値段とか、気にならない方がおかしいだろ?」



「失礼、王子。私は只今、今までの己の不甲斐なさを深く嘆いておりますので、話しかけないでもらえますか?」



ディートヘルムに冷たく言い放つグラハム。



「なんだよ。」



ディートヘルムは、グラハムの言葉にふてくされた。



その時、応接室のドアが開き、王位継承権第7位の第7王子のパスカル・ラルフ・フォン・アリステーゼが入ってきた。



パスカルは、今年15歳になったばかりのまだ幼さをその顔に残すかわいいという言葉がピッタリと当てはまる少年だった。



身長は170cmちょっとで、やせており、綺麗な金髪の髪は、肩の上まで伸びている。



そのキラキラとした青い瞳で見つめられると、思わず抱きしめたくなるとメイドの間で人気の高い王子であった。



アリステーゼ王家の王位継承権は、王子が15歳になった時に自動で与えられるのだが、パスカルは、その仕組みにより、今年、王位継承権第7位が与えられていた。



「お兄ちゃん。」



パスカルは、ソファーに座るディートヘルムを見つけると、まるで子犬が隠れていた御主人様を見つけた時のように駆け足でディートヘルムの胸に飛び込んだ。



「うっぷ。こら、パスカル。お前は俺の肋骨をへし折るつもりか?」



ディートヘルムは、胸に飛び込んできたパスカルを受け止めると、優しくその髪を撫でてやった。



「ごめんなさい。お兄ちゃんと久しぶりに会えてうれしかったものですから。」



ディートヘルムの胸に頬をスリスリしながら、ディートヘルムから離れようとはしなかった。



パスカルの入ってきた後には、パスカルのお付きの騎士である女騎士のエミーリアがディートヘルムに一礼して、グラハムの横の壁際に立った。



ディートヘルムは、パスカルを抱きしめたまま、軽く右手を上げて、エミーリアの礼に対して応えた。



「それにしても、お前まで国王陛下に呼び出されたのか?何か悪戯でもしたのか?」



「わかりません。今朝、急に言われたものですから。・・・怒られるのでしょうか?」



パスカルは、上目遣いで大きな目をウルウルとさせてディートヘルムを見つめた。



「失礼ですが、ディートヘルム様、私達のパスカル様は、ディートヘルム様とは違い国王陛下に怒られるようなことなど絶対致しません。一緒にしないで頂きたい。」



壁際に立っていたエミーリアが、一歩前に出て、ディートヘルムを睨みつけた。



「駄目だよ、エミーリア。ディートお兄ちゃんにそんな口聞いたら、メッだよ。」



「失礼致しました。」



エミーリアは、少し頬を赤くして元いた位置に戻った。



「・・・パスカル、お前、全然かわらないよな・・・。」



「本当?お兄ちゃんに褒められちゃった。」



ディートヘルムは、少しは男らしくなれと言いたかったのだが、なぜかパスカルは褒め言葉と受け取ったようだった。



「・・・やっぱり、お付きの騎士が女だとどうしてもこうなるのかな?」



心で思っていたことがつい口に出てしまったディートヘルムは、やばいと気付き、壁際のエミーリアを見た。



案の定、プルプルと肩を震わせ、怒りに満ちた表情をしていた。



助けを求めて、エミーリアの横に立っているグラハムを見たが、グラハムは巻き込まれてはたまらないとばかりにエミーリアの立っている方とは逆方向に顔を向けていた。



「失礼ですが、パスカル様は、私共、薔薇騎士団の元で立派に成長しておられます。日々、どのような仕草が女性に受けるのかなどを我々がどれだけ苦労して教えこんで育て・・・失礼、毎日御学業にせいをだされて成長されております。変わらないなどとは、その言葉、薔薇騎士団として強く抗議致します。」



「・・・どうりでかわいく育ってるわけだ。もう少し男らしくした方が、これからのパスカルのためにもいいと思うんだけどな?」



これから、嫌でもパスカルは身体的に男らしく変わっていく。そのことを考えると、今のままでは将来パスカルが苦労すると思い、エミーリアの怒りをさらに買う覚悟でディートヘルムは言った。



「失礼ですが、ディートヘルム様は、夜のパスカル様の男らしさを知らないから、そのようなことが言えるのです。それはもう獣のようで・・・。失礼致しました。」



エミーリアの顔には恍惚が浮かんでいた。ディートヘルムとグラハムの顔には呆れが浮かんでいた



「やめてよ、エミーリア。僕、恥ずかしいよ。」



両手で顔を覆い、左右にいやだいやだとばかりに振るパスカル。その姿からは、とても夜の獣の姿など想像できなかった。



王位継承権を持つ王子にはお付きの騎士がついているのだが、この騎士は、王子を団長とする騎士団の騎士達である。



ひとりの王子につき1,000人規模の騎士団が与えられているのだ。



もし、付いている王子が将来、王になった場合には、そのまま親衛隊になる騎士団である。



王子が戦場に行った場合には、常に王子を守る騎士団でもあった。



薔薇騎士団は、王子お付きの騎士団としては、初めての女性だけの騎士団であった。



どういう意図があって女性だけの騎士団を国王がパスカルのお付きにしたのかは理解できないが、これは失敗ではないのかと思うディートヘルムであった。


登場人物


ディートヘルム・・・王位継承権第4位のアリステーゼ王国第4王子。25歳。パスカルとは母が違う。


グラハム・・・ディートヘルムお付きの騎士。


パスカル・ラルフ・フォン・アリステーゼ・・・王位継承権第7位のアリステーゼ王国第7王子。15歳。かわいい顔をしているが、夜は獣らしい。決して、狼男という意味ではない。


エミーリア・・・パスカルのお付きの騎士。女性だけの薔薇騎士団に所属しているらしい。『パンプキン・サーカス』のエルダ・リ・マルクーレと同じ匂いのする女性。パスカルのお付きに薔薇騎士団がつくことになった理由のひとつに彼女の尽力があったとかなかったとか。真相は闇の中である。なお、このことを暴こうとしたアリステーゼ王国新聞の敏腕記者が水死体として発見されたこととの関係は現在調査中につき黙秘させていただく。(注:アリステーゼ王国新聞などは存在しません。)


アリステーゼ王国の有名な画家に描かれた絵・・・夜になると中に描かれた人物の目が動くと噂のある絵。メイド達は怖がって近寄ろうとはしない。なお、この部屋で隠れて逢引をしていた者達の証言によると、そういうことをしていると、どこからともなく、興奮したような息遣いが聞こえてきたとかこないとか・・・。この件について調べようとした兵士の一人は、次の日、王城勤務から国境付近の過酷な勤務に飛ばされた。それ以来、誰も、このことに触れようとはしない。アリステーゼ王宮内のアンタッチャブルである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ