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84 ディートヘルムは残念ながらツイてない。


「おはようさん。」



ディートヘルムは、王城へ入ろうとするが、「ちょっと待ってください。」と門番に止められてしまった。



「何だよ?」



「手にお持ちの荷物を確認させていただけますか?」



「ただのモーゼの実だぞ?」



ディートヘルムが手に抱えていた箱を門番に渡した。



門番は、受け取った箱を開け、中を確認した。



「確かにモーゼの実ですね。」



「だろ?・・・どこへ持っていく気だ?」



門番は、箱をそのまま門番の休憩所へ持っていこうとしていた。



「え?当然、休憩所ですけど?」



「それ、俺が買ってきた物だぞ?」



「はあ、知っておりますが?」



「だったら、何で門番の休憩所に持っていこうとするんだよ?」



「後で食べるためですが?何か問題でも?」



「大ありだろ?何で俺が買ってきた物をお前達が食べるんだよ?」



「城の持ち込み規定は御存知ですよね、ディートヘルム王子?」



「・・・チッ。」



ディートヘルムは、城の持ち込み規定を思い出して舌打ちした。



王城へは、基本的に王室御用達以外の商人が持ち込んだ食べ物以外は持ち込みが禁止されていた。



当たり前だが、勝手に持ち込んだ物に毒が入っていてはいけないからだ。



持ち込んだ本人が死ぬのはもちろん、持ち込んだ物と元から王城にある物を交換されるのも防ぐためもあった。



「いつもは見逃してくれるじゃないか!」



ディートヘルムは不満そうに門番に文句を言ったが、門番は当然のように「いつも見逃してあげてるから、今回は見逃さないんですよ。」と言い切った。



「何で、今日なんだよ?俺はモーゼの実が好物なんだ。見逃してくれよ。」



「そうですか。奇遇ですね。私もモーゼの実が好物なんですよ。」



「・・・。」



「しかも、私の安月給では、なかなか手が出ないんですよ。」



「・・・。」



その時、ディートヘルムの後ろを第三王子のローマンが何か箱を持って通り過ぎて行く。



ローマンの後ろには、ローマンお付きの騎士達がついており、その騎士達も箱を抱えていた。



「おはよう。こんな朝早くに珍しいね、ディートヘルム。」



「おはよう、ローマン兄貴。何持ってるんだい?」



「ああ、今朝、モーゼの実が大量に届いてね。みんなにもあげようと思って持ってきたのさ。」



「相変わらず、ローマン兄貴は優しいな。上の2人にその優しさを分けてあげて欲しいくらいだよ。」



「そんなことを言うものではないよ、ディートヘルム。私の上の二人は、私とは違い、現実的にこの国を背負わなければいけないのだよ。その重圧を思えば、多少他人に厳しくなるのも仕方がないというものだよ。」



ローマンは、王位継承権3位であり決して王位継承権が低くくはないのだが、現実的に見て、現在戦争をしていない状況で王位継承権の1位と2位が両方いなくなる確率は非常に低かった。



「俺は、王には優しさも必要と思うけどね。」



「そんなことを言っては駄目だよ、ディートヘルム。冗談でも、上の2人が聞いたら何と思うか。我々は付け入る隙を他人に見せてはいけないのだよ。」



ディートヘルムは、「分かってるさ。」と言って、両手を軽く上にあげた。



ローマンが言っているのは、王位継承権の低い王子を焚きつけて、上の王子達を亡き者にしようと唆す者が現れるということを示唆していた。



上の2人が王位を継いだのでは不都合な貴族、もしくはアリステーゼ王国の内乱を狙う他国の間者がそれにあたった。



「我々、下位の王位継承者は、王位継承など考えずに兄を盛り立てることを考えていればいいのだよ。」



「それは分かってるさ。だから、俺はわざと遊んでばかりいるんだからね。」



「ものは言い様だね。」



ローマンとディートヘルムは、お互いに顔を見合わせて笑いあった。



「それでは、私は行くよ。」



ローマンとお付きの貴族達は、王城の中へと入っていった。



門番達は、ローマンの後ろ姿に頭を下げていた。



「・・・ところで、今、ローマン兄貴は、大量のモーゼの実を抱えて入ったわけだが?」



「そうでしたか?残念ながら、私共は箱の中身を確認しておりませんでしたので何が入っていたかは分かりかねますが?」



「・・・もしかして、俺以外の王子達は、門番に確認されることはないのか?」



「レアな体験をされてよかったですね。」



「そこは否定しろ。」



「否定できることでしたらしますが、実際にディートヘルム王子だけですからね。」



「まじでか・・・。」



ディートヘルムは悲しそうに俯いた。



「元気出してください、ディートヘルム王子。」



門番は、悲しそうなディートヘルムを慰めたが、ディートヘルムに「誰のせいだよ。」と言われ、笑った。



「今に見てろよ、お前達!俺が王位を継いだら・・・。」



ディートヘルムは、顔を上げ、門番たちを指さした。



「私共を首にしますか?」



門番達の表情が真剣みを帯びた。



「違う!大規模なモーゼの果樹園を国家事業として作って、今のモーゼの実の値段を三分の一まで下げて、お前達にも買える様にして、俺が、モーゼの実を気軽に王城に持ち込めるようにしてやるからな!」



「「「・・・・ハハハハハハハハハハー。」」」



門番達は一斉に笑った。



「今に見てろよ!」



ディートヘルムは、舌を出しながら、王城の中へと歩き出した。



「私共が生きている間にお願いしますよ。」



門番の言葉が、王城に入るディートヘルムを追いかけてきた。



ディートヘルムは振り返り、「長生きしろよ!」と言うと、再び歩き始めた。



門番達は、そんなディートヘルムの後ろ姿を笑顔で見送っていた。


登場人物


ローマン王子・・・王位継承権第3位のアリステーゼ王国第3王子。30歳未婚。王子達の争いを避けるため、子供を作らないと決心している。そのため30歳にもなって結婚していない。ディートヘルムは、それほど深くは考えずにただ結婚してないだけ。ローマン王子は、超いい奴の予定。


ディートヘルム王子・・・王位継承権第4位。アリステーゼ王国の第4王子。25歳。モーゼの実が好き。


門番・・・モーゼの実強奪犯。犯人はお前だ!俺がやりましたまでがテンプレ。ディートヘルムも好き。モーゼの実が好きなのは確かだが、実はディートヘルム付きの騎士であるグラハムから迷惑を掛けているので、ディートヘルムが持って帰って来た物で好きな物があれば、取り上げていいと言われている。さすがに、いくら仲良くても、門番の一存で王子から取り上げることはムリゲー。

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