7 『ヒロ』 アレクシスとシーターと出会う
「あれ、ジュリさんいないよ?」
新たに入ってきた冒険者らしき2人組が、冒険者組合のカウンターの前に立っていた。
「あっ、シーター、アレクシス、こっちよ。」
ジュリが、冒険者組合のカウンターの前に立っていた2人組に手を振る。
「ジュリさん、はいこれ。」
シーターが、手に持っていた紙をジュリへと渡した。
「へえ~、さすがシーターとアレクシス。今日は、マイナーブルを狩ってきたの?」
「そうなんだけど・・・喜んでもらえるかと思ったんだけど、解体のマイタスさんが、凄い嫌そうな顔してたんだよね。」
「あ~・・・それは、しょうがないかもね。マイタスさん、今日、11頭目のマイナーブルだから。あっ、お金取ってくるから、座って待ってて。」
ジュリは席を立ち、冒険者組合のカウンターへと歩いていく。
シーターは、ジュリが座っていた席の隣に座り、アレクシスは、「いいか?」とヒロの隣の席を指さし、「どうぞ。」とヒロが答えると、ヒロの隣の席に座った。
アレクシスはいわゆるイケメンで金色の短髪、身長も高く、立派な体つきをしており、ヒロは実はちょっとビビッていたが、それを表情に出すことなく、いかにも怖がっていませんよとみせることには成功していた。
(6年間、家でぼっちだった俺にこの状況は厳しすぎるだろ?)
隣にさえ座られなければ、別にどこかの食堂に入ったと思えば気にしなくてもすむが、さすがにすぐ隣だと嫌でも意識してしまう。
しかも、アレクシスの見た目は、元いた世界の白人と似ていて、引きこもりで久しぶりに家を出てみたら、そこはアメリカでした並にヒロにとって困る状況だった。
「メグちゃん、私とアレクシスにエール2杯持ってきて。」とシーターが注文し、エールをメグが持ってくる前にジュリが冒険者組合のカウンターから戻ってきた。
「はい、マイナーブル1頭分の金貨1枚と銀貨20枚。」
「ありがとう、ジュリさん。」
シーターは、ジュリからお金を受け取り、腰の横にぶら下げている小袋にお金を入れた。
「そう言えば、シーターとアレクシスは、食事の注文はしたの?」
「ううん。まだだけど?」
「だったら、このヒロが、ホーンブルのステーキ奢ってくれるから、それにしなさいよ。」
「本当に!ありがとう。あっ、あなた、ヒロって言うんだ。私は、シーター。で、こっちの無愛想なのが、アレクシス。」
「どうも、ヒロです。」
人懐っこい笑顔を浮かべるシーターにやや戸惑いながらも、ヒロは頭を軽く下げた。
「アレクシスだ。よろしく。」
無表情なままで、アレクシスはヒロを見下ろしていた。
「ごめんね、ヒロちゃん。アレクシス、こう見えても悪気はないからね。ちょっと無愛想なだけで。」
メグがエールを2杯運んできて、シーターとアレクシスの前に置く。
ジュリが、「シーターとアレクシスにも、ホーンブルのステーキね。」とメグに注文して、メグは「わかった、ジュリお姉ちゃん。」と元気に戻っていく。
「それでは、乾杯!」
シーターが元気に声をあげ、4人はエールを飲み始めた。