78 『ヒロ』 世界の中心で「ご都合主義、最高!」と叫ぶ・・・そして、オーストラリアの警察に捕まり、事情聴取を受けるところまでが遠足だ。
エストラ男爵領エストの町を囲んでいる城壁の外では、多くの獣人達が疲れて座り込んでいた。
「全員分ありますから、並んでください。」
ヒロは、水を入れた大きな鉄製の鍋に『グランベルグX』という豚系の魔物の肉や腸などをその中に入れて、さつまいも、そして味噌を入れて味付けした料理を作っていた。
『グランベルグX』と味噌とさつまいもは、ヒロの『とめどない強欲の指輪』に入っていた物だ。
ヒロの『とめどない強欲の指輪』の中には、味噌や胡椒、塩、酒、さつまいもなどの野菜などいろいろな物も入っていた。
これは『グランベルグ大陸』内では交易品もあったので、それを大量に買っていたおかげであった。
やるからにはトコトン楽しむのがパンプキン・サーカス流であったので、交易品に限らず、服などの日常品も買えるだけ買い込んでいるのだ。
また、『グランベルグX』という豚系の魔物は、『グランベルグ大陸』内の特殊な環境に生息している魔物で、イベントで狩ることができた。
名前の通り、実際にある品種のパクリ、いやオマージュではっきり言って弱い魔物である。
出現するのは、宣伝を兼ねたイベントだけということで、お祭り好きの『パンプキン・サーカス』全員でそのイベントを荒らしまくった時のものである。
『グランベルグX』だけでなくイベントに参加したプレーヤーも狩りまくったので、しばらくペナルティーとしてイベント参加禁止されたのだが。
だったら、最初からプレーヤーへの攻撃禁止にしておけよとも思ったが、今ではいい思い出のひとつだ。
ただ、いくら大量にあると言っても、限界があるのでなるべく出さないようにしていたのだが、今回の獣人達がこの町に逃げてくるという問題になった時、食料の提供を求められたのだ。
持っていないと言って嘘を言っても良かったのだが、すでにエルダがこのエストの町のお偉いさん達にヒロがいろいろ持っていることを暴露していたので、それは不可能になっていた。
どうせ出すなら、味噌を使って豚汁のようなものにしてやれと半分どういう反応を示すのか面白半分で出してみたが、思いの外、好評だった。
新たに来た獣人だけに配るつもりが、今では町の住人まで列を成していた。
おかげでヒロは、休み無く料理をするはめになっていた。
「こっちで家の受付するから、まだ決まってない人は早く来てねー。早いもの勝ちだよー。」
少し離れた場所では、シーターが獣人達の家の受付をしていた。
獣人達は、しばらくの間は、家賃なしで家が借りれるらしい。
生活が落ち着いた後で家の大きさで決まった家賃を払うようになるらしかった。
シーターに聞いた話では、大体、1ヵ月で普通の家で大銀貨1枚から大銀貨5枚の間らしい。
日本円にすると、1万円~5万円ぐらいということだ。
エストみたいな田舎だからこれぐらいだが、王都などの大都市に行くとかなり家賃も高くなるのは日本と同じだ。
ちょうど、その時、そばにジュリがいたので聞いてみた。
「あれ?俺、宿屋に1日銀貨5枚の1ヵ月金貨1枚と大銀貨5枚払ってますよね?」
日本円にすると、1ヵ月15万円である。
「そうね。」
「家を借りると、1ヵ月大銀貨1枚から大銀貨5枚の間らしいですよ。」
「そうね。」
「・・・・。」
「そうね。」
ジュリは、決してヒロと目を合わせてくれなかった。
確かにヒロがいない間に部屋の掃除をやってくれているので、楽と言えば楽なのだが、何か違うと思わないこともなかった。
しかし、「そうね・・・それで?」と最後にジュリに睨まれて、ヒロは追求を諦めた。
ジュリの目は、Eランクの蛆虫冒険者の分際で私に何か文句あるのと明らかに語っていた。
ちなみにまだヒロがEランクなのには理由があった。
ランクを上げることのできるポイントが多い依頼がこのエストの町にはないのだ。
どうやら、ジュリが言うにはエストの町の近くで問題が起きた時は、まず最初に多くの冒険者の拠点となっているサイラスに依頼が行くようになっているそうだ。
しかも、個人的な依頼は、住人や商人が少ないエストではほとんどないと言ってもよかった。
そうなると、エストの冒険者は、魔物を狩って冒険者ギルドに買ってもらってお金を稼ぐしかなくなる。
この魔物を狩ることでは、ハンティングリストに載っている魔物を狩る以外はポイントの上昇は望めないのだ。
ポイントを上げるにはあくまで依頼を達成するしかない。
もしくは、古代文明の遺跡を発見するとかなりのポイントになるらしいが、これも常設依頼としてギルドからの依頼として張り出されている。
この場合は、発見した後から報告しても、依頼を受けて達成したと判断される。
古代文明の遺跡などは探そうと思って探せるものではないので当然と言えば当然だった。
「まあ、急いでランクを上げてもいいことなんてないわよ。」とジュリが慰めてくれたのは、この町で起きた奇跡とヒロは思っていた。
「そうですね。やっぱり基本は大事ですもんね。」
「そうよ。それにヒロがCランク以上になっちゃったら、私が奢らせたり、ボッタクッたりしにくくなるじゃない。」
「・・・。」
ジュリはやはりジュリだった。




