72 『ヤマト』 実は花魁だった弧月。んっ?弧月だった花魁?さてどちらでしょう?正解は【知りません】。
首都ゴードナーを出て1週間後、パルテの言った通り鉱山の町ガルバドに到着した。
ガルバドの町は、主に石造りだった首都ゴードナーとは違い、木で出来た小屋が立ち並ぶお世辞にも綺麗とは言いがたい町並みだった。
その町の中でも、唯一と言っていい3階建ての綺麗な宿屋の前に馬車は止まった。
「さあ、降りな。今日はここに泊まるよ。」
パルテと一緒にヤマトとサクラは馬車を降り、宿屋に入っていった。
宿屋の1階は、酒場になっていた。
「私は今から鉄を買いに行って来るから、あんたらは部屋に入っておきな。」
パルテは、部屋を取り、受け取った鍵をヤマトとサクラに渡した。
「ああ、わかった。・・・気をつけろよ。」
「・・・わかってるよ。」
ヤマトの言葉にパルテは微妙な笑いを浮かべて宿屋を出て行った。
ヤマトとサクラは、別々の部屋に入ったが、すぐにヤマトの部屋をノックする音が聞こえた。
ヤマトが出てみるとそこに立っていたのは、サクラだった。
「どうした?」
「あの・・・その・・・。」
もじもじして何か言いにくそうにしているサクラ。
「入るか?」
「はい。」
サクラは、ヤマトの言葉にうれしそうに頷いた。
「どうした?」
サクラを部屋に入れて、再びヤマトはサクラに聞いた。
「この宿屋、何か落ち着かないというか・・・。」
サクラは、部屋の中をキョロキョロ見回している。
「そうか?」
ヤマトは、特に何も感じなかったが、パルテのこともあり少し用心をしておくことに決めた。
ヤマトは、腰に差した刀を抜くと、「弧月。」と刀に呼びかけた。
床に魔法陣ができ、真ん中に銀色の毛の狐『弧月』が現れた。
「何か感じるか?」
弧月は、少しの間、辺りをキョロキョロしていたが、「コーン。」と鳴くと弧月の姿が銀髪の花魁のような姿へと変貌した。
「我らが主、ヤマト様、お久しぶりでありんす。」
花魁姿の弧月が頭をゆっくりと下げた。
「ああ、その姿では久しぶりだな。それで何かわかったか?」
「はい。盗聴の魔法がかけられておりましたので、結界を張って会話を盗聴できないように致したでありんす。」
「盗聴!」
サクラは弧月の言葉に驚いた顔をしていた。
ヤマトの表情は変わらなかった。
「不快でありんしたら、盗聴の魔法自体破壊することが出来るでありんすが?」
「いや、面倒事はごめんだ。このままでいい。あと、サクラが部屋に戻ったら、サクラの部屋にも結界を張っておいてくれ。」
「かしこまりましたでありんす。」
「あの、その・・・できれば、もう少しヤマトさんの部屋においていただきたいのですが?」
サクラは不安そうな表情だった。盗聴と聞けば当然の反応だとヤマトは反省した。
「ああ、すまなかった。好きなだけ居ていいぞ。」
ヤマトの言葉にサクラはうれしそうに頷いた。
「あと、パルテ達が帰ってきたらわかるか?」
「はい、我らがご主人様。わちきは風の流れにてわかるでありんす。」
「では、帰ってきたら教えてくれ。」
「わかりましたでありんす。」
パルテが帰ってくるまで、ヤマトとサクラは同じ部屋で過ごした。




