71 『ヤマト』 クルワラ共和国の首都ゴードナー
ヤマト達がマダラジャートと遭遇してから2週間が経過していた。
商隊はようやく目的地であるクルワラ共和国の首都ゴードナーに到着したところだった。
真っ直ぐ来ればもう少し早く着くらしいが、途中でかなりの町に寄ってきたので到着まで時間がかかったのだ。
途中で寄った町で運んでいる荷物を売るのかと思ったが、そういうわけではなくただ町によって、夜は酒場に飲みに出て、朝出発するということを繰り返していたので、何か理由があるのだろうとは思っていたが、ヤマトはあえてパルテには聞かなかった。
部外者である自分が踏み込まない方がいいだろうと思ったからだ。
ヤマトは、現在、首から上を包帯で隠していた。ヤマトがハーフエルフであるということを隠すためだった。
町に入るための検問の厳しい所では、包帯を取れと言われることもあったが、パルテが1枚の紙を見せるとそれも免除された。
「その紙は何が書いてあるんだ?」とパルテに聞いたら、紙を見せてくれ、「ケイティート子爵が一筆書いてくれたのさ。」と笑っていた。
荷物もケイティート子爵からの物と言っていたし、どうやらパルテはケイティート子爵と個人的な付き合いがあるらしいということをヤマトは感じていた。
「相変わらず、活気のない都市だね。」
パルテが、首都のゴードナーの通りを馬車で走っていた時に呟いた言葉だ。その言葉を言った時のパルテの表情は苦々しさに満ちていた。
都市は、中世ヨーロッパのような趣のある街づくりなのだが、通りにはほとんど人通りがなく、都市の至る所に立っていた。
「この都市には長居しないから、あんたら2人は外に出ないようにね。」
馬車が、ある建物の前で止まると、パルテは笑顔を作って馬車を降りていった。
馬車の窓から覗いていると、後ろの馬車2台からレッドミラー商会の男達によって荷物が降ろされ、建物の中に運び込まれていた。
しばらくして、パルテが戻ってきた。
「いくよ。」
それだけヤマトとサクラに告げると、馬車は再び動き出し、そのまま首都ゴードナーを出てしまった。
「今回は酒場に行かなくてもいいのか?」
「・・・何か酒場で聞いたのかい?」
パルテの顔に今までに見たことのないような険しさが表れた。
「いや、そういうわけではないが・・・。」
「だったら、余計なことは言わない方が身のためだよ。」
「悪かった。」
ヤマトは、パルテに素直に謝った。
「次はどこに行くんですか?」
ヤマトとパルテの微妙な雰囲気を感じたサクラが話題を変えるためにパルテに話しかけた。
「ああ、次の目的地は鉱山の町ガルバドだよ。この国に来たら鉄を買って帰らないと意味ないからね。」
パルテから先ほどまでの剣呑な雰囲気は消えていた。
「どれくらいかかるんですか?」
「ああ、今度はどこにも寄り道はしないからね。1週間もあれば到着するよ。それで鉄を買った後3日も走れば私の故郷愛しのケイティート子爵領テハトに到着さ。」
窓の外に視線を向けたパルテの表情はどこかうれしそうだった。
「さあ、まだ何が起こるかわからないから気を引き締めていくよ。」
そのパルテの言葉は、ヤマトやサクラに言ったというよりパルテ本人に言い聞かせているように聞こえた。




