67 『ヤマト』 彼の二つ名は『姉狩り』ではない。
焚き火の前にはヤマトを除いて、男女合わせて12人が座って食事を取っていた。
「食ってるかい?」
ヤマトの横にパルテが腰を下ろした。
「ああ、お陰で生き返った。」
「・・・それにしても、いい男だね。」
パルテが、妖艶に笑いヤマトに顔を近づけた。
「悪いな、俺には、心に決めた人がいるんだ。」
ヤマトは、パルテと自分の顔の間に左手を差し込んだ。
「姉御、振られたな。」
その様子を見ていた周りの男達が笑い声を上げた。
「たまには振られることもあるさ。」
パルテも陽気に笑う。
「これで全員なのか?」
「ああ、レッドミラー商会の精鋭6名と私らを守ってくれるCクラスのパーティー『レギウス護衛団』4名の皆様方さ。」
「姉御、モノは言い様だな。精鋭って俺達以外見たことねぇーぞ。」
周りの男の1人の言葉に再び笑い声が上がった。
「ん?人数が合わないようだが?」
「ああ、あんたの対面に座っている白い神官みたいな服を着ているのは、あんたと同じ生き倒れさ。まったく、嫌な世の中だよ。1日に2人も生き倒れを拾うとはな。おい、サクラ、ちょっとこっち来な。」
サクラと呼ばれた少女がヤマトの前まで歩いてきた。
「何ですか、パルテさん。」
サクラは、ウェーブがかった肩まである黒髪で大きな二重の目の少女だった。
腰には剣を差しることからも神官ではないようだ。
「こっちのハーフエルフが、あんたと同じ日に生き倒れていた色男さ。運命を感じないかい?」
「感じません。」
サクラは、まったくヤマトにまったく興味を示す様子はなかった。
「まったく、可愛い顔しているのにもったいないね。まぁ、興味はなくても挨拶くらいはしときな。」
「私は、ギルド『アルテノン聖騎士団』の『サクラ・ソメイヨシノ』です。」
サクラは、きっちりとしたお辞儀をした。
「俺は、ギルド『パンプキン・サーカス』の・・・」
「あなた、あの悪名高き『パンプキン・サーカス』の一員ですか。男ということは、『怪盗英雄』ですか?それとも、姉を犯すことを夢見ると言う最悪の弟『姉狩り』の『弟Mの憂鬱』ですか!」
「・・・俺の知っている二つ名と少し・・・いや意味的には全然違うな・・・。」
「さあ、どちらですか!」
「・・・・『怪盗英雄』のヤマトだ。(ヒロリン、悪い・・・。)」
ヤマト、さすがに言えなかった。そもそも、『姉狩り』って何だ?そんなの聞いたことねぇーぞ?と思いながらもそれを訂正する度胸はなかった。
「あれ?さっきは、確か『弟Mの・・・」
「嫌だな、パルテ。さっきもヤマトと名乗ったぞ。」
パルテの口を手で押さえながら、作り笑いを浮かべるヤマト。その額には冷や汗が流れていた。
「『怪盗英雄』ですか・・・まあ、『パンプキン・サーカス』の中では、ましな人物と言われていますね。ですが、私の『アルテノン聖騎士団』と『パンプキン・サーカス』は不倶戴天の敵。馴れ合いはしません。」
サクラは、それだけ言うと元いた場所に戻っていった。
「あんた、姉が好きなのかい?」
イヤラしい笑いをしたパルテがいた。
「まず、あいつの言った情報が違う。俺の二つ名は『刀狩り』だ。そして、姉の純血を守るのが俺の人生の使命であり、俺は命を懸けて姉を犯させない。これが俺の姉への愛だ。断じて『姉狩り』などではない。むしろ、言うなら『姉守り』だ。」
「どっちもどっちだと思うけどね。・・・ところでその『アルテノン聖騎士団』も『パンプキン・サーカス』も聞いたことないんだけど、どこの国のギルドだい?」
「何?両方とも『グランベルグ大陸』のトップギルドだぞ?」
「その『グランベルグ大陸』自体も聞いたことがないんだけどね。ここアランドベル大陸からどれくらい離れてるんだ?」
パルテと話していて、ヤマトは何か違和感に気がついた。
手元の食器を見て違和感の原因に辿りついた。
食事をして味を感じるなんて現実以外ありえない。
「・・・まじか。」
「どうしたんだい?急に驚いた顔して?」
「・・・いや、気にしないでくれ。ちょっと、戸惑っただけだ。」
ヤマトは腰に差した刀を抜いた。
その刀の輝きは、映像ではありえない現実の輝きだった。
「それ、珍しい武器だね。美しいというか・・・。」
パルテも刀の輝きに見惚れていた。
ヤマトは、背中に背負った5本の刀を下ろし、1本をパルテにあげた。
「助けてくれたお礼にやるよ。」
「いいのかい?」
「ああ、元々俺の物じゃないしな。」
パルテはうれしそうに刀を抱え込んだ。
「代わりと言ってはなんだけど、あいつ共々しばらく頼むよ。」
ヤマトは、対面に座るサクラを見たが、サクラはこちらに目を合わせないようにしているようだった。
「こんな物までもらっちゃ断れないね。このパルテ・レッドミラーに任せときな。」
パルテが豊満な胸をドンッと叩いた。
(姉貴・・・大丈夫だろうな・・・俺がいないから寂しがってるだろうな・・・。)
ヤマトは、アオイの無事を夜空に浮かぶ月に祈った。
ヒロの『グランベルグ大陸』内での二つ名は、『パンプキン・サーカス』のメンバー以外は、『怪盗英雄』と呼んでいます。
『怪盗英雄』と書いて『かいとうヒーロー』と呼んでます。




