66 『ヤマト』 パルテ・レッドミラー
「おい、大丈夫か?」
ヤマトは、耳元の声で目を覚ました。
すでに日が暮れており、ヤマトの周りには馬車が3台止まっていた。
「・・・んっ、誰だ・・・・。」
「おい、生きてるぞ。」
ヤマトの側に立っていた人物が、声を掛けると他の人間が水と食べ物を持ってきてくれた。
ヤマトは、3日ぶりの食事をゆっくりと胃に染み込ませた。
「ぷはぁー、生き返った。ありがとう。」
ヤマトは、食事をくれた男に礼を言った。
「いいってことよ。困った時はお互い様だ。」
男はヤマトの肩を叩きながら笑っていた。
「おい、様子はどうだい?」
赤い髪の女性がヤマトに近づいて来た。
年の頃は、30歳くらいのよく日に焼けたはつらつとした女性だった。
「大丈夫みたいです、姉御。」
ヤマトの隣にいた男が答えた。
「運がよかったね。しゃべれるかい?」
女性は、ヤマトの側で片膝をつき、優しい目でヤマトを見た。
「ああ、ありがとう。助かったよ。」
ヤマトは頭を下げた。
「私は、レッドミラー商会会長のパルテ・レッドミラーだよ。よろしくね。」
「俺は、ギルド『パンプキン・サーカス』の『弟Mの憂鬱』だ。」
ヤマトはパルテの差し出した手を握った。しかし、パルテの表情が曇った。
「エルフ・・・いや、ハーフエルフかい?・・・もしかして、収容所から逃げてきたのかい?」
「収容所?」
「違うんならいいんだけど、ハーフエルフはこの国ではちょっと問題ありだね。」
パルテは簡単に説明してくれた。それによると、この国クルワラ共和国では人間以外の種族は奴隷として捕まえられることが多いらしい。そして収容所に送られ、主に鉱山で働かされるそうだ。
「何の理由もなしに?」
「ああそうだ。」
「パルテも俺を捕まえる?」
ヤマトの手が腰の刀に触れた。
「いや、私は、奴隷商人ではないし、アリステーゼ王国のケイティート子爵領の都市テハトを本拠地にしている商人だからね。この国にはケイティート子爵とクルワラ共和国との関係上、ケイティート子爵の注文で食料を運んでいるだけ。まぁついでに鉱山の町ガルバで鉄を買って帰れるから、商売にとっては悪いことではないんだけどね。」
悪いことではないと言いながら、パルテの表情は優れない。そんなことでもなければ、こんな国には来たくないというのが丸分かりの表情だった。
「どうすればいい?」
「・・・まあ、しょうがないね。これも乗りかかった船だよ。私に任せておきな。まずは、体を回復することを考えるんだよ。」
パルテは、立ち上がり他の人間が忙しく動いている方へと向かって行った。
「お前、運が良かったな。」
ヤマトの隣にいた男も、パルテについて歩いて行った。




