58 『ヒロ』 あなたが死んだら、私も後を追います。シーターの悲壮な決意。悲しき恋人達の行方は・・・。(エストラ恋愛悲歌 ジュリ著 銀貨1枚にて予約受付中)
「ところでヒロ。その、もう同じ町に住む仲間みたいなものではないか。」
レキエラがヒロに何か含みのある言い方で話しかけてきた。
「・・・そうですね。」
とりあえず同意するヒロ。レキエラが何を言いたいのかわからなかった。
「それでだ。もう、我にあれをくれてもいいと思うのだが?」
「あれとは何のことですか?」
「ほら、あれだ。」
レキエラの先にはシーターが座っていた。
「ああ、麻痺の状態異常のついたミスリルのナイフですか?」
「そう、それだ。」
レキエラは、子犬のような純真な目でヒロを見ている。
「・・・アレクシスさん。レキエラさんにナイフ上げてもいいと思いますか?」
ヒロには、いくらレキエラ本人が言っているからと言っても、本当に町の仲間と認めていいのか判断がつかず、アレクシスに話を振った。
「ああ、ヒロさえよければ問題はないと思うぞ。レキエラ将軍は信頼に足る人物というのは間違いない。」
アレクシスの言葉に安心はするが、レキエラの膝の上にジュリが乗った状態では、その言葉も微妙だった。
「何よ、ヒロ。レキーは、本当にいい人よ。私が神に誓ってあげるわ。」
悪魔が神に誓っても意味なくね?と思わなくはなかったが、ジュリを怒らすとめんどくさいので、ヒロはレキエラにナイフを渡した。
「なんじゃ、このナイフは。」
ヒロの隣に座っていたグンゾウがナイフに興味を示した。
「これはの・・・。」
レキエラはうれしそうにグンゾウにナイフの説明を始めていた。
「相変わらず、武器好きなのね。」
そんなレキエラの様子をうれしそうにジュリが眺めていた。
「レキエラさん、武器が好きなんですか?」
「ええ、そうよ。レキーのことどれくらい知ってるの、ヒロは?」
「確か、アレクシスさんが、槍で敵う者なしって言っていたような。」
「ふふ、確かにそれも間違いではないけど、それは基本的に1対1の馬上で戦う場合が多いから、そう思われているだけで、レキーは別に槍だけが凄いって訳ではないのよ。槍が折れれば剣で、剣が折れれば、斧で、斧を落とせばナイフでって具合にどんな武器だろうが、一流の使い手なのよ。ついでにあっちの方もね。」
ジュリのレキエラを見る目は優しかったが、ヒロは微妙な顔をしていた。
「よし、実際に使って見せてやろう。」
レキエラがジュリを膝から降ろして立ち上がり、レキエラの部下達を見た。
レキエラの部下達は、レキエラの言葉を聞いて、一斉にレキエラから目を逸らした。
「誰か、相手をしろ。」
「・・・・。」
レキエラの部下達が、小声でお互い譲り合っているのが聞こえた。
「それでは、私が。」
レキエラの部下達の様子を見ていたアレクシスが立ち上がった。
「おう、アレクシス。さすが、将来有望な若者だ。さあ、かかって来い。」
レキエラとアレクシスは、少し広くなっている場所に移動し、お互い構えを取った。と言っても、レキエラはナイフを持っているにも関わらず、アレクシスは無手であったが。
「いけぇーアレクシス。」という酔っ払ったシーターの言葉と共にアレクシスとレキエラはお互いに動いたが、アレクシスとレキエラでは、腕の差は歴然だった。
ナイフを持っている相手に何故か掴んでの投げ技にいったアレクシスの腕を、レキエラの振るったナイフが的確にアレクシスの腕を捉え、掠り傷を負わせた。
その瞬間、アレクシスが電池の切れた人形のように倒れた。
「いやー、アレクシス。死なないでー。」
酔っ払ったシーターが、倒れたアレクシスに駆け寄り号泣した。
「いや、痺れてるだけですって。」
ヒロは、このナイフで斬られたらどうなるのかを知っているはずのシーターの行動を呆れて眺めていた。
「本当に傷を負わせたら、相手が痺れるのか・・・珍しい。」
グンゾウは、目を大きく見開いていた。




